掌編小説:青春時代
窓から日差しが差し込んで、床にガラス戸をかたどった日だまりができている。教室の天井に設置されている首振り扇風機は、可動域いっぱいに首を振って教室にいる生徒達に風を送り込んでいた。
せっかくの昼休みだというのに、ひとりMDプレーヤーを再生していた私のもとに友達が駆け寄って来る。
「帰りに商店よらない?給食たべれるの少なくて絶対お腹すくわ」
私はイヤホンを外し「いいよ」と答えた。残すところは午後の授業と終礼だけだ、ここまでくれば下校時間なんてすぐだろう。
*
「帰ろー」「部活行こうぜー」終礼が終わると同時に教室内に言葉が飛び交う、ぞろぞろと生徒が教室を出ていく流れのなか、私と友達もその流れの一員となった。
「今日は何聴いてたの?」
「あぁ、今日もゴイステ聴いてた」
「へー、最近ハマってるよね。今度貸してよ」
「兄ちゃんのだからなー、MD持ってきてよ。ダビングするから」
「おっけー」
学校の向かいにあるさびれた商店。
解放されている狭い商店の入り口をくぐり、迷いなく総菜コーナーへ。
友達はお決まりの商品に手を伸ばす。ささみフライと梅おにぎりだ。
私も同じ物を手に取り、レジにいる愛想のないおばさんに会計をしてもらった。
私達はいつも同じ物を買い、同じ帰り道を歩き、友達の家にある64(ロクヨン)でスマブラをして19時まで遊んだ。友達の親はいつも帰りが遅いのでもっぱら私達の遊び場になっていたのだ。
----こんなに気の合う友達はそうそういない。
ゴイステのおすすめの曲や峯田和伸について熱心に語っていると、友達がだんだん真剣な面持ちになっていく。
----なんか変なこと言ったかな。
私は内心焦りを感じていると、友達は真一文字になっていた口を開いた。
「ねぇ、うちらそろそろ親友にならない?」
私の頭の中にはゴイステの曲が一節流れる。
~♪~ そんなひと時を青春時代と呼ぶのだろう ~♪~
≪ おわり ≫
ご一読ありがとうございます。他の作品もいかがでしょうか。
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