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敦賀

電車一本で敦賀へ行けると知ったのは何年前だったかな。JR新快速「敦賀行」が1時間に一本出ていて、それは今も変わってはいないようだ。

敦賀行に乗るのは、利便性とお財布へのやさしさを考えれば当然の選択(特急券という選択肢もある)かもしれないが、湖西線経由であることも決め手だったりする。
湖北の山には思い入れがある。湖西線(琵琶湖の西から北へとまわる)に乗れば、ぼくにとって特別なその山々を眺めることができる。
でもその話は別の機会にしよう。今回は敦賀の話だし、残念なことに今回は電車遅延の影響でまず「米原行」に乗らざるをえなかった。
結局は湖南-東ルートで敦賀に到着した(こちらはこちらで、鈴鹿の山や伊吹山を思い出と共に眺めることができた)。

敦賀駅前のバス停ベンチで野宿したことがある。終電を逃したくて逃したのだった。
敦賀駅前はその時から清潔な印象だったが、北陸新幹線の金沢-敦賀間が開通したためだろう、駅前には芝生の広場とそれを取り囲む飲食店や書店などの商業施設ができていた。
それにしても、次に終電を逃したときには芝生があるのか。ほう。

前に敦賀を訪れたとき、新幹線の駅は建設途中だったのかな(記憶にはない)。
駅構内は十分に広くて直線的な改札までのアプローチが心地よい空間だった。写真を撮り忘れたが、最新式のICカード入金機が設置されていて、お釣りの札束が縦向きに出てきたのには驚いた。

敦賀の街は控えめに言って美しいと思う。

海もあるし、山もある。でも街は平らで、建物の背丈がちょうどいい。気がつくと視線の先は空へと放たれている。

山にかかる雲に西陽の当たる方向が普段と逆であることに気付いた。ここは鏡の世界だ。

敦賀行きの前週、京都へ音楽の演奏を聴きに行ったのだが、たまたま隣の隣の席に知り合いの人が座っていた。そして、開演中は気付かなかったのだが、ぼくの前の席に座っていた人も知り合いだった(こんなことってあるんやね)。後者は敦賀在住。
敦賀の知り合いに偶然出会ったことで、近いうちに、と敦賀行きを妄想していた。さらに翌週(敦賀行きの前日)、神戸の音楽家が明日敦賀でライブすると言うのだから、この流れにのらない理由はなかったのだ。

敦賀の街を歩いていると、記憶の中に降り立ったような気持ちになる。この日の敦賀はカラッとしていて涼しかった。
それはぼくがよく知っている夏な気がした。子供の頃に蝉とりをしながら木から木へと歩き回った夏みたいだった。

初めて敦賀を訪れたのも知り合いの主催する音楽のイベントが目的だった。そのときは前日から乗り込んで敦賀の岩籠山(いわごもりやま)に登った。
本当は続けて野坂岳にも登るつもりだったが、岩籠山の下山中に飲み水が無くなって仕方なくビバークし、翌朝もう一つの山頂をあきらめて街へと向かった。
イベント会場には早く着き過ぎた。事情を話すと、お店のマスターは「海まで行って涼んでおいでよ。」と自転車を貸してくれた。気比の松原の木陰で昼寝をした。
街も人もゆったりとしていて、美しい。実際どうかは知らんけど、ぼくにとっての敦賀はそんな場所だし、この日だってそうだった。

せっかくなので少し値段は高かったが海鮮丼食べに行った。なんというか、これは美味しさそのものだ。

海に行った。
いし拾った。

popo

いい夏休みだった。

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