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少年院 №12 シキタリ

 5学寮の前に着くと入り口の鍵が開けられた。俺はどんな奴らがこの寮で生活しているのか想像がつかず、中坊の悪ガキどもが沢山いるくらいのイメージでいた・・・。玄関は広く廊下に荷物を置くと、引渡しの挨拶みたいな感じで、考査寮の教官から5学寮の教官に俺は引き渡された。荷物を持ち廊下を右に歩くと又、鍵付きの扉がある。その鍵を開け寮の中に入ると、一斉に鋭い視線が集まった。俺よりも先にこの少年院に収容された先輩寮生達が、俺に向かってガンを飛ばしてくるのだった。俺はその視線にやり場のなさを感じたが、負けずにガンを返す。今にも喧嘩が始まりそうな異様な雰囲気だったが、教官の声が吹き消した。


「増田~。部屋案内してやれ~。」


「はいっ。」


短く元気な返事をしながら、俺に作り笑顔で近づき。


「相沢君行こうかぁ!!」


と俺を誘導し始めた。


俺は、荷物を運びながら、獲物を狙う様に見つめる群集の鋭い視線を振り切り、そいつの後をついていった。

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