穂崎円@文フリ東京39参加

ここでは第一次世界大戦のアイルランドの戦争詩人、フランシス・レドウィッジの詩の翻訳を主…

穂崎円@文フリ東京39参加

ここでは第一次世界大戦のアイルランドの戦争詩人、フランシス・レドウィッジの詩の翻訳を主に掲載しています。その他の活動や連絡先については「自己紹介」をごらんください。 アイコンはウズベキスタンの天文台の模型。

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フランシス・レドウィッジ対訳詩集の頒布について( #文学フリマ東京39 )

2024年12月1日の文学フリマ東京39で、アイルランドの戦争詩人フランシス・レドウィッジの対訳詩集を頒布します。 なおこれに伴い現在、レドウィッジの詩の翻訳記事を一部非公開にしています。 フランシス・レドウィッジについて フランシス・レドウィッジ(Francis Ledwidge)  (1887.8.19 ~1917.7.31) アイルランド生まれ。第一次世界大戦において宗主国イギリス軍に従軍、戦死。享年二十九歳。 第一詩集にダンセイニが寄せた巻頭文から「クロウタドリの

    • 鳥を迎へよ (Failte don ean,Séamus Dall Mac Cuarta) 私訳

      鳥を迎へよ 鳥を迎へよ 日に伸ぶる灌木の美を歌へる森の最愛を迎へよ この生に吾ははや倦みはてつ そのすがた新緑の時も見ること叶はぬゆゑ 頭上の枝に面影さがせば 見えねど聞こゆ くりかへし郭公よべる鳥の歌 そはわが苦き心痛ぞ 丘を取りまく花をたずさへ 北に南に、アイルランド中に集ひくる どの郭公もみな美しと みなが喜び語りあふ (見ること叶はぬ悲しみは 孤独の吾に繁れる緑を眺めさす 森の辺に郭公見むと行ける人らと ともに行けぬははつかに哀し) ※最終パラグラフはAn

      • Siuil a Ruin(わがもとへ来よ恋人よ) 私訳と解釈

        わがもとへ来よ恋人よ  あの丘にひとりをりたし 泣き声ぞ溢れさせたし さらば涙はいつまでも水車をまはし流れむを やさしき言の葉のみくれし 恋人の膝の上にぞかへりたし つひに叶はぬことばかりわれにかたりし恋人ぞ (Chorus)   わがもとへ来よ恋人よ   やすらかに、しのびやかにぞおとなひて   戸口よりわれを攫ひゆけ その髪は黒かりし そのまなこは青かりし 腕のちから強かりし恋人の言葉をわれは信じたり 心にいつも君はありしか (Chorus) わ

        • あの夜を An oiche (The night)私訳

          あの夜を きみ思ほふやあの夜を 帽子、手袋、外套なしに窓辺にをりぬ われは手を延べきみ握りしか 帽子、手袋、外套なしに 恋人よ、わがもとへ来よと ひばり歌ひぬ きみ思ほふやあの夜を ひどく冷ゆる夜なりき われは手を延べきみ握りしか 帽子、手袋、外套なしに 恋人よ、わがもとへ来よと ひばり歌ひぬ きみ思ほふやあの夜を あれはひどく冷ゆる夜にして…… 原文(ゲール語からの英訳) Do you remember that night when you were at th

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        • フランシス・レドウィッジ
          4本
        • アヌーナの歌
          4本
        • 自己紹介など
          2本

        記事

          八月(August,Francis Ledwidge)私訳

          八月 日の始まりの薄暗がりにやつてくる 刈り入れの歌の黄に重なる光の白さ 露に濡れた虹踏みしめる その美しさ力強さ             目蓋をもたぬ真昼の瞳が 刈られた小麦を踏む足を焼き 日がな一日、その鳶色へ口づけるに相応しい 落穂に埋もれるコオロギの頭上 積み藁の列の中にゐる 五月の青と十一月の灰白 色違いの瞳を伏せた時そのひととわかる 錆びた大鎌を下ろし、呼ぶ姿を 赤壁の納屋から見てゐた 彼女を追つてわたしも行かう 原文(August) She'll com

          八月(August,Francis Ledwidge)私訳

          兵士の墓(A Soldier's Grave,Francis Ledwidge)私訳 

          兵士の墓 さうして風なき真夜中、優しき腕は ゆつくり彼を運び死への傾斜に降ろす 戦場の、死にゆく嘆きの、苦痛を訴える呼吸の 恐ろしき警報をもう二度と聞かぬやう 花のための柔き大地に せめて安らかにとわれらは墓を掘る やがて訪れた春がこの墓を愛らしく飾り 雲雀は巣を作り露で濡らすだらう 原文(A soldier's grave) Then in the lull of midnight, gentle arms Lifted him slowly down the

          兵士の墓(A Soldier's Grave,Francis Ledwidge)私訳 

          アイルランド(Ireland, Francis Ledwidge)私訳

          アイルランド(口語訳) 森と渓谷の美しい国と呼んでも おまえは俺に応えず 古代の英雄にはしゃぎ 神の軍隊を欲しがっていた 風すさぶ高さまで飛んで泣きわめいても おまえは何も聞かず 丘を飛びたつ小さな船や その背後で上がる泣き声を聞いていた 俺はおまえから離れ 戦場を渡った それがおまえとの再会で 俺はおまえの魂に殉じたかった どこからかおまえが呼んでいる 時の海を越え俺たちに冠を運べという だけどもうおまえの声が聞こえない こんなに遠く離れて アイルランド(文語訳

          アイルランド(Ireland, Francis Ledwidge)私訳

          フランシス・レドウィッジについて

          フランシス・レドウィッジについて フランシス・レドウィッジ(Francis Ledwidge)  (1887.8.19 ~1917.7.31) 正確にはフランシス・エドワード・レドウィッジ(Francis Edward Ledwidge)。 アイルランドのミース州スレーンに生まれる。なお現在、同地には記念館が建てられている。幼少期から詩を書き始め、14歳から新聞に詩が掲載されるようになる。 新聞掲載された作品が切欠でロード・ダンセイニの支援を受けるようになり、彼の主

          フランシス・レドウィッジについて

          自己紹介

          〇名前 穂崎円(ほさき まどか) ◯このnoteについて アイルランドの戦争詩人、フランシス・レドウィッジ(Francis Ledwidge)の詩の私訳を主に掲載します。 当初は別blogに掲載していたのですが、他のコンテンツもあること、またかなり量が溜まってきたので、フランシス・レドウィッジの詩を中心に掲載する場所を別途作ることにしました。なのでまずはblog掲載作品からの掲載が主になると思います。 ◯翻訳について 中学生の頃から独学で洋楽などの歌詞翻訳をやってい