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「きのう何食べた?」と朝5:00のコンビニカツ丼。

男性カップルの日常を、食卓とともに描いた「きのう何食べた?」の最新巻、17巻を読んでいてもたってもいられなくなり、一気に書き上げた感想文です。長いです。

◇◇◇

シロさんの両親がホームに入るため、お隣さんと最後の挨拶をする話。お隣の「たっくん」が挨拶に来る。シロさんの両親が孫のようにかわいがっていたたっくんはもう17歳。「おれはもう、ハムは焼かないほうが好き!」とシロさん母に甘えていた時が6〜7歳だとしたら、もう10年近く経っているんだ…と、時の流れにびっくり。
高校生になったたっくんの「正月の3が日には絶対帰ってきてください」の言葉。シロさんちには子供がいないことの意味を理解したことが見えて少しぐっとくる。

ケンジが飲み会帰りに女性のお客さんの家に招かれて断れなくなってしまい、怖い思いをする話。「帰るに帰れなくなってんのかなと思って」とのシロさんからの電話に助けられる。これ、さらりと描かれているけど、なかなかできない気遣いだと思うんです。お客さんだから断れない、でも期待に応えることもできない、というケンジの心の機微がわかるシロさんだからこその行動にうるり。
無事帰ってきたケンジに、夜食のカップラーメンは止めるものの、次の朝にフレンチトーストを作ってあげるシロさんにまたうるり。

ハニートラップにかかってしまったご主人との離婚を回避したい依頼者を、弁護士のシロさんが救う話。解決し、「まるっとハッピーエンド?」と屈託なく聞くケンジに、ひと呼吸おいて「うん、そうだといいよな、まるっとハッピーエンド!」と答えるシロさん。
離婚はせずに済んだものの、以前と同じ気持ちで日常に戻ることは簡単ではないだろう。それでも依頼者家族が現実を乗り越える未来があるといいな、と思わせてくれる2人の会話。
ケンジの言葉に素直に頷けるようになったシロさんの変化に、信頼関係を築いてきた時間が見えてまたうるり。

ケンジが佳代子さんの家でごちそうになる回。
普段シロさんとしか交流がない佳代子さんが、自分の食の好みを把握していることに疑問を覚えるケンジ。シロさんが佳代子さんと八百屋で食材を半分こするとき、苦手なものでも「あーでもケンジが好きだし俺もレパートリー増えるから」「これケンジが絶対好きだから作ります」と言っていると知る。
ケンジが「へ、へー…」と恥ずかしげに言うコマで話は終わる。自分を思って食材を選んでくれる存在がいることの嬉しさと照れくささの描写が絶妙で、またうるり。

最後は、同棲している彼女が結婚願望を示さないことにタブチ君が焦りを覚える回。
嫌いになったわけではなく、手続きや会社の人に知られる煩わしさが理由だと知り、「なんだ!じゃあこのままでいいか。お互い好きなら何でもいいや」とタブチ君がホッとする場面で締めくくられる。
この話もさりげないがとてもいい。「ただ好きだから一緒にいる」という価値観を大事にするタブチ君カップルに、シロさんとケンジの関係が重なる。
他の巻でも、老舗料理屋を継いだ志乃さん夫婦の跡継ぎについて、「子供ができたら幸せだけど、二人のままでも幸せで、どっちでもいい」と志乃さんが言い夕食を一緒に作る回がある。周囲に焦らされて妊活準備を始めていた旦那さんがはたと「そうだな、俺もだなあ…」と気づくシーンにじんとさせられた。この時志乃さんが、妊活のため過剰に油ものや肉を控える旦那さんに「揚げ焼きのサバの竜田揚げ」を出すくだりもすごく、いい。「油使ってるけど揚げ焼きだし魚だし、これくらいのバランスで行こうよ!」とふたりのペースを提案する志乃さんの配慮が、いい。

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ほんとに、素敵な漫画に出会ったと思う。どんなカップルも、色々あってもやっぱり好きだから一緒にいる。いたわる気持ちが、暮らしにあらわれる。一緒に食べる献立を通して、伝わる。
うん、私が送りたいのはまさにそんな人生なんですと、周りの目を気にしてしまいがちなアラサー女は思いました。

ドラマ版では、シロさんがケンジに「油も控えめにしてさ、腹八分目でさ、長生きしよう」と言うオリジナルの台詞が入るのも泣けてしまう。体は一朝一夕でできるわけではなく、昨日までに食べたものでできている。「この人のために長生きしよう」と思う気持ちが、今日の食事につながっていく。

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ここまで一気に書いてたら、朝の5時になっていた。ゆうべは楽しくお酒を飲んで、酔ったまま漫画を読んで感動して、感想を書き上げて、今だ。
おなかがすいたのでコンビニで夜食?朝食?のカツ丼を買った。さっき食の尊さに感動したばかりなのに、不摂生の極みすぎて笑った。「漫画と真逆のことしてるわぁ」と思いながら、少しだけ明日の自分の体のために、しじみ汁も買いました。

さて、たっぷり寝て起きて、明日はなにを作ろうかな。

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