『落研ファイブっ』第二ピリオド(15)「頼む、もう黙れ」
【第一試合前 午前八時三十分】
〔仏父〕『五郎君ファイトだおーっ』
日吉大を拠点に活動するインカレサークル『かしわ台コケッコー』との対戦を前に、仏像の父は早くもトップギアに入っている。
〔ピーマン研〕『頑張るおーっ。えいえいおーっ。でもかしわ台コケッコーも日吉大のサークルだお。ちょっとだけ応援するお』
『日吉大学ピーマン研究会』のOBだけに、日吉大学と聞くとどうしても肩入れしたくなるらしい。
〔仏父〕『それはダメだお。今日は五郎君を応援するんだお』
ハイテンションで飛ばしまくる父とピーマン研究会の姿は完全に悪目立ちだ。
〔井〕「政木の父ちゃんってあんなだったっけ。俺が昔に会った時は、いかにも超エリートリーマン的な、びりっとしたナイスミドルだった気が」
遠くからでも目立つ色物軍団に、仏像とは中学からの付き合いである井上が顔をわずかにしかめた。
〔仏〕「酷暑で脳回路がちょっとショートしたみたいでな。実害は多分ない。あまり視界に入れないでくれ」
〔仏父〕『五郎くーん! かっこいいおおおおおお』
〔仏〕「頼む、もう黙れ……」
仏像は穴があったらこじ開けてでも入りたいと思いながら小さくなっていた。
一方、ピーマン研究会を至近距離で見る三元母子。
〔三元母〕「政木君のお父さんとそのお友達って、かなり変わった人達だね。外資系の偉い人とは聞いていたが……」
〔三〕「どでかい金を動かす人たちだから、あれぐらい頭がねじ切れてなきゃ務まらねえよ。マスクメロンだか何だかって名前のアメリカ人も、あんな感じじゃん」
三元が勝手に納得していると、餌の母が手土産片手にやって来た。
〔餌母〕「うちの息子がいつもごちそうになってばかりで。本当にありがとうございます」
〔三元母〕「まあこんなに気を使わなくても良いのに。うちの母は、たろちゃんたろちゃん孫が増えたって大喜びですよ。時次が卒業しても顔を出してくださいな。ええ、母は後で主人と一緒に参ります」
〔餌母〕「まあこの暑い中を。曇ったままならば少しは安心ですが」
餌の母は薄いサングラスを掛けなおすと、メンバー内でもひときわ小さい息子に目を向けた。
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
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