清田隆之/桃山商事

桃山商事・清田代表のnote

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基本的人権と日本の近代─シェイクスピアの混乱から星野源の「ばらばら」へ─(5)

9. 人類が迎えた2度目の地殻大変動  さてさて、1600年を中心に動いた世界の知的地殻大変動の結果、近代という時代は生まれたわけですが、ここで少しおさらいをしておきましょう。  1600年を中心に世界に対する人間の認識は大きく変わってきました。宗教的な時代は終わり、世界を人間の間尺に合わせて理解する時代が始まります。人はキリスト教的社会有機体から離れ、個人となり、いくつかの大きな政治的変動を経て、王権神授説により絶対的な存在であった国王の権勢は議会により縮小され、人は近代

    • 基本的人権と日本の近代─シェイクスピアの混乱から星野源の「ばらばら」へ─(4)

      7. 「このままでいいのか、いけないのかそれが問題だ」  古代から連綿と続いた宇宙観や、神と人間との関係性は、ゆっくりとではあっても、確実にじわじわと変わり続けていました。コペルニクス以前にキリスト教界でも神と人との関係は根本的に変わり始めていました。ルターがヴィッテンベルグの聖堂の扉に95カ条の論題を打ちつけたのが1517年で、『天球の回転について』が出版される25年前のことです。  ルターから始まり、ヨーロッパ全体に広がる宗教改革は、それまでのカトリックの信仰とは異なっ

      • 基本的人権と日本の近代─シェイクスピアの混乱から星野源の「ばらばら」へ─(3)

        5. 名誉革命からフランス革命までの100年間  1689年は英国議会が「権利の章典」を提出した年です。その前年、1688年の名誉革命からの流れで英国議会により提出された「権利の宣言」をメアリー2世とウィリアム3世が承認することで二人は国王として即位します。この宣言を「権利章典」として、正式には「臣民の権利と自由を宣言し、かつ、王位の継承を定める法律」として制定した年が1689年です。  ここまで英国の国王は、「王権神授説」――国王の統治権は人民の委託によるものではなく、神

        • 基本的人権と日本の近代─シェイクスピアの混乱から星野源の「ばらばら」へ─(2)

          3. 権利を捨てた5400万人の有権者  しかし、国家にとっても憲法にとっても、このような重大事件が起こっていたにもかかわらず、国民の意識は低く、そのことは2015年9月19日以後、2020年現在までに行われた3回の国政選挙の投票率の低さに現れています。   2016年7月10日   第24回参議院選挙 54.7%   2017年10月22日  第48回衆議院選挙 53.68%   2019年7月21日   第25回参議院選挙 48.8%  一番最近行われた2019年の参

        基本的人権と日本の近代─シェイクスピアの混乱から星野源の「ばらばら」へ─(5)

          基本的人権と日本の近代─シェイクスピアの混乱から星野源の「ばらばら」へ─(1)

          0. はじめに このテキストは、水谷八也と清田隆之が早稲田大学で開催している勉強会「見当識と素材を取り戻すための自主ゼミ」で学んできたことをベースに、水谷が執筆を、清田が編集を担当してまとめたものです。見当識とは「自分が立っている現在地を把握する能力」のことですが、日本社会はこれを失った状態である“失見当識”に陥っているのではないかという問題意識のもと、様々な文献やドキュメンタリー作品を参考にしながら「日本の近代」について学んできました。  その根幹となる民主主義と基本的人

          基本的人権と日本の近代─シェイクスピアの混乱から星野源の「ばらばら」へ─(1)

          【yom yom連載】インタビューさせてくださる男性を探しています。

          この度、新潮社の電子書籍文芸誌『yom yom』にて「一般男性とよばれた男」というタイトルの連載を始めることになりました。ざっくり言うと、社会的に「普通」とされる男性たちが何を感じ、何を思いながら日々を暮らしているのか、インタビューしながらその内実に迫るという企画です。そこで、お話を聞かせてくださる男性を募集しています。 私は第一回目の原稿(2020年3月20日発売の『yom yom』vol.61に掲載される予定です)で、このようなリード文を書きました。 〈一般男性という

          【yom yom連載】インタビューさせてくださる男性を探しています。

          2019年参院選を前に――【見当識と素材を取り戻すための自主ゼミ】で学んだこと

          2019年7月16日 「見当識と素材を取り戻すための自主ゼミ」 水谷 八也 + 清田 隆之 人間を役立つ/役立たないで分別するdoingの世界  「見当識と素材を取り戻すための自主ゼミ」という名前で私的な勉強会を始めたのは2015年でした。第1回目のチラシの中央には野田秀樹の『南へ』(2011)の最後の方に出てくる「いつまで夢遊病者のままなんだろう僕らは。……おい、日本人、僕は誰なんだ?」という南のり平の台詞が引用されています。この言葉は、2019年現在でも、私たち

          2019年参院選を前に――【見当識と素材を取り戻すための自主ゼミ】で学んだこと

          【試し読み】清田隆之(桃山商事)『よかれと思ってやったのに──男たちの「失敗学」入門』 まえがき

          はじめに──男たちの「失敗学」とは何か  突然ですが、恋人や同僚から「鼻毛が出てるよ」と指摘されたら、みなさんはどう反応するでしょうか? (1)「いや、出てないから」と強硬な態度で否認する (2)「あえて出してる」と屁理屈を言って突っ張る (3)「お前もこないだ出てたし」と謎の反撃を試みる (4)「マジで?」と指摘を受け入れ、鏡をチェックする  この4つは、実際に私が遭遇したことのある、男性たちからの代表的なリアクションです。心当たりはありましたでしょうか。それとも

          【試し読み】清田隆之(桃山商事)『よかれと思ってやったのに──男たちの「失敗学」入門』 まえがき

          「2016年参院選を前に――見当識と素材を取り戻すための自主ゼミで学んだこと」

          2016年6月30日 「見当識と素材を取り戻すための自主ゼミ」 水谷 八也 + 清田 隆之 大日本帝国憲法と日本国憲法 7月10日の参院選を前に、これまで経験したことのない焦りに駆られて、これを書いています。憲法を変えたがっている政党は、この選挙で改憲を争点にはしていないため、憲法問題がぼやけている現状ですが、彼らが2/3以上の議席を取れば、自分たちが思い描く改憲案を、昨年の9月に行ったような状況下で押し通すであろうことはほとんど想像力のない人でもわかりきったことです。

          「2016年参院選を前に――見当識と素材を取り戻すための自主ゼミで学んだこと」