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VRC上で全29回の数学イベントをしました。

 おはようございます、こんにちは、こんばんわ。VRC上ではもこ059という名前で活動している者です。

タイトルの通りなのですが、2021/2/28から始めて全体で29回、ほぼ毎週日曜日にVRC上で数学の事を私が喋るというイベントをVRChat上で開催し、やり切りました。

https://twitter.com/mokomokoVR/status/1364832510690033664?s=20

 開催当初は「数学のイベント」というのがかなり狭い層にしか刺さらないと思っていたので、VRCカレンダーに掲載することは1度もありませんでした。

また、音声はVRC、画面はディスコードの画面共有という、形だけなんちゃってVRCイベントだったため、VRCカレンダーに掲載するのは気が引けたというのが結構大きかったです。

そんなこんなで、イベント全体としてどんな事を考えながらやっていたか、何を学んだか、今後どうしていきたいかなどをまとめました。

具体的には線形代数学というジャンルの内容でした。内容に興味のない人も多いと思いますので内容は最後に書くことにします。

また、今後のイベントで話してほしい内容等ある人はTwitterから教えてくれると助かります。

§目次§
〇イベント開催の動機
〇イベント中に考えていたこと
〇イベントを通して学んだこと
〇今後の展望
〇講義の主な内容



〇イベントの開催の動機
 内容としては、大学で学ぶ「線形代数学」の基礎+αを学ぶ内容でした。
開催するに至った動機をお話しします。


①人に教えたり話したりすることが好き!

個人的な話ですが、私はとある大学で数学を専攻している大学院生なのです。その生活の中で数学の話をすることがとても好きでした。

どうにか数学の体系立った話をVRCですることができないか?と考えると、数十時間かける必要がある為、イベントを開くしかないというのは自然な話でしょう。


②線形代数が好き!

これまた個人的な話ですが、一番好きな数学は何ですか?と聞かれれば、線形代数と答えるぐらいには線形代数が好きです。
主な理由は以下の通りです。

・「代数学の基本的なテクニック」が学べる
・「不正確な絵を用いて正確な議論の助けにする」という思想が学べる
・「二つ以上の異なるものを同一視する」という思想を具体例で体感できる
・使われているアイデアが「分かると単純」だが「分かるまでが大変」という物なので解説していてとてもやりがいが感じられる
・様々な数学のジャンルに飛び込んでいく為の下敷きとなる具体例を沢山観察することができる
・大学レベルの数学を学んでいくうえで下敷きとなるジャンルの一つである(個人的に思っている四大基礎数学である、集合論、線形代数学、位相空間論、初等解析学の内の一つ)
・個人的に大学院での研究でめっちゃ大活躍している

つまり大雑把に言えば「個人的な思い入れ」+「教育教材として魅力的」ということです。


③前に開いていたイベントの影響
私はこのイベントを行う前にも別の数学イベントを開催していました。その名も「容赦なし数学シリーズ 集合論」というものです。

そのイベントもVRC上で行ったもので、全八回で「集合論」について、全ては学ばないけど基本的な考え方と記号の使い方を学ぼう!というイベントでした。

そのイベントで集合論の記号を学んでくれた人たちの知識を無駄にするのは勿体ない!という考えがあり、かなり大きなモチベーションとなりました。


④VRChatは線形代数が使えると視野が広がる

VRCという場所で開催すること自体、意義が大きいと思った理由の一つがこれでした。

これは線形代数を知っているとVRCでシェーダーを自分で作りたい!となったときに線形代数を知っているのは重要だ、という話を各所で聞いていたからです。

私は自分でシェーダーを書くことこそありませんが、線形代数が役立つこと自体は感覚的に明らかでしたし、実際VRCを歩いていて明らかに線形代数の知識が使われているな、と感じるものを目撃する機会はとても多いです。


⑤大学の教え方に納得していない

大学で線形代数を学ぶとき、通常春と秋の2セメスターにわたる長期の講義を受けることでその内容を習得していきます。

線形代数を学んだ身として、よくあるカリキュラムの進行内容対して私なりの文句がかなりありました。

なので、自分なりに教育的だと思っている線形代数の講義内容で実際に講義をやり切ってみたい、という願望がとても強くあったため今回のイベントの開催をすることに決めました。


〇イベント中に考えていたこと

線形代数を教える、という事自体は学部生の頃に何度もしたことがありましたが、ここまで長期にわたって体系的に全体を伝えるというのは初めての経験でした。

実際に教えていて不安になることなどは特にありませんでしたが、初めのころは今思うと少し緊張していたように思います。

また、それだけ長期にわたる数学のイベントを行って、開始当初のメンバーがどれだけ生き残るだろうか?という疑問はありました。

実際に終わってみると、初期のメンバーが確か七人ぐらいいたのに対して、最終講義まで四人の方々が聞いてくださいました。

あまりにも長期のイベントだったため、四人もリスナーがいるというのは自分の教え方に対する自信の助けとなりました。

最後まで聞いてくださった四名の方々には改めて感謝いたします。本当にお世話になりました。


〇イベントを通して学んだこと

本当にたくさんの事を学びましたので、その中でも大きかったことをいくつか話します。

まず一つ言えるのは、講義形式の企画において最も大切なのはリスナーであるという事です。

人前に立ってこれだけ長期間にわたる解説をするという体験自体が初めてだったので、頭では分かっているつもりでしたがより一層痛感しました。

毎週自分の話を聞きに来てくれる人がいるという事がどれだけ自分の話の内容の質を向上させ、どれだけ習慣化の助けになるかということです。

また別の発見として、数学の講義イベント用のノートは週あたり三時間程度の時間を確保すれば余裕で作ることができるという事です。

講義ノートの作成というのはもっとコストのかかる仕事だと思い込んでいたため、これはとてもよい収穫でした。

また想定外だったこととして、自分の中の線形代数に対する解像度がいくらか上がったことです。

順序立てて実際に話すことの効力は大学でのゼミなどで分かっているつもりでしたが、これだけよく理解していると思っていた線形代数ですら、これだけ解像度が上がるというのは驚きでした。

特に驚きだったのは、自分が何も見なくても元から人に対して説明できるような事柄でさえも、その学問の本当に足元のところから全てを時間をかけて話すと、自分の中でその輪郭が浮き立ったのです。

〇今後の展望

実は大学院の修士論文にかなりの余裕があるので(というのも研究自体は成果がばっちり出ていて、既に研究の成果をまとめている為)今後も数学の事を話すイベントはやりたいなあ、と思っています。

流石に半年以上にわたるイベントをこなした後だと自信もついていますので、今後はVRCカレンダーに載せていこうかな、と考えております。

その内容は今まで話した線形代数の話をまたしてもOKですし、全然違う内容でもいいかな、とも思っております。

最後に、改めて今まで私の講義イベントを聞きにきてくださった方々、イベント会場になっていたワールドを作成してくれた友人に感謝いたします。本当にありがとうございました!

p.s. せっかくVRCなんだし、最後の講義の後にみんなで写真撮ればよかったな…。(VRCで写真撮る習慣が無かった…。)

〇今までに話した講義の主な内容
「容赦なし数学シリーズ 集合論」
第一回:命題、命題関数、ならば、かつ
第二回:または、否定、背理法
第三回:存在記号、任意記号、数学的帰納法
第四回:包含記号、集合の等号、和集合、共通部分
第五回:集合族、同値関係
第六回:剰余集合、写像、全射、単射、全単射
第七回:写像の合成、逆写像
第八回:濃度

「容赦なし数学シリーズ 線形代数学」
第一回:ガイダンス、三平方の定理と三角関数の定義
第二回:集合論の記号の軽い復習、実ベクトル空間、空間という言葉への注意、基本ベクトル
第三回:零ベクトル、実ベクトル空間の性質、「ベクトル」と「線形」という言葉への注意、一次独立、一次従属
第四回:部分空間、実ベクトル空間の次元、標準基底
第五回:線形写像、線形写像の仕様
第六回:続・線形写像の仕様、線形写像の加法、スカラー倍、合成
第七回:線形写像が基底の行き先で決定される話、行列表示
第八回:核、像、全射性、単射性、同型写像
第九回:次元定理、回転行列
第十回:一般の実ベクトル空間、例の紹介
第十一回:体、一般のベクトル空間、例の紹介
第十二回:一般のベクトル空間上の一次独立、次元
第十三回:一般の線形写像、同型写像、有限次元のベクトル空間の気持ち、像、核、次元定理
第十四回:行列で線形写像を考えるメリット、行列の定義
第十五回:行列の演算と線形写像の関係、正方行列
第十六回:正則行列、逆行列、基本変形
第十七回:行列式のモチベ、気持ち、定義
第十八回:余因子展開、余因子行列
第十九回:転置行列
第二十回:平行移動、対角行列
第二十一回:固有値、固有ベクトル、固有空間、固有多項式
第二十二回:同相な行列の同値性、対角化可能性の基本定理、固有空間の次元
第二十三回:Hamilton-Cayleyの定理
第二十四回:最小多項式とその性質
第二十五回:次元定理の補足と直和分解
第二十六回:対角化可能性と最小多項式の関係性について
第二十七回:固有多項式と最小多項式が等しい時のジョルダン標準形
第二十八回:一般のジョルダン標準形

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