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思春期 心の深くにできた傷①

中3のある朝の登校後
理不尽系の集団無視を初めて経験した私は
状況が理解できず
混乱した頭で早退した

帰宅後 台所奥に座る母を見つけ
説明しなければ 言われる前に  と
バクバクと高鳴る心臓を抑えながら
パニックの中を1つ1つ 辿りながら
自分なりに慎重に 事情を説明した

丸椅子に腰掛け 回る換気扇の下
タバコを吸っていた母
早朝の新聞配達の疲れも残っていたのだろう
表情を変えずで 煙を吐き出した後で
答えが返って来た

”トラブルは全てまず自分に原因があると思いなさい"
”そんなことで この家に帰って来ることは ならん” 

疲れた顔で言葉少なめに 諭された。

正直、心の何処かで 僅かながらでも
寄り添う返事を 期待をしていたんだと思う

いや 自分が知らなかった 
気付かなかった 単なる現実なのか

学校と 友達と 家庭と
一気にやって来た 理想と現実のギャップ

基本的に他人は頼る先ではない
この家は逃げ場ではないのだ と
何となくの絶望を感じながら 靴を履き
元来た道を辿り  駐輪場について

すると その先足が進まなくなった
窓越しに見えるクラスの中が 視界に入った瞬間だ

怖い
あそこには 私は 存在していない
解からない
怖い

立ち止まり  息ができないような感覚に陥り
誰にも見えないよう 縮こまって
蹲って やっと ボロボロと泣いた。

静かにグシャグシャに泣きながら
母の言った言葉を繰り返し反芻していた
諭された事を 腑に落とせないと
次に進めない性分でもあった為
蹲りながら 泣きながら
自分なりに一生懸命
母の諭しの意味を考えた

全てまず自分に原因があると思いなさい"
そうか 私は欠陥のある人間なんだ
気付かなかったが 私は
何かしらの 人を不快にしてしまう要素があるのだ
それで無視を受けたのだ
今からまた無視を受けるのだ
分からない けど 欠陥があるから仕方がない

そう理解出来たら
理由の解らなかった”無視"への恐怖感が
不思議と一気に去った

理解や共有を諦めればいいんだ
1人でいればいいんだ
誰かに不快な思いをさせてしまうよりは
その方がよっぽどいい

そこから 大きな空洞のできた心と頭で
やっと教室に入り
かたちの変わった"日常"に戻った

ロボットのような欠陥人間だから
1人でいればいい
1人の世界を過ごせばいいだけ

自発的な感情を 手放した
傷付く事や 悲しむ事 怒る事 何となく辞めた
諦めた事で 周囲が全く 気にならなくなった
自分も 他人も バラバラに
客観的に見るようになった

教室で1人淡々と過ごす私の姿に驚いたのか
これまであまり絡みのなかった
ヤンキー的な女子達が声を掛けてきて
親しくされるようになったのが
謎で少し面白い状況だった

あぁ、そうだ
彼女たちは確か
最初に(仲間内での)無視を始めた張本人だった
外された1人がおいでと声を掛けたグループ先で
また新しく1人が外されていき…
その連鎖が理解できず 4人目辺りからは
私が個人で 1人でいるその子達に声を掛け
2人~3人になり、1人元のグループに戻り…
の流れだった

みんな 何がしたいの?
弱そうな先生に イライラをぶつけて
いたづらをしたり
強そうな生徒に 注意ができずに
些細な理由で他の生徒に当たったり

ストレートに言わないと 分からないよ

ずっと 我慢して掻き消していた言葉達が
諦め、手放したことで いなくなり

ある意味少し違う形でだが
人との線引きができた瞬間だったのかもしれない

学校はそれで乗り切れた。

でも 家が 違った。

帰宅後
母の発する 様々な不満や 不快感を
自動的に脳が拾って反応し

【自分が原因だ】と慌てて理由を探し
ビクビクしてしまうようになっていた

誰かの喧嘩が起こる度に
きっと 自分も何か悪い事をしてしまった
だからこんな状態が起こってる と

家族はみんな
実は 私の事が嫌いなのかもしれない と

どう思っているのか 逆に 必要以上に
疑心暗鬼になる事が増え
頭が忙しくなり過ぎて 疲れ
基本部屋に引きこもるようにもなっていった

家族への ほのかにあった線引きが
逆に消えてしまっていたように思う

もちろん 原因が母だと言うわけではない

個性の強い 私の感覚と
同じく母の感覚と
色々なタイミングと
そこで生まれた 捻じれでもあったとは思う。

成人し
少しずつ母の色々を知る機会が増え
母自身の 親子関係や 家庭環境にもまた
歪さを抱えた 過去 があったのだな と
少しずつ紐解けてもいったけれど

自分自身の中に生まれた 選択肢は
なかなか消えてはくれない

現在もなお
自分は欠陥のある人間だ という認識は
抜けずにいる

でも
奇しくも一人の娘の母親になれた為
育つ娘が
少しでも 自分自身を 肯定的に捉え
自分の感情や思考を大切に扱いながら
そのうちいつか
人にも同じく関われるように
なれればいいなぁと 心から願ってやまない。

ただ 色々と人と違いの大きい私が
彼女の環境となってしまう為 不安も大きい

ぶつかったり荒れるような時には
出来るだけ娘の目線に立つように

あの頃の自分はどうだったかと振り返り
自分と 母の 互いの言動の記憶を頼りに

何よりどうして欲しかったか
何が嬉しくて 何が悲しく感じていたのかを辿り
自分自身の過去の棚卸と整理をする日々

無条件に抱きしめてあげたいのに
どうしても理由を探す自分が 今もいつも悲しくなるけれど
いつか娘と一緒に 今よりもっと自然に
お互い一緒に抱きしめられるように なりたいなぁと

自分を許す作業をする 
毎日を過ごしている。

#長い長いひとりごと  #尊重  #家族のかたち

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