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月刊 コーンポタージュKIDS(3)

 こちらは音楽雑誌の設定で話を進めております


前回アルバムの中から前半として5曲、エピソードを語っていただきました。
今回も引き続き残りの楽曲についてお話していただこうと思います。

―6曲目、「くつした」は弾き語りなんですね。

かねこきわの(以下・木) この曲はもう本当に何も飾りたくなくて、ギターと歌と、それをタンスの妖精が包んでる風のコーラスにしました。

ふと昔住んでいた家のクローゼットを開けた時のにおいとか空気を思い出して、ポロポロと溢れるように作れた気がします。
小さなアパートに私は母と二人で暮らしていたのですが、「くつした」はその時の思い出の曲なんです。子供の頃にハマっていた、似顔絵ゲームみたいなものがあって。
輪郭や目、鼻、口、髪型とかをランダムに①~⑧くらいの数字に振り分けて 数字だけ選んでもらって 顔を描いていく、みたいな遊びなんですけど いつも母の時だけ何を選んでも不細工に書いてて。本当にあまのじゃくな子供だったんですよね。でもお母さん大好きだったので、1人の時にクローゼットを勝手に開けて母の洋服たちをぎゅっと抱き締める、みたいなことやってました。(笑)
その思い出が、母の温度にそっくりだったので 暖かくてでも少しだけカラッとしている音作りにしてもらいました。

https://open.spotify.com/track/6V7xwYsLMR4aNiFVFW0qTl?si=0_8DIW3AR3aSYi6fxqV-Bw

―そして流れるように「哀しい予感」に入っていきますね。

木)「哀しい予感」は去年の11月に作ったので、寒さを感じるような楽曲なんですよね。「くつした」の暖かい感じとコントラストをつけるつもりでその曲順に持ってきました。

―哀しい予感はどういった曲なんですか?

木)あと2、3回思い出してしまったらもう悲しさで死んでしまうかもしれない っていう記憶があるんですよね。皆もあるかもしれない。そんな大袈裟なものじゃなくても、大切な友達と進路が別々になって会わなくなったらもう昔のように話せない、とか大好きなアニメや漫画が終わってしまった時とかも悲しみに溺れてしまう。
でもそういうのを救ってくれるのはそれ自身というか。友達と過ごした日々や、アニメ見て楽しかった思い出が救いになるな~と感じて歌詞に「哀しい予感 心を染めて とどめをさすのは冬のつれないため息ね」

「哀しい予感 顔を出しても忘れないでいて 冬のひだまりのような日々」
って冬の季節に見立てて綴りました。

https://open.spotify.com/track/4OK3pjVwONt9G6vQRGSyqc?si=cKmwEkPITb-8-ZC9pAEShQ

話が長くなるんですけど、私はポケットモンスターが本当に大好きで、アニメもずっと見てたんですよね。大体話の流れは主人公がポケモンと出会ってゲットして旅をして強くなって時に仲間と別れる、みたいな何の風情もない説明なんですけど(笑)
小さい頃はそういう別れのシーンとかただの話のひとつにすぎなかったんですけど、大人になって見るとその別れの意味や葛藤やらが心を鷲掴んでくる!そのシーンを見て流す涙が昔はただの透明だったのに理解するたびに色づいていってる。つまり本当にポケモンは最高なのでぜひ大人の方も見てみてください。この曲の根元は「七夜の願い星 ジラーチ」という映画で成り立ってると言っても過言ではないのでぜひ見てみてください!!

―最後よくわからない方向に向かってしまいましたね!(笑)でもかねこさんが本当にポケモンが大好きなことがよくわかりました。この調子で行くとどんどんポケモンを語る会みたいになりそうなので次の曲のエピソードをお願いします!

木)8曲目は「ハートは消えない」ですね!昭和アイドル×チップチューンというのを目指して作りました。

https://open.spotify.com/track/3wJ7o502QRUsBOPPe6d8gN?si=doXL9pqEQwSXPsC6iBO85w

―これはまた珍しい組み合わせですね

木)タイトルを決めた時にサビのメロディーが浮かんで、これちょっと昭和アイドルっぽいぞ、と思ってそういう方向のアレンジにしようかと悩んだんですけど ハートは消えない ってなんてゲーム向きなタイトルなんだ!と気づいて8bitなアレンジに初挑戦してみよう、と思い至りました。

―初めてにしてはすごくゲームっぽく出来てると感じました。

木)いやー、これは本当に苦労しました。まず音ですね、YMCKさんの「magical 8bit plug」を使わせて頂いているんですが、インストールの仕方に手こずりました。パソコン使いこなせていないので、曲を打ち込むことは多少出来てもインストールとか何か難しいことよくわからないんですよね。何とか無事に出来たら次は作り方。昔のファミコンって、音が4つしか重ねられなかったみたいで、それでどうやってゲーム音楽はあんな彩りを再現出来ているのか……ゲーム音楽を作っている方たちに本当に尊敬の念を抱きました。
同時に4音しか鳴らせないのにどのようにして賑やかにアレンジするかすごく悩みました。音の並べ方やタイミングを少しずらして同時に鳴ってるように聞こえさせたり、普段のアレンジより10倍は頭使いました……もう途中で頭が痛くなって4音しか使えない縛りはやめちゃったのでどこか5つ6つ重なってるところがあるかもしれないです(笑)

―8bit音楽は単純ではないと。

木)聴こえは簡単に感じるかもしれないけれど、これほど計算や思考が必要な音楽は中々ないのでは……と思いましたね。
あと大変だったのが、途中でリズムか拍子か何かが変わっちゃうんですよね。そのように作ったのは私なんですけど。そのリズムとかの早さ変更の仕方がわからなくって全然制作が進まないし、かといってアイディアを変えるのも嫌だし。ネットで色々と調べたんですけどわからないから最終的に適当にいじっていたら出来たんですよね。運がいい(笑)

―あ、ということは「ハートは消えない」が作れたのは運がいいから……??(笑)

木)ということになりますね。私の運がよかったのと、ゲーム音楽が好きだったから出来上がった作品です。イメージ的には「星のカービィ」みたいな、敵をポコポコやっつけながら走って時にミスってハートを失いつつもラスボスに挑む、みたいなストーリーでアレンジしました!
間奏は水の中で泳ぎながら進んだりアウトロはマリオカートの無敵バージョンみたいなノリになるように作りました。まぁ、ゲームをしていない方には伝わりにくい説明かもしれないですね。ちなみによければ私の好きなゲームやゲームのBGMのお話しようと思うんですけど……よくないみたいなので今日はやめときます(笑)

―また違う機会にお願いします(笑)

木)最後から2番目の「曖昧」は最後までアルバムにいれるか悩んでいました。

―アルバムの中で一番聴かれている曲ですね。

木)タイトルと曲の雰囲気的には「チョコレートムンク」にピッタリだったんですけど、制作が間に合うかホントにギリギリだったんです。 この曲は3年くらい前に故郷を離れる時に作った曲で、ずっと弾き語りで歌っているからこそアレンジのイメージが全くつかなくて。 バンド風にしたいとは思ったんですけど、それならちゃんとしたドラマーの方やベーシストの方に弾いていただきたかった。エレキギターとかもいれたら最高だと思ってたけど、私に出来るアレンジが全然わからなくて。
そうこうするうちにレコーディングの2日前とかになって、これもう本当にヤバイ!とりあえずアレンジし始めないと!と思って まずピアノを録ってそのあとドラムを打ち込もうとしたんです。いつもは苦手なドラムは最後に打ち込んでいくんですけど、まずグルーヴを作ってベースのアレンジにとりかかった方がいいアイディアが出ると思ったんです。
でもドラムをとりあえずキーボードで打ち込んだらもう本当に聴けたもんじゃない。これなら私が叩いた方がまだマシってくらいベロシティもひどくて。レコーディング始まる前の1週間はずっと曲を曲を作ってアレンジして座って仮眠してバイトに行き、帰ってアレンジしてコーヒーとキレートレモンで食事をすませ……みたいな生活してたからもう何かがプツンと切れて。
絶望をつきつけられて号泣しちゃって。

―レコーディング始まる2日前にピアノしか出来てないって相当精神的に追い詰められますもんね

木)一時間くらい泣いたあとに、スッキリしちゃって 「いや、これやらんと出来んわ」と呟いて黙々とドラムを打ち込み始めました。(笑)

―結局出来たんだ(笑)

木)途中まで録ってたドラムを全て消して、もうマウスでポチポチ打ち込む方法に変えました。それをやるとさらに時間がかかるしリズムもわからなくなるんですけど 何かが降臨したみたいに、打ち込んではタイミングを修正し、微妙にずらしてグルーヴ感をだしてベロシティも1つずつ変えていって。この曲に関しては妥協した気分で作り始めたんですけど一切手を抜かずに本物のドラムの音を目指して命を削って作りましたね。

―昔のかねこさんのドラムの打ち込みを知っている人には、こんなに成長できるんだ……と驚かれたことでしょうね。

木)マジでドラムとベースはよくわからんから聞かんでくれ……という心持ちで昔は作ってたんですけど、今は頑張って最高なアレンジにしたので集中して聴いて!!って思います!
ベースも本物みたいになるように聴こえない音をいれてノリを作ったりしたし、オルガンはベテランキーボーディストになりきって弾きました。これに関してはなりきっていたからなのか、もうほぼ一発OKみたいな、何も考えずに5分くらいでアレンジが終わりました。その音の修正に20倍ぐらい時間がかかりましたけど。(笑)

制作の話ばかりになっちゃった!「曖昧」は私が東京に引っ越すと決めて、大好きな人たちや場所から離れる時のさみしい気持ちが作り上げた楽曲です。
岡山で働いていた職場が、本当に楽しくて皆大好きだったんですけど 辞めることを伝えた時に仲のよかった子がポロポロ泣いてくれて。私も号泣してたんですけど(笑)私がこの子や皆をおいて遠くに行くのに、誰よりも寂しいと思ってる気がしてた。けど、その涙を見て気づいたんです。きっと離れてしまったらもう私たちは変わってしまう。時間がたつにつれ、私がいないことにこの場所も人も慣れてしまって寂しさも平気になる。それが物凄く寂しいんだ、って思って ちょっとだけ泣きながら歌詞を書いた記憶があります。

―寂しがってもらえばもらうほど、平気になられちゃうことが寂しい気持ちになっちゃうんですね

木)私もその寂しさが平気になっていく自分を知られたくない、みたいなすごく複雑な気持ちになって でもこんな想いになることってきっとあまり出来ないと思うのでずっと大切にしていきたくて ずっと歌っています。

https://open.spotify.com/track/4bxyi0eQFr1x75sadwAfE8?si=TqhkhhBhSsOgPG6NQzvw7g

最後は「バッドエンドの主人公」。これは2年前くらいに、突発的にネットラジオを始めたんですけど、そのエンディングとしてのためだけに作りました。
元はと言えば私がCMの曲を作りたくて、でもそういうお仕事もらえるわけないよな……よし自分でCM作ろう!って考えて、CM流すならラジオも作ろっかな、という流れで出来たものなのですが、意外と作るのが楽しくて。 BGMも即興で弾いて、ラジオパーソナリティの録音をして色々と手が込んだものになってるのでよかったら聴いてみてください!

https://youtu.be/_1W5P2Y603U

―天国感がすごいですよね。でもエンディングのバッドエンドの主人公とすごくよく合ってる。

木)その時漫画を読んでいて。なんかハッピーエンド確定みたいな作風のはずなのにどんどん不穏な方向に行ってて、今はまだ完結していないけどこれがバッドエンドで終わってしまったら、私は最後まで読みたくないな と思ってしまって。で、好きなシーンだけ繰り返し見てたら私や主人公は幸せだけど、その漫画の中の誰かはずっと不幸のままかもしれない!なんて思っちゃって主人公きどりになって曲をかきました。エンディングのための曲だったので私にとってはこの曲は最後の曲、だけどそれはこれからも続くものだから 本をいきなり閉じるようにスパン!と切れ味のある曲終わりにしました。

―思いがけず、ボリューミーなインタビューになっちゃいましたね。ぜひこれを読んでいる皆さんにはもう一度エピソードを噛み締めつつ聴いていただきたいですね。

木)長々と語ってしまいましたが、これは私の作品に対するラブレターみたいなもので、各曲に対する考察みたいなものはリスナーの方のものなので、それぞれ自由に想像して曲の世界を膨らませていって欲しいな、と思います。
じゃあ、次に会うのは2ndアルバムかな?(笑)それまでしばらくのお別れです!最後にこの曲を聴いてください!サラバ~

https://open.spotify.com/track/00XShrDLV1l3BLgxhkWz6S?si=usF4QVLJTNynVKypNqRwqA

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