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見える景色が変わった

今週からPM体験入部を開始した。とはいっても、PMも、ライターである私も、同じkintone開発チームだ。体験入部とは言っても人事的な手続きを踏むわけではなく、「お隣の職種体験」に近い。

それなのに、チームが変わったわけでもないのに、今週私の目の前の景色はがらりと変わった。
「付き合う人を変える」(一日の中で一番接する人がPMになる)
「環境を変える」
「時間の使い方を変える」

これだけで、景色って大きく変わるんだな。
有名な、大前研一さんの「人間が変わる3つの方法」の話に近いものがありますね。

そういえば、5年前、営業本部から開発本部に異動した時だって、がらりと景色は変わったのだった。忘れていただけだ。それに、付き合う人を変えるといっても、PMとは日常的にちょいちょい業務で関わりはある。PMの分報も欠かさず読んでいたし、スクラム開発の打ち合わせも同じように毎日参加していて、考えも理解していたはずだった。
だから、体験入部といっても、どれだけ変わるものなのかな、という気持ちがあった。

それなのに、1日の大部分を一緒に動いて、ずっと思考に触れることが、こんなに意識や感情に影響を与えてくれると思わなかった。
平面だった景色が、立体的となり、上からずっと遠くを見渡しているような感覚になった週だった。

PM体験入部の開始

kintone開発チームのプロダクトマネージャー(PM)の体験入部を開始することになったよ、というのは、体験入部のOKをもらった日に勢いでnoteに書いた。

さて体験入部の初日朝10時、めちゃくちゃドキドキしながらPMチーム用のZoomに参加すると、「あ、大石さん来た」という声で迎えられた。おつかれさまですと伝えて、特別な挨拶はしなかった。今思えばけじめとしてちゃんと挨拶すればよかったかな。まあいいか。
PM体験入部は、特別なタスクが用意されているわけではなく、綿密なマニュアルがあるわけでもない。スライド2枚の「体験入部の教科書」とスライド6枚の「PMの一週間(そこから体験の仕方をイメージする)」が用意されている程度だ。それでも、ずっと同じ開発チームにいるので、PMがどんな1日を過ごしているのかは大体知っていて、戸惑いはなかった。

視野が広がった

PMが体験入部用の分報スペースを作ってくれているので、体験入部中の気づきなどはそこに書いていくことにした。PM体験入部者は、入れ替わり立ち替わりたくさんいる。現在8名くらいは体験入部中らしいけど、今週のPM ZoomではPM合わせて3人~4人が一番多かった。つまり体験入部者が私しかいないときもそこそこあった。夕方にMAX8人くらいの時が最大。
あと、週1回のPM定例という打ち合わせになると、一気にみんな集まってきた。

kintoneのPMは4人いるが、体験入部でずっと一緒に過ごすのは、製品機能をメインで考えるPM2人(長尾くんと、PM兼UXリサーチャーの祐太さん)。
普段ライターとして文言、ヘルプ、アップデート情報などの業務で関わるのもその2人が主なので、特別新しい環境ということではなかった。

初日はPMと一緒にZoomに入り浸って、バックログ検討を見たり、バックログに来ている質問に返答する様子を見たり。Zoomに訪れたPGと実装の話をしたり、PGのZoomに呼ばれて実装途中の相談の場に行ったり。この、PMとPGのやり取りを見たかったので、リアルタイムの開発状況を垣間見られて初日からテンションがあがった。

ほぼずっとZoomにつなぎっぱなしのうえ、私は聞いていることがメインで時々感想を言ったり反応したりするくらいだけど、それでも集中してずっとZoomに参加しているのは疲れる。1日話しているPMはさらに疲れるだろう。
ただその疲れを上回るくらいに、PMがバックログを作るときの思考をずっと聞けるなんて、なんて贅沢だろう。と感激した。

初日を終えての感想は「視野が広がった」だった。
1人PCの前でうんうん唸って文言を考えているだけより、さまざまなやり取りやバックログの状況を見ながら、製品開発の中での文言の位置がくっきり見えて、いつも気になっているようなちょっとしたこと(文言レビューのOKがなかなかでないなとか)がちっぽけに思えた。
「開発が好き」「開発の現場にいたい」という私にとって、これは最高の場所だと初日から興奮した。これこれ、これだよ。これを体験したかったんだ!

バックログ作成に文言観点で参加した

体験入部3日目の木曜日、PMがバックログ作成をする場にずーっと参加した。まさにPMのコア業務。
UIを作るバックログで、デザインと文言の割合がメインのものだった。
PMがバックログを書きながら「仕様書どこだっけ?」と言えば私は影で仕様書を検索しまくってチャットでURLを送ったり、仕様のまとめを私もぶつぶつつぶやきながらPMと一緒に確認したりした。そうしながら、文言イメージを想像していた。
バックログがある程度できたあとは、デザイナー、PM、PGとあれこれ言いながらデザインの中に文言を当てはめていく。

今までもデザインメンバーが声をかけてくれて、デザインの段階で文言を検討する場に参加したことはあった。声をかけてもらえるのは嬉しいと思いながらも、突然デザインを見ながらぱっと適切な文言はなかなか思い浮かばない。
今回のケースだと、PMもその場にいて、受け入れ条件をまとめるところから一緒に見ているので、文言もより精度高く考えられるなと感じた。
とはいえ、中盤までバックログ作成の見学に集中してしまって、文言を同時進行で考えてばしっと提出することはうまくできなかった。
夕方になってデザインメンバーもモブに参加してからは、少しずつ文言を提出し、プロトに当てはめてもらった。

翌日もう1人のPMに見てもらったときには、観点の抜けをいくつも教えてもらい、反省しつつも指摘されたところは確かにと納得できるものだった。自分から先に気づけるようになりたい。そんなことはもう何度も経験していて、この壁からなかなか先に行けない。
もう一歩、進化したい。壁を越えたい。

文言レビューをみっちり受ける

バックログのコメントでレビュー依頼していた文言について、体験入部のZoomでいくつかみっちり指摘を受けたり、一緒に決めていったりした。2年くらい前は、PMも今より時間があってよくそんな風に一緒に文言を考えてくれていたけど、この1年はそんなこともずいぶん少なくなった。たまにZoomで文言レビューを受けても、必要な指摘だけを急いで伝えてもらうことが多くなっていた。

体験入部でずっと一緒にZoomにいるからかはわからないが、久々に「一緒に今考えましょう」という流れになり、何パターンかの文言例、ダメな文言はなぜダメなのか、考え方などを教えてもらった。

今週よく言われたのが「論理的な文章」という言葉だ。「論理的に考えないとだめですよ」と最近とみに指摘を受ける。これはテクニカルライティング、パラグラフライティングにも通じる文章の基礎で、重要なことはよく理解している。長年私は感覚で文章を書いてきたんだなと痛感している。
テクニカルライティングの検定を取ったり、文章の本を読んだりはしているが、知識として知っていることと、それを活かしてさらに「論理的に、かつ伝わりやすく」文章を書けるかはまた別なのだ。
今週聞いた中で印象的だったのは「あいまいさを含んだ文章が論理的に正しい」というフィードバックだった。

今回の機能の中で論理的な文章とは、単に結論から書いているような文章ではなく、「この仕様を正確に分かりやすく伝えるなら」→「あいまいさを含んだ文章が正しい」と導き出せるよね、ということ。よく理解できたが、とても難しい。
そして、仕様について少し不安に思いながら雰囲気で書いた言葉は、ものの見事に見抜かれる。いつも。「ほんとに理解してるー?あやしいなー」と言われてしまう。
「これが明日までに理解できるようになることが、大石さんの成長なんですよ」と言われてしまった。でも、ありがたい指摘だと思う。

2月版の文言で1つ最終調整中のものもあり、それも体験入部のZoomでPM2人と一緒に1時間かけて決めた。ずっとPMのそばにいると、こんな風に適切なタイミングでナチュラルに文言も対応していけるなあ、いいなあ。

バックログへの返信を見るだけで学びが多い

PMは、毎日朝と午後に1回ずつくらい集中して「バックログへの返信タイム」を行う。逆に言うと、それ以外の作業時間は機能のバックログ作成に集中していることが多い。この「返信タイム」が毎回楽しみだった。自分の業務に直結するような有用な会話が多く、とにかく勉強になるのだ。

・仕様書レビューで、PMの仕様書の読み方を知る
・PGからの質問に対しての返信で、仕様理解が深まる
・機能の受け入れ確認で動作を気にするポイントがわかる
・デザインレビューで気にするポイントがわかる
 →全てにおいて視認性が高いことがいいわけではない、などの指摘にはっとした。

印象に残った言葉

バックログの種を探しているときだったか、PMが言った
「言葉は下手でも、何を伝えなければいけないか見抜いておかないといけない。」
という言葉、ぎゅっと真意がつまっていて胸に刺さった。
「言いたいことは何か」を見抜き、それを言語化する力が大事ということだ。

2時間のざつだん

金曜日。PM2人と、その日体験入部が終了だった同僚、そして私の4人で業後にざつだんをした。気づいたら2時間近く経っていた。
開発のこと、体験入部のこと、そこからライター業務の話。気づいたら最近の悩みを話していた。自分の悩みやライターチームのふりかえりであがる悩みなど。
「えー、、ちょっと誤解しているな。今ライターメンバー呼べます?」とPMが言ってくれたけど、もう業後だったので呼べなかった。月曜の夕方にみんなで話しましょうか、と盛り上がって、予定を登録した。
忙しいPMが、自ら「1時間くらいライターメンバーと話したい」と言ってくれたことが、すごく嬉しかった。実は悩みの1つはPMとライター間のコミュニケーションの問題もあったから。

PMと予定を入れて「こんな点がやりづらいので、改善してもらえませんか」と言うことはいつでもできた。でも、それはやりたくなかった。
機械的に設定した場で「さあ本音を話し合いましょう」と言っても、それで変わるとは思えない。人には感情があるからだ。
リラックスした、ゆるっとした雑談の中で、PMが「自分の考えを伝えたい」と思ってくれて嬉しかった。それでこそ目的に向かって切磋琢磨しあえる関係になると感じている。
PMとはいつかそんな問題解決ができると思っていたので、急がずに、時を待ってよかった。
そして、体験入部することで、コミュニケーションがより取りやすくなる効果もあって嬉しいなと感じた。

私個人で言えば、昨年から今年になっても、いろいろつらいことがあった。
なんだかくさくさしてテンションも落ちていて、「なんか環境変えたいな」と思ってPM体験入部を思い切ったのもある。そう話したら「いいことですね」と穏やかに言ってもらえたのが本当に嬉しかった。「ちゃんと時間を使って体験入部してね。なるべく長くPM Zoomにいること」と言ってもらえるのも心強いし嬉しい。
「最近はネガティブになっていた」と話した時、「ネガティブって悪いことじゃないですよ」とPMが言ってくれたことも、救われた気がした。

体験入部以外で印象に残ったこと

今週は体験入部以外にも印象深いことが2つあった。
1つは、PGと新卒面接の対応をしたこと。
面接時、丁寧に質問していくPGの様子を見ていたら、私が業務で質問した時も、いつもこんな風に丁寧に返してくれるなあと、なんだかとても優しい気分になった。
面接結果のコメントも丁寧で、その文章を見ていて、「あ、サイボウズオブザイヤーで”もしかして、この人が書いてくれたかな”と思っていた嬉しいメッセージ、やっぱりそうだったんだ」と気づいた(文章のちょっとした癖で気づいた)。私もその人に「ありがとう」を送っていたので、お互い感謝しあっていたんだなーと思って嬉しくなった。

もう1つは、翻訳会社の方にkintoneの製品説明をしたこと。
気合いでシナリオを用意して、少しだけポイントポイントで練習し、時間配分だけは比較的細かくメモして本番に臨んだ。
翻訳者の方は初めてkintoneに触るので、まずkintoneのイメージをつかんでもらい、かつヘルプや文言を翻訳していただくうえで、機能の特長は理解してもらいたい。
製品サイトにある動画を流し、その後はデモ環境を触りながら、時にヘルプを見せながら、アプリ作成、一覧、グラフ、ファイル読み込み、ルックアップ、プロセス管理、計算式、アプリ設定画面の中でできること、スペース、管理機能など、ひと通りkintoneの説明を行った。時間は質疑応答を含めて想定通り約2時間だった。
「kintoneはいい製品ですね、機能の概要やその使い方が想像できて、翻訳するうえですごく有用な時間でした」(これは要約で、もっと細かくお礼を書いてくださっていた)というようなメッセージをあとでいただき、本当に嬉しかった。

仕事をする楽しさをいろんな方面から味わった1週間だった。
「PMの思考からの気づきを、言語化して書き残す」を体験入部の目標とすることにした。

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