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ニートが転職フェス行って来た

 気が付いたらもう翌午前1時である。
 転職フェスの後東京駅ー新宿間を歩いた後ニー株のオフ会に顔を出して、雨の中濡れて帰ってきて風呂入った後寝てたらこんな時間になった。
 半端に目も覚めてしまったので取り合えず、今日のことを纏めておこうと思う。

 表題の通り、3年くらい無職のままの俺が転職フェスに行って来た。
 場内撮影禁止だしそもそもブロガーとかでも無いので画像は無いが。
 昨日の時点では朝一から参加しようと思っていたのだが案の定起きれなくて遅刻。いや別にいつでも入場可だから遅刻とか無いのだが、大体11時半~2時頃まで場内をうろついていた。

最初の感想

 行ってみた感想の総評として「興味深かった」にはなるのだが、まず最初の登録の時点から面白かった。
 手順として、

①マイナビへの登録&アプリへの事前登録
②入場し整理番号みたいなのをアプリで発行
③希望する職種のシールを胸に貼り、QRコードを読み込ませて簡易履歴書みたいなのを印刷(10枚)
④企業のブースに行き着席と共にブースのQRコードを読み込み着席確認。
⑤簡易履歴書を手渡ししてパンフレットを貰いつつ話を聞く。
⑥回り終えたら最後にアンケートに答えて、回った数に応じて電子ギフト(俺は1000円分)を配布。

 というものだった。
 流石は天下のマイナビ、非常にスマートで現代的な管理方法だった。
 アプリもスムーズに稼働しスマホの電池が気になること以外はとても合理的で楽だったと思う。流行りのDXって感じだね。入場手続きも10分とかからなかったし。

 そんな風に合理的に管理されていくスーツの群れを、最初の手続きの順番を整列しながら見ていたら、なんとなく食肉加工される豚の肉の塊を思いだされた。

 そう、まぁ当然なのかもしれないが、男も女も皆スーツだった。
 俺は私服で行った。流石にジャージとかではなくフォーマル目な奴を着て行ってはいたが、黒いスーツの中白いシャツを着ていた俺は間違いなく浮いていただろう。

 全体的な感想としては、そうだな、これまた当然だが誰も彼もマスクを着けていた。
 それもあるだろうが、やはり東京は垢抜けた女性が多い。マスク美人というのもあるかもしれないが、ぱっと見可愛いって思う人は結構な確率でいた。
 まぁ誰も彼も別の世界を生きる人たちなので、それ以上は無いけど。

別世界

 自分自身も加工され、本会場に流れ込む。
 そこから先は比較的混沌としていたが、やっぱり小学館や役所、JRとかの有名どころには人が群がっていた。比較的どのブースも埋まっていて色んなところから声が聞こえた。
 でも思い返してみても、自分が話した人以外の印象が一切残っていないのだ。転職という人生において重要な局面を見据えた人たちが集まっている、極めて俺好みなイベントだったはずなのに。

 誰も彼も、スーツに身を包んでより良い労働条件を求めて彷徨う。
 どんな条件なら自身の身を捧げてその会社の一部になれるかを見極ようと。
 多分、俺自身が不安と緊張で余裕が無かったのも大いにあるだろう。
 でも思い返せばそれと同じくらい、現実味が無かったのだ。
 VR空間を歩いているのとほぼ同じ感触だったのだ。

 稀にNPCですとばかりに特徴的な法被を着たおじさんおばさんや、重厚感ある初老の男性とかがいる。
 でもそれ以外どこを見ても黒髪でスーツを着てマスクを付けた2,30代ばかり。配布された初期アバターで歩いているよう人たちのように思えた。誰もが当然のように髪を整え化粧をし、外見を良くしているから余計だ。
 見た目だけじゃない。彼ら彼女らはもう、俺にとっては別世界の人間だった。俺にはもう理解出来ない価値観で動き、異なる行動原理で彷徨っていた。
 3時間弱もあの場所に居て、ブースで話した人以外誰一人記憶に残っていないのだ。振り返ってみて少し唖然とした。

情報収集のために

 人の話はこのくらいで良いだろう。
 俺はこの転職フェスには、主に情報収集のために参加していた。
 参加前はまだはっきりと言語化していなかったが、後から整理するとこんな感じだ。

①企業から見て今の俺はどう見えるのか
②一般的企業に対して今の俺はどんな反応を示すのか
③沢山の企業の中からどんな企業に自分が興味を示すのか
④自分の望む労働問題とかを考える仕事で、俺が採って貰えそうなのはワンチャン無いか

 最初は漠然と情報収集という感じで、④だけが明確に自分では認識していた。
 もう俺は自分の関心が深く無いことを仕事にするのは諦めた。その為に自分を削って成型するのは無理だと、3年前に退職した時に理解したから。
 甘えと言われるかもしれない。まぁでもそうなのだ。俺は使い勝手の良い、仕事を投げたら適切な成果を出す人間になれるほど意思が強く無いのだ。
 でも働きたいのは本当なのだ。自分で独立して働くということに自分自身の意志薄弱さにも、資金的コネクション的観点からでも限界を感じつつある今、可能なら大樹に寄りかかって生きたいと願うこと自体は在り来たりな帰結だろう。
 ただ実際問題、俺は人材として間違いなく不良品だ。頭が回ろうと口が回ろうと、言われたことを素直にこなせず逃げ癖もありフルタイムで働く体力の無い人間なぞ、まさしく社会不適合者に他ならない。
 そんな俺が大樹のもとで力を発揮するには、能力があるから変則的な雇い方も許容されるようなイレギュラーとして認められる必要があった。
 そう考えていたが故の④であり、ニートなのにハイキャリアを望む滑稽さに自分自身でも失笑しつつ、恥を忍んで参加した理由だ。

 まぁ結論から言うとそんなものは当然なかったのだが、情報収集の方では色々収穫はあったので順番に記録していく。

①企業から見て今の俺はどう見えるのか

 本会場に入って最初にしたのは、会場内を順番に見て回ることだった。
 本会場に入る前の説明会的なのを聞きながら配布された資料を流し読みしてどんな企業があるのか見ていたが、イマイチピンと来るものが無かった。
 それもあってどこの話を聞くのか、どんな雰囲気でどんな人が対応していて何を売りにしていて何を売っているのか。それらを見て俺の琴線に触れるものはあるか。
 そんなことを考えながら人の間を縫って見て回っていたのだが、まぁ多分「声かけて欲しい」というのが本当の所だったろう。
 幾つかブースで話を聞いた後もう一度同じことをしたのだが、それも含めて普通の企業からは一切声を掛けられなかった。

 今から振り返って考えれば当然だろう。
 「企画」「営業」といった職種を希望しているくせにスーツを着て来ていないのだ。しかも頭もモッサリしていて、足早に通り過ぎていく。
 そんな常識を弁えない奴に真っ当なビジネスマンからしたら声をかけたくないのは当然のことだ。

 実は企業からの反応を見るためにもう一つ仕掛けをしたのだが、結果的にうまく機能しなかったので後述する。

②一般的企業に対して今の俺はどんな反応を示すのか

 今度は俺自身がどんな感情を持つかだ。
 仕事を辞めた直後は憎悪を抱き、絶望の後には隔絶を感じ、オフィス街を歩けば心理的ストレスから少し吐き気すらおぼえた今の俺が、何を思うか。
 まず最初に感じたのは当然のように恐怖だった。ニートというビジネスマンからすれば唾棄すべき存在が、異物が紛れ込んでいると気付かれれば、どんな顔をされるのか。
 勿論あからさまに追い払われはしないだろう。ただきっと余所余所しく困惑気味の対応をされるのだろう。
 そう思うと恐ろしくて、ブースを回る足は自然と早まった。

UIターン

 ただブースを一回りする直前くらいで、ようやっと声をかけられた。
 UIターンの勧誘のお兄さんだった。どうやらクリエイティブ系の仕事をしている人だと思われたらしく、それなら郊外の秩父とか良いですよ、と声を掛けられたのだ。
 一通り聞いたうえで「実はクリエイティブではなく企画的なことをやりたくて……」というと若干困った顔をしていたが、ブースの席が空いたのでそっちにパス。
 そのブースは企業ではなく自治体から委託を受けての勧誘なので、一つ一つの仕事の紹介は出来なかった。その代わり地元の良さみたいなのを色々教えてくれたのだが、正直その辺はそこまでこだわりが無かったのであっさりと流した。

 まぁ折角座ったのだからと、前述の仕掛けを試してみた。
 それは簡易履歴書だ。前職とか現職とかを書く欄に。俺は「自宅警備員」と書いたのだ。
 それで簡易履歴書を読んでるタイミングで、「そこに書いてる通り実は僕ヒキニートで、そろそろ仕事を、と考えてるんですよー」とカミングアウトするという、クレイジーな先制攻撃をぶち込むという仕掛けであった。
 ただ案外というか、そこまで変な顔はされず普通に地元推しが後に続いた。

 UIターンブースは固まっていたので、その流れで福島や石川等の話を聞いた。
 どこも大体流れは一緒である。
 あれ、意外と杞憂だったか?と思いつつ、脳内を整理するために休憩所に座って資料を見直していたのだが、ふと気付く。
 よく考えれば今行った所は若サポとかハロワと同じだ。あくまで紹介だから、別に責任もって雇う立場にない。シビアに見る必要がなく、むしろ取り合えず肯定して企業に投げてしまえば良い立場でしかないのだ。参考にならない、と。
 ただまぁ、全ての人が俺を鼻つまみ者と見做すわけでは無いと分かっただけでも儲けものだったのは間違いない。
 多少場内の居心地の悪さが緩和された。

③沢山の企業の中からどんな企業に自分が興味を示すのか

 そんなことを思ってブースの巡回を再開し、今度は普通の企業を重点的に回ろうと考えた。
 そして二周目を回り始めたのだが、結果から言うと山口県の旅館の話を一つ聞いただけだった。

 理由としては幾つかあって、一つは単純に腰が引けた事。
 「居心地の悪さが緩和された」とか言ったがそんなことは無かった。普通の企業の島に行くと変わらず異物感を強く感じた。

 二つ目はシンプルに興味のある仕事が無かった。
 労働問題とか教育問題に取り組むとか、そういう仕事を探したが無い。
 せいぜい転職サービス系や受験勉強関連の会社しか無かった。
 そして当然と言うか平社員の募集で裁量権の得られるポジションというのは望み薄そうだった。
 ニートを対象とした就職サービスとかの企画をぶち上げられればとかを来る前には妄想していたのだが、それを企業ブースに行って話す度胸はやっぱり無かった。

 三つめは想像以上に俺が東京に疲れていたという事だ。
 合計7つのブースを回ったのだが、蓋を開けてみれば全て地方のブース。
 次の就職も都内だというだけで自分の中で結構なマイナス評価になっていることに気付いたのだ。
 平面と角と曲面ばかりの、街も人も、人にとって扱いやすくデザインされた東京という街に思ったより辟易していたようだ。

④自分の望む労働問題とかを考える仕事で、俺が採って貰えそうなのはワンチャン無いか

 そんな感じだったので、前述の通り当初期待していたような仕事には巡り合えなかった。
 ただ、今日電車賃を払って行って、それなりに収穫があったと思えたのは理由がある。

収穫

 第一に自分がニートや引きこもりの就労問題に関心があるということ。
 厳密に言えば別にニートやひきこもりという属性に特別のこだわりがあるわけでは無い。
 人としての生き方を考えた時、今の日本社会はかなりガタが来ていて機能不全が各所に出ていると考えている。
 顧客の望むものを安く確実に届ける。確かにそれは素晴らしい事かもしれない。だったかもしれない。ただそれを突き詰めた結果、働く人たちも安く確実であることを求められてきた。他人にとって都合の良い道具であることが評価基準であり、それに適合できなかった不良品は見えないところに押し込められた。
 そしてそれはドンドン極端になってきている。システムやAIというライバルと比べられ、安い日本は進行し、十分な見返りもなく精神論による奉仕を求められる。そしてそれを白けた顔で冷笑しているZ世代。
 実態はともかく、俺には日本社会がそう見えている。
 故に、仕事のために人を変えるのではなく、人が働く為に価値を生み出し対価を貰う、そんな価値観の転倒を図りたい。
 当然そんなのは理想論だ。誰もがそれを目指し、現実との折り合いの中で適応していくのだと分かっている。
 それでも尚、その理想論のために俺は働きたい。実際反動としてそういう青臭い理想を求める風潮は強まっていて、追い風は吹いているとは思っている。
 そんなことを考えた時、自身の引きこもりとかニートであった経歴は、そこで知り合った人たちとの人脈は、強みへと転化できると考えた。
 そんな利己的な理由で引きこもりとかニートという属性を利用しているだけに過ぎない。
 別に俺は引きこもりやニートを殊更可哀そうな存在とは思っていない。繊細に気を使わなければならない存在とは思っていない。彼らがそうである理由は彼ら自身にもあるし、彼らの周囲の親などにもあるし、社会全体にもあるというだけの話だ。
 ただきっとこれから先、社会に適合出来ない人の数は更に増えていくはずだと感じている。だからその人たちの受け皿を作りたいのだ。政府には期待できないからね。
 まぁこれは以前から自覚はしていたが、今回の事でより明確になった。

 第二に、先ほど述べた通り結構地方に興味があるという事。
 勿論地方に住むと今と違って色々と不便なのは理解している。この理解が薄っぺらいものであることも含めて。
 こういう場合本来は真っ先に本来の地元、兵庫を考えるべきなんだろうが、申し訳ないがまだそこまで折り合いがついていない。

 第三に、想像以上にUIターンには強い流れが来ているという事。
 今回の転職フェアには合計6つの地方からのブースがあったし、話を聞いた感じ、単純に金が流れている。
 各地方が専用のHPを作り、求人を集め、まとめて東京に人を送っている。まだまだ試行錯誤の途中といった感じはあるが、それ故に受け身では人が出ていくばかりだという覚悟のようなものを感じた。
 その強い流れというのは単に移住に際して補助金を貰えるというだけではない。地元住民の受け入れへの覚悟にも繋がるだろうし、何か新しいことを試そうとしたときの柔軟さにも繋がるだろう。
 そういう意味でも何か動くなら地方の方が適していると強く感じた。

 実は、地方に移住して労働問題に関わる企画を立ち上げたいと考えたのは初めてではない。
 時間の感覚がイカレているので何時かは忘れたが、何年か前も一度考えたことだ。だが結局それを実行できるだけの知識と人脈が足りなかった。
 ただ、その頃と比べると更に色々と知識と思考の積み重ねが増えたし、(これは完全に勝手に言ってるだけだが)若新会長という著名人とのツテも得た。俺の考えていることは若新会長も興味のある試みだろうから、ご助力を願える可能性は0じゃない。まだ検討段階だがベーシックインカムの社会実験という要素を付け加えれば更に金を引っ張る、資金援助を求めるかもしれない。
 まだ整理が付いてはいないが、一先ずお先真っ暗と言わずに済む程度には検討出来る要素が揃ってきている感覚を得たのだ。

 転職フェアの感想としてはこんな感じだ。
 あ、因みにこれを読んだ方で話を聞いてみたいとか採用したいとか
出資したいとかいう方は是非クリエイターページからコンタクトをください。もしそんな奇特な方がいらっしゃればですが(

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 この後は余談というか、転職フェス後の散歩についての日記です。

余談:ニート、永田町を歩く

 転職フェアの後、ニー株のオフ会に参加する予定があった。
 東京国際フォーラムで開催されていた転職フェアを出たのが2時前で、オフ会は4時から新宿だった。
 2時間暇でどうするかと考えていたのだが、結局東京ー新宿間を歩くことにした。ニートは200円の電車賃も惜しいのである。

 で、実際歩いてほぼ時間丁度に会場に着いたのだが、ルート的には皇居の南を通って桜田門、霞が関、永田町、赤坂、四ツ谷、新宿というルートだ。

 歩いていて一番の感想は「警官多いな」だ。
 まぁそりゃ当然なんだけどね。国政の中枢とか、国民の象徴たる天皇の住まいや敷地なんだから。

 他にも、桜田門とか永田町とかフィクションじゃないんだってのも思った。実際に警察署とか議事堂があるから町名が代名詞になったりするんだなと再確認。
 それらの側を通って思ったけど、思った以上に建物が古いのが多い。気軽に建て替えれないだろうなとは思ってたけど、実際に目にして公務員も大変だねと思った。

 あと、生活保護受給者なんて貧民の代名詞みたいな奴が平然とそういう要所を守る警官の前を素通り出来るのは、まだギリギリ日本は豊かで治安が良いんだなとは思った。
 「国葬反対」とか自民党前で街宣カーで喚いてる奴には辟易したけど。訴える対象間違えてるだろ。新宿で同じこと喚いてる奴らの方がマシだ。国民がバカだから政治家に舐められてるって話だろうに。

 まとめて、日本という国自体がもう老朽しているなというのが率直な感想だった。
 庁舎の建物と同じだ。
 かつての栄光で今はまだぱっと見は崩れていない。
 でももはや大した華やかさも力強さも感じられない。
 古くなった物を立て直す余力も無い。
 そんなつまらなくて、疲れ果てた風景と雰囲気を感じた。

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