【訣れ黄昏】

汀に立ち白波を浴びる。放り捨てた壜は引き波に乗せられゆらゆらともう遠くの方にあった。
軈て小粒程になり、消えてしまうだろう。
何処の誰かが描いた一瞬の恋慕が海へ帰り行く。
艶やかな女性を写した幻影を耄碌して捨て難くなる前に、渺茫な綿津見の刹那さに其の行方を委ねた。
愛に恋。おそらくは浮雲、斯く紛って隔たり終える。
さらば、蒼き春よ。死ぬ其の時に再会を望む。
紺碧の宵穹に予兆が指す。
懐より平和を取り出す。
紫煙が碧に溶ける。
軈て果てようと100mmの火種はちらちらと明滅を繰り返しては白い息に消えた。

なんつって。

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