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常に自分の体験から出発して正直に考えてゆけ / 吉野源三郎『君たちはどう生きるか』


先日、ジブリ映画『君たちはどう生きるか』を観た。
抽象的すぎて正直よく分からなかったけど…笑


そして今、吉野源三郎の小説『君たちはどう生きるか』を読んでいる。(漫画版は読んだことがある)


主人公はコペル君というあだ名の中学生の少年だが、世の中や人間の生き方について真剣に考え始めた彼に向けて叔父さんがノートに綴った言葉が、そのまま読者へのメッセージになっている。


いじめっ子に対し、「卑怯だぞ!弱い者いじめはよせ!」と声を上げて止めようとした"ガッチン"こと北見君と、

いじめられた本人であるにもかかわらず「もう、ゆるしてやってくれよ」と、いじめっ子に殴りかかるガッチンを止めてかばった浦川君。

それを見て、2人へ尊敬の念を抱いたコペル君。

そして、コペル君からこの事件のことを聞いた叔父さんが彼に対して書いた言葉が良いなと思ったのでここに記録しておく。

これは、むずかしい言葉でいいかえると、常に自分の体験から出発して正直に考えてゆけ、ということなんだが、このことは、コペル君!本当に大切なことなんだよ。ここにゴマ化しがあったら、どんなに偉そうなことを考えたり、言ったりしても、みんな嘘になってしまうんだ。

吉野源三郎(2017)『君たちはどう生きるか』マガジンハウス、p.61
(初版1937年,新潮社)


叔父さんのノートメモ全体はかなり長いが、ほんの一部分の言葉だけを切り取ってもあまり意味がない気がしたので、私なりの要約をしてみた。(そのまま引用した表現もあるし意訳した部分もある)

真実の経験について

君には立派な人間になってもらいたいと願っている。

<だから>
君が、卑劣なことや下等なことやひねくれたことを憎んで、男らしい真っ直ぐな精神を尊敬しているのを見て安心した。

そろそろ君も世の中や人間の一生について真剣に考える年になった。僕もそういう事柄について、もう冗談半分ではなくまじめに君に話したい。
<なぜなら>
立派な考えを持たずに立派な人間になることはできないからだ。

<しかし>
「世の中とはこういうものだ」と簡単に言えるものではない。何事も自分自身で経験してようやく理解できる。
<もちろん>
昔の立派な人たちが書物にたくさんの知恵を残してくれている。
<だから>
書物をたくさん読んで、立派な人たちの思想を学ぶ必要がある。

<しかし>
やっぱり最後の鍵になるのは君自身なのだ。立派な人たちの書物を読むだけで真実を理解できるというわけにはいかない。
<つまり>
自分で経験して感じた色々な思いをもとにして初めて、偉い人たちの言葉の真実を理解できるのだ。

<だから>
一番大事なのは、いつでも自分が本当に感じたことや、本当に心を動かされたことから出発して、その意味を考えていくこと。感じたことや心の底から思ったことを、少しもごまかしてはいけない
<そうすると>
たった1回の経験の中に、その時だけにとどまらない意味のあることが分かってくる。
<それこそが>
本当の君の思想というものだ。
<つまり>
常に自分の体験から出発して正直に考えてゆけ。どんなに偉そうなことを言っても、ここにごまかしがあったら嘘になる。


立派な人とは、勉強ができるとか行儀がいいとか、世間から見て非の打ちどころのない人のことではない。
<もちろん>
成績だって行儀だって良いに越したことはない。
<けれど>
大事なのはそれだけじゃない。
その前にもっともっと大事なことがある。
<もしも>
君が、家や学校で教えられた通りに生きてゆこうとするならば、君はいつまでたっても一人前の人間にはなれない。子供のうちはそれでもいい。
<しかし>
君の年になると、もうそれだけではダメなんだ。

<大事なのは>
世間や他人の目よりも、君自身がまず、人間の立派さがどこにあるのか、それを本当に君の魂で知ることだ。
<そうして>
心の底から、立派な人間になりたいという気持ちを起こすこと。何かを一つ一つ判断するとき、行動するときには、心から湧き出てくるイキイキとした感情に貫かれていなければならない。
<言い換えれば>
心の張りを持たなければならない。

<そうじゃないと>
ただの「立派に見える人」になるばかりで、ほんとうに「立派な人」にはなれない。
<世間には>
自分が他人の目にどう映るかばかりを気にして、本当の自分がどんなものかということを忘れている人がたくさんいる。
<でも>
君にはそんな人になってもらいたくない。
<だから>
君自身が心から感じたことや、しみじみと心を動かされたことを大事にすること。それを忘れないようにし、その意味をよく考えるように。
<簡単に言えば>
色んな経験を積みながら、いつでも自分の本心の声を聞こうと努めなさい、ということだ。

<最後に>
先日の事件について、何が君をあんなに感動させたのか、北見君や浦川君の姿を見て、どうして心を動かされたのか、自分の本心の声を聞いてじっくり考えてみるといい。

p.56-65を要約アレンジ


自分の本心の声を聞く。
自分自身の経験、気持ちから出発すること。
嘘をつかずにごまかさずに、正直に考えること。

そういうことが大事なのはとっくに分かってるのに、いざやろうと思うとなかなか難しい。

「正直にって言われても、そもそも何が自分の本当の気持ちなのか分からないんだけどな。頭に浮かんだ言葉すら、誰かの言葉の受け売りな気もしてくるし、ただ模範解答を言っているだけのような気がする」って。

だから、「どう生きるか」について本気で考える以前に、まずは目の前の小さな出来事について「どう考えるか」「どう感じたか」について丁寧に向き合うクセをつけなければいけない。

もちろんそんなことは、この本に出会う前から誰に言われなくとも分かっていた。だけど、慌ただしい毎日の中でつい後回しにしがちで、本気で意識して考えることができていなかった。

「分かっている」と「できている」は全く違うのに。

だから私は、昨年11月から思いつきで始めたこのnoteで、自分の感情や思考を言語化して丁寧に見つめ直す練習をすることにした。

練習しているつもりなのだが、少しでも成長しているのかはいまいちよく分からない。


それにやっぱり、他人には見せたくない、ここには書けないこともたくさんあるので、そういうことは家でひっそりと紙に書くなりしてひとりでじっくり向き合うのだけれど、個人情報が具体的すぎて書けないこと以外はここに正直に記して、自分の本心とちゃんと向き合っていきたい。

まだまだカッコつけている部分もあるし、もっと他人の目を気にせずに自由に書けるようになりたい。


とりあえず、今まで自由に40記事ほど書いてみて、自分について分かってきたのはこんな感じだ。

・勇気がある人になりたい、勇気を特に大事にしたい
・感情的すぎず、でも冷たすぎず、淡々と優しいの良いバランスが理想
・明るくてさっぱりした人が好きだし、そうなりたい
・ネチネチして言い訳や文句が多い人は嫌いだし、そうなりたくない
・単に暗いとかネガティブな人は結構好き(面白いし共感できるから。でもなりたいとは違う)
・本や映画の全体の感想文はやっぱり難しいし苦手(けど書きたいときは書く)
・全体ではなく印象的な言葉だけを深堀りするほうが楽しいしテーマが絞られて考えやすい


どう生きたいかはまだ全然分からないけれど、noteを書く中でだんだん見えてきた自分のスタンスやこだわりはこんな感じ。

「常に自分の体験から出発して正直に考えてゆけ」

この言葉は、これからも忘れずに大事にしたい。

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