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一足先に咲く光琳のカキツバタを愛でに行ったはなし。

 展覧会のことを知ったのは昨日の夜です。Xのフォロワーさんのつぶやきからでした。

 調べたら「特別展 国宝 燕子花カキツバタ図屏風 デザインの日本美術」は4/13から開始。会期は庭園のカキツバタが咲く季節のあいだ四週間のみです。なお日時予約制。

 春の予定が落ち着き、そろそろ展覧会に行こうと思っていましたので、12:00以降の枠がまだ残っていたのをこれ幸いと夕食の八宝菜を食べながらウェブ予約しました。


庭園

 根津美術館には11:45頃到着。もう入場できたので、先に庭園へホンモノのカキツバタを探しに行くことにしました。

 昼からの枠だから、展示を見てからだと力尽きると思ったんですよね……。

 新緑の美しい庭園を池に向かって降りていきますと、

咲いてない

 カキツバタはまったく咲いていませんでした。

 そりゃ桜の開花が遅れたんだから他の花だって遅れますよね……。

披錦斎

 気を取り直して庭園内の茶室「披錦斎」で薄茶を頂くことにしました。

床の間

 きちんと茶道を習ったことは一度もありませんが、高校時代は(お茶菓子目当てで)文化祭のたびに何度も茶道部に押しかけていたので、薄茶の味じたいは早い段階で好きになりました。

お抹茶席の案内

 薄茶とお茶菓子の案内板じたい英語表記されていたのでインバウンド向けなんですかね? 薄茶やお菓子を出してくださったの日本語堪能な外国人の方でしたし。

 外国人観光客カップルに英語で「お茶菓子は先に食べるもの」と説明してました。

お茶菓子の練り切り

 お茶菓子の練り切りは白地に緑と紫の同心円模様が入っていて、抽象的にカキツバタを表しているのではと思いました(ひっきりなしに客が入れ替わるので特に説明は無かった)。

茶碗は黒一色の天目タイプだった

 お茶碗は黒一色だけど一応ちゃんと回しました。


展示構成

 根津美術館は展示室が6つあり、特別展は展示室1・2で開催されます。残りの展示室はテーマ展示です。

  • 展示室3:仏教美術の魅力 ― 日本の小金銅仏と仏具 ―

  • 展示室4:古代中国の青銅器

  • 展示室5:地球の裏側からこんにちは! ― 根津美術館のアンデス染織 ―

  • 展示室6:初風炉の茶


特別展

特別展入り口
今回は展示品の撮影一切禁止

燕子花図屏風

 金箔の背景に群青と緑青だけで描かれたカキツバタ。尾形光琳の燕子花図屏風は見事に満開です。

 花の配置は左側が左上から右下へ流れ、右側はほぼ水平です。もし花の配置が左右で揃っていたら、と考えたとき、「ああ、デザインだなぁ」と感じました。

 簡単な図ですが、私が考え得る燕子花図屏風の構図パターンを出してみました。

燕子花図屏風の構図パターン

 こうして見ると殆どの案がしっくり来ない。実際の屏風の構図を左右反転した③だけはアリな気もしますが、こちらを選ばなかった理由もちゃんと光琳のなかにあるはずです。

 使われている画材が金箔込みで3種とシンプルだからこそ(よく見たらカキツバタの花は濃淡つけられてるのですが)、光琳が考え抜いた構図が見るこちらを圧倒するのだと思います。

 光琳は伊勢物語が好きなそうで(業平がバーン!って感じで蓋に描かれた硯箱とかある)、燕子花図屏風も伊勢物語の「八橋」を表していると思われますが、業平の姿はおろか橋すらありません。

 それでもタイトルが「八橋図屏風」だと言われたら私は不思議に思わないでしょう。

柿本人麻呂像

 メインの燕子花図屏風以外に気になった作品も紹介します。まずは「柿本人麻呂像」。座った姿がまさに人麻呂と感じるあたり、人麻呂の肖像もデザインとして刷り込まれてるなぁと思いました。

 絵の上には「色紙形」という和歌を書き込むためのデザインスペースが並んでいます。屏風や襖に貼る和歌を書いた紙から来ているとのこと。

吉野龍田図屏風

 右が「吉野」で桜、左が「龍田」で紅葉が描かれています。この屏風にも和歌が潜んでいますが、色紙形ではなく枝に絡まった短冊に書かれています。従来の色紙形では絵が台無しになるから工夫したのかな、と考えると面白い。

桜芥子図襖

 4面からなる襖の上部全体に一本の桜から伸ばされたのであろう枝が渡っていて花が咲き誇っています。そして下部には芥子のカタマリが間隔を取って並んでいる。この構図に「繰り返しのリズム」を感じました。

色絵山寺図茶壺

 日本人だいすき野々村仁清の茶壺。わりと小ぶりでシュッとしたシルエットなのですが、壺の下部に施された金彩が光って、夕日に照らされ光る雲を感じます。


テーマ展示

展示室4

 展示室3・4は正直前に来たときと何が違っているのかよくわかりませんでした。仏教美術は展示室3よりホールのほうが石仏で充実しているのでそう感じるのかも。

 展示室4は古代中国好きならとてもオススメ。青銅器、とくにトウテツ文について詳しくなれます。

 今回改めて気になったのが銅鏡。そう聞いてイメージする緑色の錆が殆ど無くて、突起状の飾りのきらめきは一瞬水晶かと思いました。真鍮を磨いた参考資料もあって、わりとちゃんと姿が映るのが確認できます。

展示室5

 まさかのアンデス古代文明。アンデスって織りで模様を表現しているイメージがあったのですが、パラカス文化からの出品は全て刺繍でした。

 刺繍だけ残ってるからアップリケみたい。

 ネコinネコな刺繍があって、腹の中にネコがいるのはそのネコが神性を持つ証とかなんとか――混乱してきた。

展示室6

 こちらでは季節の茶道具を展示しています。特に気に入ったのは、安南花唐草文茶碗(銘 童子)。安南は今のベトナムですね。端午の節句にちなんでの展示とのこと。

 この茶碗は小ぶりなのに高台に高さがあって足つきの日本酒の杯に印象が似てます。くすんだ青色の絵付もあって、他の道具より涼しげに感じました。


ミュージアムショップ

 特別展の図録はありません。

 大事なことなのでもう一度言いますが、特別展の図録はありません。

 収蔵品の図録や関連書籍は多いのですが……。

 燕子花図屏風のような美術館を代表する作品はグッズもありますが、あとは絵葉書ぐらいです。燕子花図屏風と吉野龍田図屏風、色絵山寺図茶壺の絵葉書を買いました。

今回買ったもの

 あと、アンデス関連の図録を見つけられたら多分買ってました。


おわりに

 咲いているカキツバタはお目にかかれませんでしたが、光琳のカキツバタの前で何度も音声ガイド聞き直したり「どうしてこの構図なのか?」と考えたりして非常に楽しい時間を過ごせました。

 恐らく来月なら庭園のカキツバタも見れるでしょうが、先述の通り日時予約制かつ会期が短いのでご注意ください。

 庭園込み1500円の入場料は破格だと思うのでオススメです。


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