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【掌編小説】手作りパイを先輩に♪

 憧れの先輩。

 爽やかイケメン細マッチョ、質実剛健しつじつごうけん、朗らかで、頭脳明晰ずのうめいせきモテ男、品行方正、ユーモアあふれるジェントルマン♪

 最近、雑種の保護犬を飼い始めた我が家。

 ある日の早朝、近くの公園へ、犬を散歩に連れて行くと、自主トレをしている先輩を見掛けた。

「先輩、部活以外でも努力してるんだ……」

 光る汗、タオルでぬぐう、たたずまい。

 私は心を奪われた。

 その日から、毎朝、私は犬の散歩を兼ねて、先輩の自主トレを、そっと遠くから眺め始めた。

 数日経ったある日。

 ジョギングしていた先輩が、私と犬の横を走り抜けて行こうとしたとき、

「ワンワンッ!」

 犬がいいタイミングで、可愛く吠えてくれた。思い掛けず、先輩が足を止め、その場で足踏みするようにジョギングしながら、

「可愛いワンちゃんだね♪」

 と、犬の頭を撫でて下さった。

「ありがとうございます♪」

 私はめちゃくちゃうれしかった。

「ワンワンッ♪」

 うちの犬もシッポを振って、なついてくれた。先輩と話すきっかけを作ってくれたうちの犬に、「今日は大感謝祭! 家に帰ったら、ご馳走だよ~♪」と、その日は顔を撫でて撫でて撫でまくってやった。

 その日以来、先輩と私と犬は、毎朝挨拶を交わす仲になった。

 先輩は、自主トレを終えると、いつもベンチに座り、汗を拭いながら、水分補給。水分と共に、日替わりでフルーツを食べている様子だった。

 今週はと言えば……、

 月曜日は、りんご。
 火曜日は、チェリー。
 水曜日は、いちご。
 木曜日は、ブルーベリー。
 金曜日は、桃。
 土曜日は、イチジク。
 日曜日は、お休み♪

 私はそれを見て、得意なお菓子作りを活かして、先輩ともっと仲良くなりたいと考えた。

 それで次の週から、週に1回だけ、さりげなく、フルーツパイを焼くことにした。

 アップルパイ、チェリーパイ、ストロベリーパイ、ブルーベリーパイ、ピーチパイ、イチジクパイ。

 先輩は、どれも、「美味しいね♪ 上手だね♪ いつもありがとね♪」と、褒めてくれた。

 で、今朝、不意に、何気に、先輩に、先輩の好みを聴いてみた。

「先輩!」
「んっ?」
「先輩は、正直、何パイが一番お好きですか?」
「オッパイ♪」
「えっ?!」
「えっ? ……あ、いやっ、その、あれ……、何言ってんだ、俺? アハハ……」

 どうやら、不意に投げ掛ける質問は、不意に相手の本音を引き出してしまうらしい。

 先輩も……、

 やっぱスケベ男子だったんだぁ~♪

 ウフフッ♪

 でも、清廉潔白せいれんけっぱくイメージな先輩の、貴重な『オッパイ』発言!

 赤面して、おっぱいおっぱいな、……じゃなくて、いっぱいいっぱいな先輩の、あの慌てっぷり、ちょっと可愛かったな~♪

 私は、明日から、タイトな白Tシャツの下に、黒のブラをけさせ、オッパイ強調路線で、犬の散歩に行くことを誓います♪

 ムフフッ♪

 私のことは『透けさん』とお呼び下さい♪

 透けさん、隠さん♪

 もういいでしょう~♪

 テヘッ♪

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