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たぶん、コールアンドレスポンス #書もつ

毎週木曜日は、読んだ本のことを書いています。

音楽を描いた作品は、鮮やかな筆致であるほどに、それを耳で聴きたいし、目を閉じて味わいたくなります。

文章であるがゆえに目を開けなければならないもどかしさ、そして終盤にかけて訪れる、コンサートの終わりが近づくような達成感のようなものは、一体どんな作品を読んでも感じてしまいます。

読書メーターに書いた感想から、はじめます。

永遠をさがしに
原田マハ

ふと本屋で見かけた背表紙、いったいどんな話なのかと、引き抜いて裏表紙を読んでみたら、なんだかすごいストーリーっぽいし、解説はいま話題の宮下奈都だし、なんで読まないなんて言えるのか、一気に読んでしまいました。

音楽を文字にして、気持ちを言葉にして、多すぎても暑苦しいし、少ないと伝わらない、そのバランスが僕の好みなのです。

本当にこの作家に出会えて良かったと思います。

成長と言うよりも、変化していく彼らを応援したくなる爽やかな作品でした。彼らの音楽会、聴きたかった!

音楽という世界が、とても想像できない深淵であるという視点と、とても身近にあって生きることに役に立つといったような視点が混ざっている作品でした。

若々しい才能との出会いは、読み手であってもわくわくするものです。音楽家になるには一定の訓練のようなものも必要であり、その辛さよりも音楽が人に届くことの感動を鮮やかに描き、可能性というか安心感を感じられる読み終わりでした。

この作家さんの作品には、大きな転換が中盤で訪れるのです(ネタバレでごめんなさい。でも、本当なんです笑)が、いずれにしても働く女性や、若い女性をとても魅力的に描いていて、読み終わりには爽やかさを感じます。きっと様々な経歴の中で、多くの体験をされて、作品に臨んでいるのだと思います。

得意とする美術分野でなく、音楽の世界を描くこの作品もまた、この作家さんらしい視点にあふれ、楽しい体験ができました。

文庫版の解説は、作家の宮下奈都さんでしたが、僕は何か引っかかりました。

この解説まで読みすすめる遥か前、主人公たちが会話する場面でした。

ピアノの鍵盤をポーンと鳴らして、何か言ったあとに「すごーい、調律師みたい。」という発言がありました。

個人的にこのセリフがとても強く印象に残っているのですが、作中では調律師は一度も出てこないのです。それにしても、調律師って一体どんな世界なのか、そんなことを考えていた矢先、あの解説と、ある作品がつながるのです。

羊と鋼の森
宮下奈都

何か、偶然ではなくて、あの解説を書くにあたって読んだときの経験、むしろ僕が記憶しているあのセリフがきっかけになってるんじゃないか、そんなふうにも思えるのです。

かなり乱暴ですが、そういうつながりがあったらとしたら、このnoteのようにクリエイター同士が明るく楽しくつながるみたいで、すごく豊かだなと。もし、真相をご存知の方がいたら教えてほしいと強く思います。

言わずと知れた作品となりましたが、調律師の世界が描かれた、穏やかな作品です。むしろこちらの作品のほうが多くの人が読んだことがあるかもしれません。この作品の感想(読書メーターに書いたもの)も掲載させてください。

もっとできたはずと後悔したり、いますぐに音を出したい衝動に駆られるような、言葉の力が伝わる作品でした。

主人公が「美しさ」のひとつひとつをすくいとり、向き合い、咀嚼する姿は、読み手を優しく叱っているようにも感じられました。

ピアノを通じて、登場人物たちが言葉を尽くすシーンは壮観です。

「あなたは、あの圧倒的な感情に巡り会えましたか?」読み終えたとき、主人公から聞かれました。

もし答えられなくても、「森は決して怖くありません。必ず道があります。だから、まっすぐ歩いていきましょう。」きっとそう言ってくれます。

僕が、音楽を題材にした作品に触れて思うことは、「どうか、その音を聞かせてくれ」に尽きます。

豊かな語彙と、鮮やかな描写によって想像はできるけれども、音を作り出すことはできません。それは例え映画のように映像化されても、再現できるかは分かりません。

すごく意地悪な書き方ですが、音の聞こえ方もまた個人差があるものだから、どんな音が鳴っていても、届かないかも知れません。

読書の秋は、芸術の秋。
好きな音楽を聴きながら、読みたい本があります。


タイトルフォト、ものすごくないですか?
例によって、infocusさんの作品。僕は、これを見たときに「えー!」と言ってしまいました。ほんとうにお願いして良かった。
このセンス、すごく好きな感じです。背景が白いのも、文章に溶けていく感じが潔くて、やさしくて。タイトル画のおかげで、記事に力が生まれます。ありがとうございました!


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