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栗独白

拙者は、栗だ。

生まれは秋田県の角館、西明寺栗などとも呼ばれておる。

皆は栗が好きか。日本は栗好きな御仁が数多(あまた)おるとは、まことか。

いま拙者は、モンブランなるケーキに乗っておる。如何なる出会いがあろうか。

おーい!

あ、目が合うた。もしや、拙者の声が届いたのか。

穏やかに、しかし睨めつけながら近づいてくる。喉鼓が聞こえてくるような顔つきをしておる。

ケーキを好むとは、児子(ちご)のようだが、拙者も兄弟や父母の手前、食べてもらわねば浮かばれぬ。

しかし、この人間、美味そうに食べるではないか。拙者を取りおろし、ケーキの隣に座らせて、みるみる食べる。目を閉じたり、鼻を動かしたり、時にはケーキ内部を覗き込んだり。

半分ほど食べたところで、ついに拙者にも刀が入れられた。心配無用、拙者は痛みも恐怖も、全く知らぬ。

その命が尽きた暁には、生まれ変われると聞く。

願わくば、栗を食べたい。

拙者は、人間になりたい。




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