もこmoko059

稀に文章を書きます。エンジニアの卵として日々勉強しています。数学が専門の大学院生でした。

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夢の台地へ

※この後手直しする予定ですが、一旦公開しています。 §1 良く晴れた7月中旬の十時半、朝と昼の隙間の時間に僕は大学内の並木道をサクサク歩いていた。5冊ほどの数学書と大量のルーズリーフの入った重いリュックを背負って、その重さに慣れ切った体を運びながら、最近学んだ、有限次ガロア拡大$${L/K}$$の中間体の集合$${\mathbb{M}}$$と、そのガロア群$${\mathbb{H} = \text{Gal}(L/M)}$$の部分群の集合との間の関係について、つまるところガ

    • 理系の父

      山間部の集落に引っ越してきた。 私の父は物理が専門の大学の教員だ。 車で通える距離に大学があること。 山間部であるにもかかわらず幼稚園、小学校、中学校が揃っていること。 何より自然の豊かさを父親が気に入った。 自分はまだ4歳で、この引っ越しを楽しみにしていた。 新居を建てる途中で何度も親と見に来ていたから、家が徐々に出来上がる様子を見ていたし、長い時間をかけて出来上がるプレゼントを待っているような感覚だった。 家は両親が建築士の引いた図面に口を出しまくった特注品だ。建築士も

      • 数という概念

        もこと申します。ご無沙汰の方はご無沙汰しております。 私はたまたま7年ほど大学で数学について学び研究する機会があり、修士を出ました。 論文も受理されてなかなか満足しました。 読者から信用を得るパートはこんなもんで、今回は素朴に私が感じている「数字」というアイデア、概念に対する素朴な感想を紹介します。 数を見た事がない話 まずは私の数というアイデアへの感覚を共有するために、素朴なところからお話したいと思います。 皆さんは数を実際に肉眼で見た事があるでしょうか? ち

        • 中庸

          保育園のお昼寝の時間、僕は眠れなかった。 周りの友達はみんな気持ちよさそうに寝ていて、僕は床にゴロンと寝そべり天井を見上げていた。 白くて高い天井には黒いブツブツがついていて、それをぼんやり眺めていると、そのブツブツたちが歪んで動き出す。 あのブツブツはなんだろう。いつからあそこに住んでいるんだろう。 そのブツブツは天井みたいで、でも生きてるみたいだった。 先生たちに話しかけたら友達が起きてしまう。そう思った。 すると静かにしていることが目的になった。 ぼうっと

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        • ささやか数学
          0本
        • きらめき数学
          0本
        • 小説
          6本
        • 考察
          4本
        • 大人なぼくらの集合論
          0本

        記事

          授業はエンターテイメントだ

          授業とはエンターテイメントだ. という言説にすぐ賛同してくれる人はこのあとの文章を読む必要があまりないので,是非ともブラウザバックして,今日は1ユーロ何円なのかでも調べたほうが有意義だと思います. 正確には,授業はエンターテイメントの類だ.と言ったほうが良いかもしれません. ここで授業というのは何か先生なり講演者なりがいて,それを受講する人が居て,先生が何かものを話すという形式のイベントを指しています. 今から書く話は自分が「授業をする側」になる機会が訪れた際に役立て

          授業はエンターテイメントだ

          やったああああああああああ!!!!

          $$ \lim_{h \to 0}\frac{f(x + h) - f(x)}{h} $$ 数式が書けるううおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!! Foooooooooooo!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

          やったああああああああああ!!!!

          コロナの数学科1年生

          はじめまして.現在どこかの大学で数学を専攻している大学院2年生です. ここ2年ほどコロナウイルスが流行っていましたが,私個人としては理論系の大学院生ということもあって社会的にはかなりダメージの少ない人間でした. もちろん幾許か不便はありましたが.そうは言っても一人でも進められることが多かったので,世間的には苦労をしていないほうだと思う,という意味です. 特にコロナの流行り始めた初期段階では学部生の入校が激しく制限されていたのに対して,研究のために通学する必要がある大学院

          コロナの数学科1年生

          VRC上で全29回の数学イベントをしました。

           おはようございます、こんにちは、こんばんわ。VRC上ではもこ059という名前で活動している者です。 タイトルの通りなのですが、2021/2/28から始めて全体で29回、ほぼ毎週日曜日にVRC上で数学の事を私が喋るというイベントをVRChat上で開催し、やり切りました。 https://twitter.com/mokomokoVR/status/1364832510690033664?s=20  開催当初は「数学のイベント」というのがかなり狭い層にしか刺さらないと思って

          VRC上で全29回の数学イベントをしました。

          自我

          風呂上がり、クーラーの効いた六畳一間。 ゲーミングチェアに座ると、今日の疲労が胸筋を肺に腰掛けさせる。 呼吸は浅くゆっくりとしていて、何かを成し遂げる体力などは、もう全く残っていない。 畳まれている布団を敷けば眠ることができる。 部屋の明かりがぼんやりと映っている僕の目は、夜間モードに設定されていないデスクトップPCのディスプレイを少しまぶしく感じている。 エアコンの働く音とPCのファンの音が、椅子の上の重力を1.5倍にする。 僕らの深夜二時間半は、いつの間にかど

          【読むのは】メンタル童貞について【自己責任で】

          〇注意(必読)  初めに、私が以下に書いた文章はとても偉そうである。これは私が普段から偉そうなわけではなく(偉そうなわけではないと信じたい)、私の専門が数学で以下のような文体の文章ばかり読んでいるためそれが移った結果である。ほんとすみません。 問題解決は一般的には、問題を正確に定義することから始める。世の中にある男性に関する問題の中であまり言語化されていない問題のうちの一つに、私が「メンタル童貞」と呼んでいる概念がある。今日はこの問題を読者の皆様に理解していただくために、こ

          【読むのは】メンタル童貞について【自己責任で】

          夜明け

          冬の深夜四時、大学周りの学生街は何かを輸送するトラックの走行音とじりじりと鳴る街灯の音、それと虚空からのしんとした緊張感に包まれていて、その中をすき家に向かってのらりくらりと潜り抜けていくことは大学三年生の特権だった。 その特権を行使したいが為に、僕とサークルの友人は全身の強張りに耐えながらこたつに入ってカードゲームをし続けていた。友人の家とすき家の間の距離は徒歩十分程で、その距離を寒さに耐え忍びながら歩くことへの抵抗感が二人の空間を支配していた。 「いやブルブルパンチだるい

          VRC開始1分後まで

          ぴぴぴ。ぴぴぴ。判然としない意識が判然としないまま立ち昇る。腰に負担がかからないように状態を起こす。掛け布団を剥ぎながらのそりと立ち上がって、机の上で鳴っている目覚まし時計をほとんど視認出来ないまま叩いた。少し意識がはっきりする。視界がもやもやとしている。カーテンが開けっ放しで、目覚まし時計が鳴る前から陽の光によって少しずつ覚醒していたらしいことに意識が向く。重心のふわふわしている体が敷布団を畳む。一連の作業がしにくいのは視界が不明瞭な為だと気がついて、机の上に置かれていたメ

          VRC開始1分後まで

          ∃ハチミツ s.t.

             ∃ハチミツ s.t.                           もこmoko059      1  大学の向かい側にある行きつけのカフェ。そこは二階建ての古い木造建築で、二階が店主の住居、一階がカフェになっている。店内はこぢんまりとしていて、入って左右の壁際にソファーと低いテーブルがそれぞれ一組ずつあり、他は奥のカウンター席のみだ。左のソファーがない部分の壁際には本棚があり、文学や哲学関連の書籍がたくさん並んでいる。店の至る所に毛玉がいくらかついたパンダの

          ∃ハチミツ s.t.