「なんでこの木が低いか知ってる？」 カチャカチャと音をたてて食膳が片付けられていく。どうやら旅館の女将が兄に話しかけたようだった。 「なんでしょう」 「いえね、先ほどからずっと窓の外の桜を眺めていらっしゃるでしょう」 「ああ。見事なもんだと思って。桜の枝が地面にまで伸びきっている。こりゃ迫力がある」 女将は部屋の窓を少しだけ開けて桜の方へと兄を促した。 「この部屋が一番桜に近いんですよ。ほうら、目の前に枝が伸びているので窓を開けたら部屋の中に花びらが落ちてくる」 ひらり、と何
ここはただの空き地。そんな場所の入り口にひとり、ポツリと立っている人がいます。大きな黒いふわふわの帽子と真っ赤な制服。外国の兵隊さんのような格好で、何やら門番をしているようでした。 そんな彼のもとに一台の真っ黒なバスが止まりました。バスから降りてくる人たちは誰一人として表情が変わりません。悲しんでいるような、そうすることも諦めているような。 最後に降りてきたのは、髪を短く切りそろえた背の小さな女の子でした。番人は、おや、と訝しがりました。その女の子も他と変わらず無表情で、長
2022年が始まりました。私は去年にすでにワクチンの事前記入用紙に2022年と書いて過ごしてしまってたから「あ～、また来たか」という気持ちでいます。 昔は年賀状を書くのが大好きで、家にプリンターがなかったので一人一人に手書きでイラストを書いていました。大学生になってバイトを始めてからは忙しすぎて書かなくなったら誰からももらえなくなって、手放したものはあっちからも手放されるんだなって思いつつ書かなくなりました。 でも今年はとても大好きなキーボードを弾く先輩から送られてきたので嬉
また今日も取るに足らない嘘をついてるのいちいち ポップコーンがはじけた！黒いうずの真ん中 深くもぐりこむ 慣れた手つきトゲを刺す 誰か来て 教えて！ 私の心 どろどろに溶けたら かぶった猫が泳いでく どろどろに溶けても まだ気になるみたい どろどろに溶けたの せまり来る怪物はいじわる どろどろに溶けたら 何も怖くないわ！ これは私が何となくメロディー作ってそれとなく歌詞を書いた曲なんですけど、意図せず物凄く私のことを歌ってるみたいだった。 タイトルは、配信ライブ用につけたイ
●瀬尾まいこさん 最初の出会いは中学の頃の読書感想文用の課題本であった「幸福な食卓」。 私は子供の頃から本を読むのは好きだったけれど、図書館にひっそりと並べられている本を自分で見つけて読みたい人間で、目立つところにオススメと称され飾られている本はとことん読む気をなくしてしまうタイプだった。 感動するなんて言われれば言われるほどその感動は作られたものみたいに感じるし、当時はジュブナイルミステリーか魔女が出てくる本しか興味がなかったからハートフルなストーリーだなんて言われても全
こちらは音楽雑誌の設定で話を進めております 前回アルバムの中から前半として５曲、エピソードを語っていただきました。 今回も引き続き残りの楽曲についてお話していただこうと思います。 ―６曲目、「くつした」は弾き語りなんですね。 かねこきわの（以下・木） この曲はもう本当に何も飾りたくなくて、ギターと歌と、それをタンスの妖精が包んでる風のコーラスにしました。 ふと昔住んでいた家のクローゼットを開けた時のにおいとか空気を思い出して、ポロポロと溢れるように作れた気がします。
※ こちらは音楽雑誌の設定で話を進めております ―さて、前回はアルバム『チョコレートムンク』について語っていただきましたが、今回は前編・後編に分けてそれぞれ曲についてお話頂こうと思います。 かねこ（以下・木）じゃあ、順番ずつに曲のエピソードを話していきます。 まずは「sweet weep」 https://open.spotify.com/track/3I0hXdT1H2bxU0MzvCZ
※こちらは音楽雑誌の設定で話を進めております "長い夢の出来事のような、突拍子もない作品にしたかった" 今回、８月５日に1st album『チョコレートムンク』を発売した かねこきわの さんにアルバムについて語っていただきました。 ―ついに念願の全国流通版、ということで。まずはおめでとうございます！ かねこ（以下・木）どうもありがとうございます。生きてるうちに野望が叶ってよかった！（笑） ―今回は『チョコレートムンク』について色々と語ってもらおうと思います。
