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原点

僕は小学1年生の時から不登校でした。
元々、集団行動が不得手であったのと、クラスメイト達の声が
騒音に聞こえた事で辛かったのが要因です。

そして、高機能自閉症スペクトラム(ASD)という発達障害の診断が下り、
母は必死に僕との向き合い方を模索し、僕が興味を持った事には
とことん付き合って、挑戦させてくれました。

ただその代わりに、学校に行かない事の条件として母から提示されたのは、
同級生達よりも先々勉強を進めておく事でした。
それは、いつか僕が学校に戻りたくなった時、
勉強に付いて行けないとまた不登校になってしまうから、という事です。
僕自身、特に勉強が苦手・嫌いではありませんでしたが、
やはり自習では理解に限度があった為、「鬼スパルタ家庭教師(母)」から
手厳しい授業を受けていました。

そんな日々の中で僕が興味を持ったのは宇宙・将棋・小説・漢字……と
様々ですが、それら全ての事を勉強・挑戦させてもらいました。
※因みに漢字は未だに勉強を続けていて、現在は漢字検定1級取得を
 目指しています。

小学5年生の頃には芸術にも興味を持ち、美術館・博物館を
巡っていました。
ある日、フィンセント・ファン・ゴッホの展示を観に行った際、
彼が少なからず影響を受けたとされている、
日本の絵師の作品が展示されていました。
それは「葛飾北斎」「冨嶽三十六景  神奈川沖浪裏」という作品でした。
※恥ずかしながら当時の僕は、西洋画にしか関心が無く、
 日本画や浮世絵等の事を全く知りませんでした。

しかし、この浮世絵に目を向けた刹那、静止画であるはずの大波が、
あたかも魂が宿った生物の如く、動いている様に見えました。
当然、実際には動いていませんがそれ程までに圧倒され、
同時にこの浮世絵に魅了されたのを今でも憶えています。

話は戻り、同時期に僕は小学校の先生に勉強を教えて頂く為に、
一日数時間、別室登校をしていました。
そんな中、美術の授業として、「一版多色摺り」という技法で木版画を
制作する機会がありました。
課題として複数提示された図案は、偶然か必然かは定かではありませんが、
全て浮世絵でした。
そしてその中には数ヶ月前に美術館で衝撃を受けた「神奈川沖浪裏」の
姿がありました。

寸毫の躊躇も無く僕はそれを題材に選び、ひたすら制作に没頭しました。
その頃の僕はカッターナイフすら扱った事も無かった為、
恐る恐る彫刻刀を彫り進めて、作品を完成させました。

当然、本物とは似ても似つかない程、下手な作品でしたが、
約200時間を費やし、一枚を創り上げた時の達成感は凄まじく、
想い出の作品となりました。
又、同時にこれからも木版画を続けて行きたいと思いました。
(これを作品だと言って堂々と見せるにはあまりにも恥ずかしいので、
 どの位の出来栄えかは皆様のご想像にお任せします……)


以上が、僕が木版画に邂逅した「原点」です。
長々と書いてしまいましたが、これでもかなり抜粋したのです……。

又、現在では「一版多色摺り」ではなく、北斎の時代からの伝統技法を
用いて作品を制作していますが、木版画に対して持つ
「好き」「楽しさ」は、当初と何一つとして変わっておらず、
そしてこれからもこの感情が消える事はありません。

母や木版画に出逢わせて頂いた先生を始め、支えて下さる周りの方々への
感謝を忘れず、「木版画  馗(みち)」という名の人生の道のりを
これからも邁進して行きます。

ご拝読頂きまして、有難うございました。

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@yuta_yoshida_michi

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