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怖いテレビって、もうやらないんだろうか。


蒸し暑くなってきたので、昭和生まれとしてはテレビで怖い番組をやって欲しいところだが、「怖い映像集」じゃなく「怖いテレビ番組」って、今どきそんなことは無理なんだろうか。

最近はほとんど見ることができていないが「本当にあった怖い話」とか「世にも不思議~」とか、そういうオムニバスドラマがたまにやっているらしいことは知っているけど、もっといかにもテレビ番組的な、いかがわしくも真剣なヤツの令和版が見てみたい。

「あなたの知らない世界」なんていう、情報バラエティ番組の怪奇版が、いつの頃までだったか、夏休みの時期になるとお昼時にやっていた。
新倉イワオさんという人品卑しからぬ初老の男性が、怖い再現VTR後に心霊的解釈の解説をしてくれたりして、怖いながらも知的な静謐感が感じられる番組で、私は毎シーズン楽しみにしていた。

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昭和も40~50年代は、実写版の子供向けドラマ・アニメに、怖いお話が目白押しだった。大人向けは大人向けで、これでもかこれでもかと、怖いドラマが累々と積み上がっていた。

水木しげる先生原作の「悪魔くん」「河童の三平」は実写タイプでまだ白黒フィルムで、とても怖かった。特に「河童の三平」は原作漫画とは大違いで、ストーリーは悲しく映像は怖く、逃げ場がなかった。

円谷プロの「怪奇大作戦」は、科学の力で怪奇を解き明かすのだが、謎が解き明かされたところで、怖さはそのまま残るのだから困ったものだった。意思を持ったフランス人形だとか、軟体魔術師だとか、夜さまよう生首だとか、しばらくうなされること必至なのだが、見ないではいられなかった。

大人になってから、その「怪奇大作戦」の後継に「恐怖劇場アンバランス」という番組があったことを知った。怖すぎると視聴者からのクレームが殺到して13話で終わってしまったと何かで読んだ。私は近年全話見て、役者時代の蜷川幸雄の熱演に触れたりもできて堪能した。けれど、これは子供の頃に見たとしても、怖さも面白さも理解できなかったかも知れない。

一方、アニメはアニメで、忍者物のくせに、主人公の膝に急に人面瘡ができてしまったりして、後年までトラウマとなるような描写がどこに仕掛けられているか、まったく油断もスキもないのだった。


テレビと連動するように漫画誌上では、ジョージ秋山や永井豪が忘れ得ぬ恐怖短編を発表し続け、楳図かずおや古賀新一や日野日出志は子供の小さな心臓を恐怖で握り潰そうとし、ギャグから転向してきたつのだじろうはいきなりスマッシュヒットを連発し、息抜きに読んだ少女マンガにもわたなべまさこなど独特の筆致のホラー漫画家がたくさんいて、子どもの世界は右も左も怪奇と恐怖であふれていた。


そして大人向けドラマでも、夏になると、急に怖い回が混じることがあった。通常はホームドラマや刑事ドラマなのに、お盆の頃の一話だけは、急に幽霊に纏わるエピソードになったりするのだ。

例えば、整形手術に失敗して世を儚んだ女性の幽霊が「わたしの顔をかえせ~」と言って関係者を襲いまくる回が、「ザ・ガードマン」みたいなドラマに紛れたりしていた。クーラーなんてどの家にもない頃には、無理やりテレビから涼をとらせようとしていたのかも知れない。


R指定、という規格など影も形もない時代だったので、制作者はある意味、やりたい放題、試したい放題だったのだろう。

それらは今のYoutube的廃墟探訪的試みともテイストを異にするし、ましてやセミドキュメンタリー手法の怖い話ともだいぶ趣が違うのだ。


うがった事を云うようだが、「嫌悪される怖さ」や「忌避される怖さ」ではない「愛おしまれる怖さ」を、テレビはまた、作っていってくれたらいいのになぁ、貞子じゃないけどテレビと恐怖はきっと相性がいいのになぁ、と汗をぬぐいつつ思う次第です。




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