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オリンピック

もう20年近く自宅にテレビは置いていない。そんなぼくも今回は他所でオリンピックをテレビ観戦する機会に恵まれた。サッカー、柔道、フェンシング、ゴルフ。観た試合では日本人が負けてしまった。

ぼくが観たから負けたんじゃないか。観るんじゃなかった。

無意識に自国に肩入れしていた自分に後になって気づく。そんな自分にちょっと嫌気がさしてしまう。なんて言いつつも、やっぱり歓喜し涙する人たちを観ていると、いつの間にか心を掴まれてしまっている。

いや、ぼくには関係ない。誰かと競いあって勝利しようなんて、まったく何を考えているのでしょうか。素質もない。向上心もない。ひとつのことを継続できない。そもそもルールを知らない。応援したくないし、されたくもない。ぼくには縁のないことです!

こうしてオリンピックには縁がなかった者としてのオリンピックが幕を開ける。

このオリンピックの頂点を目指すのなら、まっとうにスポーツ競技に取り組むなんてあわれなまねはよしてくれ。常識にとらわれない者だけが出場できるもう一つのオリンピックがあるのだ。

オリンピックに出場する。オリンピックを目指す、夢見る。オリンピックに熱狂する、期待している。残念だが、そのような心構えでは予選敗退は確実だろう。
なぜって?このオリンピックはですねぇ、「脳」は身体の一部であるとしてオリンピックの概念が拡張された先にある「脳」という身体の一部を極限まで鍛え上げることによってスポーツ競技の概念を拡張できる者だけが出場できるもうひとつのオリンピックを創造(妄想)するというオリンピックであるからなのでちゅ!

ちなみに、今年のパリオリンピック日本サテライトバーチャルみんなの国際競技場へはぼくだけが出場し、金メダルは確実と言われている。

1回戦は、妄想サッカー→妄想柔道→妄想フェンシング→妄想ゴルフの妄想トライアスロンだ。

「さあ、オリンピック初戦のキックオフ。蹴り出したボールに11人の選手たち(全員ぼく)が群がっていく。おっと、これは!?選手たちが円陣を組んでその中で高速ランダムパチンコパス回しだ(頭上カメラアングルより)。これは誰も思いつかなかったぁー。相手選手(アシカ顔)はこの攻撃を崩すことができるのか?いやボールに触ることすらできませんー。このまま入るか、入るのか、入ったぁー、ゴーーーール!続いて柔道です。おっと、開始早々に飛びかかっていく、ああっと股をすり抜けて背後をとったぁ、イッポーン!実に鮮やかだぁー。(アシカ顔の)相手選手の振り返る力を利用してぶん投げました。はやかったですね、一瞬で背後に回りました。はい。フェンシングです。なんと試合開始とほぼ同時に刺さってます。剣と一体になって一本の針のようになりましたから。相手選手(やはりアシカ顔)は攻撃しようにも攻撃に有効な面積がありません、面積がぁ。これは刺さるっきゃないですね。で何だっけ。ゴルフですよね。ああもう、これも全部入るわそりゃ。だって本人がボールだもの。打ったあと素早くボールの方に意識をすり替えてますから。入るまで転がってりゃ一発ですよ。くるくるくるくるぽーん!早くも予選通過です。」

いよいよ決勝戦。新競技の新競技だ。新競技の新競技は新競技を創造し、早さ(2点)、創造性(9点)、技巧性(4点)を減点方式で採点する(15点満点)。

「すでに金メダルが確定しています、世界が注目する新競技です。歴史的創造の瞬間を前に会場は静かな熱気に包まれています。さあ、新しい世界を見せてくれるのか。
おっと、手を横に広げたが、これはっ。なんと、幻でしょうか。波が見えます。これは一体何が起きているのでしょうか。心の眼でビッグウェーブを捉えたかぁ。マインドサーフィンだぁ。類稀なる創造性です。伝統をしっかりと継承した上でこれだけのオリジナリティを一瞬で表現してきました。オリンピックが新たな次元に引き上げられましたぁ。イメージで波を起こして見事に乗りこなしています、何という精神筋力。紛れもなく新競技ですね。いやぁ感動的ですね。ああっと観客は総立ちです。創造主コールが巻き起こっています。後世に語り継がれるであろう、そんな演技を見せてくれました。歴史的瞬間に、おっと出ますか、さあ得点が出ました14.95世界記録更新金メダルだー!」

て、わしゃアホかい!

だからオリンピックは嫌なんだよ。すげぇ楽しかったし。

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