【読書感想】2023年に読んで面白かった本3選【おすすめ】
【はじめに】
SF小説が好きです。
※あらすじは出版社公式サイトやネットショップでの紹介文を参考にしています。
※画像はAmazon商品ページから引用しています。
【おすすめ本①】
火星の人
著:アンディ・ウィアー
訳:小野田和子
出版:早川書房
○作品紹介
予期せぬ事故で不毛の地・火星に取り残された一人の宇宙飛行士。彼は救助船が到着するまで、残る物資、知識と技術を駆使して生き残れるのか?
○感想とおすすめポイント
去年、同著の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が面白くて作者について調べていたら、あの映画『オデッセイ』(2015)の原作を書いた作者だと知って慌てて読んだ。今ではすっかり彼の作品のファンになってしまった。最近も彼が書いた短編が収録されているアンソロジーを読み終えたところだ。
この作品に限らず、彼の作品の主人公は、持ち前のユーモアと天性のポジティブさがあるため、読んだ後に晴れやかな気分になれるから好きだ。怒りや不安も主人公の前ではブラックコメディのように見えてきて、思わず笑ってしまうこともある。この作品では火星にひとりぼっちという劇的状況なのになぜかコミカルだ。
お気に入りのシーンは、主人公が火星で生き延びていることが判明して、地球の偉い人たちが「彼はあの不毛の地でひとり何を思っているのだろう・・・🥺」と罪悪感や懸念を抱いているのと同時刻に、一方その頃火星では、元同乗員が残したビデオを鑑賞しながら「アクアマンがクジラも操れるのはおかしくない?クジラは哺乳類だが?は〜あナンセンス😡」と割と火星生活を満喫しているところ。
○お気に入りフレーズ
・ぼくは痩せても枯れても植物学者だぞ!みなの者、ぼくの植物学パワーを畏れよ!
・きのうも書いたとおり、長くて退屈な旅だ。しかもまだ往路の途中。しかし、なんてったってぼくは宇宙飛行士だ。クソ長い旅のプロである。
・きょうは人生最良の日だ。
【おすすめ本②】
失われたものたちの本
著:ジョン・コナリー
訳:田内志文
出版:東京創元社
○作品紹介
母親を亡くし、本の囁きが聞こえるようになった12歳のデイヴィットは、死んだはずの母の声に導かれて幻の王国に迷い込んでしまう。デイヴィットは元の世界に戻るため『失われたものたちの本』を探す旅に出る。
○感想とお気に入りポイント
今年話題になった宮崎駿監督の映画『君たちはどう生きるか』(2023)のストーリー原案では?との噂を耳にして(SNSで知ったから目にして?)読むに至った。映画タイトルになった吉野源三郎著の『君たちはどう生きるか』も読んだが、たしかにストーリーはこの『失われたものたちの本』をベースにしていると感じた。書店によっては帯やポップに宮崎駿の名が上がっているところも見かけた。
本書のような「架空の物語やキャラクターは我々が現実で触れることにより命を得る」類の設定が好きだ。現実で覚えている人がいなくなった物語は消えてしまう、といった儚い物語たちを描く美しさに心が惹きつけられる。
○お気にいりフレーズ
・すべての大人たちにはかつての少年少女が棲まい、すべての子供たちの中にはいずれ現れる大人たちが眠っている。
・物語はいつでも、読まれたり声に出して話したりして命を吹き込まれたいと願っています。そうやって物語は、彼らの世界からこちらの世界へとやってくるのです。
・地上で送る人生は一瞬にすぎず、だから、人間は誰でも自分の天国を夢に描くのです。
【おすすめ本③】
よい戦争
著:スタッズ・ターケル
訳:中山容
出版:晶文社
○作品紹介
スタッズ・ターケルによる第二次世界大戦をめぐるオーラルヒストリー
○感想とおすすめポイント
架空のオーラルヒストリーであるマックス・ブルックス著『WORLD WAR Z』の後書きで、ブルックスがオーラルヒストリーの形態で書くにあたり参考やきっかけにしたのが今作『よい戦争』であった。
実話を題材にしたドラマ『ザ・パシフィック』(2010)や、映画『ハクソー・リッジ』(2016)で描かれていた描写が口述で記されていて衝撃をうけるとともに、素晴らしい本に出会ったことを実感させられた。
ある元米兵の話で、日本兵の死体から金歯を盗ったり、死体の頭蓋骨に石を投げ入れたり、手記を残して聖書に挟んでいたり。私はこの話を知っている。ドラマ『ザ・パシフィック』でみた話そのままだから。
「ときには予想外の人がやったんだ。名誉勲章をもらったのは、わたしの知るかぎり、医務隊にいた良心的兵役拒否者のひとりだけだ。そいつは、放火をくぐって丘をかけのぼり、どれだけ多くの人を救出したか知れない」私はこの話を知っている。映画『ハクソー・リッジ』でみた話そのままだから。
○心惹かれたフレーズ
・どの戦争もおなじだ。戦争になったら、どちらの方もある「主義」にもとづいて互いを殺し合う。“汝殺すなかれ”という主義はつい無視されてしまうんだ。
・おれは学校でて、すぐ軍隊にはいった。あんまり考えないんだよ。学校にいるときは、これをしろ、あれを読めといわれる。軍隊にはいれば、きょうはここ、あしたはあそこだ。いわれるように任務をはたすだけ。軍隊をでて、自分で暮らすようになると、ちがう性格になる。人生についてちがう見方をするようになる。自分で考えなけりゃならなくなってから大人になるんだ。
【おわりに】
今年読んだ本は12/24時点で36冊でした。
『三体』から入って短編集も中編も新作も心待ちにしていた劉慈欣、ピンチになっても持ち前のユーモアと前向きさで奮闘する主人公たちが魅力的なアンディ・ウィアー、架空の怪物に身震いするほどのリアリティをもたせるエンタメホラーのマックス・ブルックス。今年になって自分の好きな作家たちが確立してきた一年だった。
自分が本を手に取るときは、同じ作者であること以外に、前に読んでいた物語の作中に出てきたとか、後書きで参考として触れられていたとか、ベースになった物語があるとか、あれこれ芋づる式に読むことが多い。作品や媒体を跨いで伏線やオマージュに気づいた時の高揚感は、何にも代え難いものだと思う。その瞬間により多く出会うために、私は本を読んでいる。
【おまけ】
○投稿主のブクログアカウント
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