Molder

電子音楽(Modular Synthesizer)演奏家:Molderの日記

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電子音楽(Modular Synthesizer)演奏家:Molderの日記

最近の記事

徳島-海陽町③

ピーッという鳴き声は、はじめは猿だろうかと思ったが鹿のようだった。テントの蚊帳を通しても星が綺麗に見えた。完全に目が覚めてしまった。まだ0時過ぎだったが、既に5時間くらいは寝ていたらしい。 テントから這い出し、海に向かった。黒い波の音が轟いており、これ以上は近づけないなと思って引き返した。魚のことを一瞬思った。死んだのだろう。黒い海を漂うサーフボード。 キャンプ場でタバコを何本か吸った。空を見ると眼が勝手に星たちの細い光線をたくさんすくい集めてくれた。大漁じゃ。 朝は父親が

    • 徳島-海陽町②

      徳島に来ていたんだった。慣れない場所でもよく眠れたものだ。 窓の外は明るかった。今日も暑くなるだろうが、どうせ海に入るのならそれでいいのかもしれないと思った。コンビニのたまごサンドと梅おにぎり、カップの海苔味噌汁を食べた。甘いコーヒー粉末がコップの底でペーストになった。コップを回し、コーヒーを溢さない絶妙な遠心力で溶かしながら飲んだ。 マツダの白い車のオーディオからはschntzlというベルギー人のキーボード/ピアノとドラムのデュオの楽曲がなった。今年の2月にライブイベント

      • 徳島-海陽町①

        神戸三宮で車を借りた。お盆の連休が始まり、レンタカー店の受付にはなんだかぱっとせえへん感じの人たちが集っていた。みんなして不自由そうにただ待つのみ。ぼくはズボンのポケットから文庫本を取り出し、ひとり落ち着きを纏うことにした。 車庫からマツダの白いコンパクトな車体が運ばれてきた。客が多く忙しいからなのか、傷のチェックについては一言もなかった。質問しようと思ったがぼくが口を開く前に、いってらっしゃいませ!と元気よく送り出されてしまった。 店を出てすぐに車を路肩に寄せ、もたつきな

        • オリンピック

          もう20年近く自宅にテレビは置いていない。そんなぼくも今回は他所でオリンピックをテレビ観戦する機会に恵まれた。サッカー、柔道、フェンシング、ゴルフ。観た試合では日本人が負けてしまった。 ぼくが観たから負けたんじゃないか。観るんじゃなかった。 無意識に自国に肩入れしていた自分に後になって気づく。そんな自分にちょっと嫌気がさしてしまう。なんて言いつつも、やっぱり歓喜し涙する人たちを観ていると、いつの間にか心を掴まれてしまっている。 いや、ぼくには関係ない。誰かと競いあって勝

        徳島-海陽町③

          敦賀

          電車一本で敦賀へ行けると知ったのは何年前だったかな。JR新快速「敦賀行」が1時間に一本出ていて、それは今も変わってはいないようだ。 敦賀行に乗るのは、利便性とお財布へのやさしさを考えれば当然の選択(特急券という選択肢もある)かもしれないが、湖西線経由であることも決め手だったりする。 湖北の山には思い入れがある。湖西線(琵琶湖の西から北へとまわる)に乗れば、ぼくにとって特別なその山々を眺めることができる。 でもその話は別の機会にしよう。今回は敦賀の話だし、残念なことに今回は電

          絵を描く

          神戸Space Eauuuの「尾柳佳枝とみんなで絵を描く日」へとやって来た。 夕飯がお腹を膨らませてしまい、今回は身体が動かなかった。ソファに沈みながら、皆んなが描き終えて壁に貼りつけてある絵を眺めていた。 絵にその人らしさがどうしてもでちゃうのはいつも面白いなと感じる。しかしごちゃ混ぜであってもそれぞれの絵は、なんだか1人の人間ようにも見える。 ぼくも家の壁にキャンバスをテープで貼り付けて、たまに油絵具を載せたりしていたのだが、半年程前にストップしてしまった。描いてある絵に

          絵を描く

          途端

          誘われるがままに即興のバンドに参加している。バンドの名は「途端」という。ギター、ドラム、モジュラーシンセサイザーのトリオ編成。神戸のBigAppleにて年に3、4回ほど出演させていただいているが、今日で何回目だったかな。 他にもモジュラーシンセサイザー・デュオ「Monday Night Lab」のセッションを神戸のspace eauuuで年10回。不定期でボイス、ドラムとのトリオなど、近年はセッションで演奏させていただく機会も多い。 正直に言ってセッションは得意でない。そもそ

          システム

          一見複雑そうに見えるモジュラーシンセサイザーのことだけれど、実際はとてもシンプル。他人のシステムのことは知らないし見てもよく分からないので、まあ矛盾したことは言ってるのかもしれない。 ルーティングを発想しては組み替え続けたけれども、基礎的なルーティングをベースにしてそこにモジュレーションの工夫をさりげなく差し込んでいくと、柔軟に操作できていいんだなこれが。cv input端子にどんな山を(波を)流し込むか。 こんな話をしていたら、あたまの中でまたルーティングを描き始める。よく

          システム

          終わり

          ぼくは41歳になった。 生きている間にやりたいこと、全部はできないのだろう。20歳くらいの頃、そんな風に考えていた気がする。さらに20年弱を経て、ついに諦められそうだなと思った(諦めてなかったのかよ)。 気のせいかな。どんな理由があるにせよ、諦めがついたと思えた今をとても自由だと感じている。というわけで、死ぬ前に言い残したいひと言があるとすれば「あきらめろ」だ。これで決まり。 終わりにしたぼくは日記を書き始めた。20年後には諦めがついているはずだ。