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開始5分で、帰りたくなるデートがある



開始5分で「帰りたい」と思ったアポが2件ある。

アプリでマッチングしており、
ある程度お話もしているわけなので、
そんなことが起こりうる可能性は極めて低い気がするのだが、事件は現場で起きているのである。


【1アポめ】

32歳のメーカー営業との待ち合わせは表参道の出口だった。
私が声を掛けると、彼はものすごく、キョドっていた。
メッセージだとめちゃくちゃ長文で話してくるのにな……と私はキョドる彼に逆に驚いてしまった。


何故彼と会おうと思ったかというと、
失恋ホヤホヤの時にマッチングした相手で、
事の顛末を話した際に、


「こんな事言うのもアレですけど、
その人とは付き合っても上手くいかなかったと思いますよ」


とバッサリ切ってくれたからだった。

そこまでタイプではないけど、この人に失恋話笑い飛ばしても貰いたいなーと思ったのだった。

彼はようやく平静を取り戻して、明治神宮前方面に歩き出した。
3分くらい話しながら歩いたあと、


「あの、どこのお店に向かってるんですか?」


と聞くと、


「あ、明治神宮前あたりなら何かあるかなって思って」


と言った。



その瞬間、終了のゴングが鳴った。


いや、さすがに調べといてよ!
しかも表参道じゃなくて明治神宮前待ち合わせでいいでしょ!
歩くなら靴も考えたいし、歩くって言ってよ!


しようがないので、何が食べたいか聞くと、
イタリアンだと言うので、私がGoogleマップで調べた店に向かうことになった。


その店は、
ちょっとしたコース(前菜、パスタ、デザート、コーヒー)で1300円だったのだが、

彼はそれを見て、


高っっっ


と言ったのだ。
私は2度めの終わりのゴングを聞いた。




いや、お前、二度と、表参道でランチしようなんて思うなよ。




表参道のランチで1000円以上するなんて、当たり前のことだ。
場所と雰囲気もお金が掛かっているのだ。
もしお金を気にするなら、新橋とかで定食で良かった。
なぜ自ら表参道を指定したのか理解できないまま、
私はその店をやめて、別の店に入って、
全く美味しくないカフェの1000円のオムライスを食べた。※ちなみに普通に奥の席に座られた。


そして、話がどうも噛み合わない。

たまに、人の話を枠組でしか捉えられない人がいる。
捉えられないというか、聞いていないんだと思う。

話している時の着目して欲しいキーワードだったり、
主旨や、論点を、理解できない人のようだった。


この感覚、何かに似てるなあ、と思ったら、新卒の男の子と仕事の話してるときの噛み合わなさだった。



仕事の話をしてみると、全然大した話ではない武勇伝が出てくる。
へえ、すごいですね、と笑っておいたが、
私の話になったとき、


「新卒で入った会社ではネット広告代理店で広告を運用したり、提案したりしていて……」


という話をしたら、



「俺も広告いたことあるよ、3ヶ月くらい。
キャバクラの求人広告。まじで大変だよね」


と言われて終わりのゴング3回目を聞いた。



求人広告と、大変さを一緒にしないでくれ。まじで。


そもそもネット広告代理店の仕事が分からない人だったのかもしれないが、営業をかけて枠を売る仕事と一緒にして欲しくないし、たかだか3ヶ月で辞めたやつに、大変さなんて語られたくない。


ランチが終わったあと(二度と会わないだろうから、割り勘にした)、
明治神宮に行きたいというので、まあ帰り道だしいいかと思って付き合ってあげた。


そこで、彼のおみくじは


人の話をよく聞け


と出た。

明治神宮のおみくじ、マジすごい。



帰り道、私は返すの大変だし、あんまり長文でメッセージ送らない方がいいよ、とアドバイスをしておいた。

カッコつけないで、そのままを好きになってもらわないと意味ないと思うんですよね、と彼が言うので、


「付き合う前くらいカッコつけた方がいいですよ。
そのカッコつけた部分だけで人を好きになるほど、女の人は馬鹿じゃないし、ちゃんと見てます。
でも付き合う前に、大切にされない人と、
付き合いたいと、そもそも思わないので……」


訳:

ありのままの自分が好かれると思うなよ、いいから店の予約くらいしとけや。
店の予約しないで、ヒールの女ひたすら歩かせる男に大切にされるイメージなんて1ミリも持てんわ




最後に


「仕事でこうなりたいとかあるんですか?」


と聞いたら、彼は


「楽したいっすね」


と開口1番言った。


4度目の、終わりのゴングだった。


開始5分で、勝敗は決まっていたけど、
完全にもう、辛かった。

ありがとうございました、仕事頑張ってくださいね、とだけ送って非表示。さよなら。彼には年上のお姉様にしっかり育ててもらうことをおすすめする。




【2アポめ】



ランチで会った31歳の男性。
渋谷のイタリアンを予約してくれて、ありがたいなーと思いながら向かった。

埼玉に在住している方だったのだが、私が渋谷か新宿が出やすいです、と言ったら、渋谷まで来てくれたのだ。



10分前に着くと、指定の店の前に、もしかしてこの人かな、とおぼしき人が立っていた。

しかし、この人じゃないといいな、とすら思った。



ん?仕事帰りなの?この人?



50代の男性が着ていそうなベージュのくたびれたジャケットを着ており、ビジネスバッグを持っている。

正面に向き合うと、確かに顔写真通りなのだが……。


まあでも、ファッションセンスなんて、
後からいくらでも変えられるしね!

私はめちゃくちゃポジティブに、店の中へと進んだ。


店員さんに席を案内され、ありがとうございます、と微笑んだあと、目を疑った。


何も言わず、奥の席にどん!っと座ったのである。




帰りてぇ。




心からそう思った。

これから繰り広げられる1時間の無意味な会合に私は1円も払いたくないぞ……

あまりの自然さに、私が、奥の定義をミスっているのか?と思い周りを見渡すと、女の子は全員私と反対側に座っていて、恥ずかしい思いをしてしまった。



彼は話があまり得意では無さそうだった。

定形の質問をし終えて、いくつか共通点を探し出すと、野球とYouTubeが好きだということなので、その話題を振って喋ってみた。

もしかしたらすごく面白い人なのかもしれない、と一発逆転ホームランを夢見て。


YouTuberの話はわりと食いついてきてくれたので、
ひとしきり、てんちむとかねこあやとヒカルの話をした。


私がハマっているチャンネルの紹介をして、太田上田の良さと、アルコアンドピースとハライチのラジオについて話しながら、量が多いだけであまり美味しくないパスタを食べた。


彼はボロネーゼを食べていたのだが、麺を中華麺かのようにすすっていた。


この人、私のためにパスタにしてくれたけど、ラーメン食べたかったのかなあ、とか思いながら、
パスタを食べていると、とある記憶が蘇った。


私は元々家が裕福ではなかったこともあり、テーブルマナーとは?はて?という感じで、大学生になった。

大学一年生の終わり、初めて好きな男性を交えランチに行った時のこと、

私はパスタを箸でしか食べれないことに気づいた。机上にあるのはフォークとスプーンのみ。

これは、まずい。

とりあえずドリアを頼む、ということで事なきを得たのだが、そのあと、私は家で冷凍パスタを、フォークとスプーンで食べる練習を繰り広げたのである。



そんな心温まる?エピソードを思い返しながら、
彼のボロネーゼを見ていたのだが、
(もはやジャージャー麺かな?というかんじだったが)明らかに皿に残ったひき肉とパスタのバランスがおかしい。

麺をそんな風に啜るからだよ、と私はハラハラしながら彼の皿を見ていた。


そして案の定、ひき肉だけが残った。


言わないでおこう、と思ったが、耐えきれず、声に出して言ってしまった。



いや、バランス!
キーマカレーみたいになってますやん!




彼はめちゃくちゃ笑ってくれたので良かったのだが、
こういうところが私のモテないところだと思う。痛切に。



「もぐさんって、すごく頭の回転が速いですよね」


ご飯を食べ終わったあと、彼は水を飲みながらそう言った。


「すごく語彙力があって、返しもうまいし、マーケティングのお仕事でも、すごく活躍されてるの、わかります」


「そうですか?ありがとうございます!
芸人さんのラジオ聴いてるからですかね!」


私は笑いながら、サラッと流そうとした。





「お相手にも、頭の回転というか、話の面白さみたいなのを求めるんですよね」




この流れ、知ってる知ってるー!

褒める流れで、いや俺はあなたみたいな人は無理ですって暗に言われるやつな。

何回か経験してるぜ。


明らかに私の方が話している量が多いのは歴然としているし、これにはどう答えるのが、失礼じゃないのか、と一瞬だけ逡巡したが、正直に答えることにした。



「はい、そうですね。私すごく喋るし、早口なんです。
でも早く喋るとモテないなーって思って、最近ゆっくり喋ってるんですけど。
普段はこの1.5倍速なので、同じ速度で話す必要は無いけど、リスニング能力は必要かもです〜!」


なるべく、明るく、彼の話がつまらないのではなく、私の話すスピードが速いのだよ、ということに少しだけ話をずらした。

そうですよねーと彼が、嫌味なく優しく笑ったので、
私は彼に初めて素を出して相談をしてみた。



「でも、色んな人と会って、思うんです。
面白さと誠実さって、並行しないんじゃないかって。
両立している稀な人は、もう既婚者なんじゃないかなって。

だから、面白い人を誠実にさせるのと、
誠実な人を面白くさせるの、どっちが良いんだろうって。
けど、人を変えようなんて、そもそもおこがましいのかなって、悩んでるんです。」



彼は明確な答えを出してはくれなかったが、


「面白くさせるってむずかしいですよね……。
それこそアルコアンドピースのラジオ聴かせますか……?」


と最後の最後に、ちょっと面白いことを、言ってくれた。



もう絶対最後だしな、と思い、お金を払おうとしたが、彼は受け取らなかった。

絶対いい人だから、すぐ見つかるよ本当に。

ただ、奥の席にだけは座っちゃだめだよ。と心の中で思いながら、私は次のアポへと向かった。





どちらにも、


沢山、いいねもらってますよね、大変じゃないですか?


という言葉を貰った。


訳:

この女こんなに貰ってて、まだアプリやってるってヤバいやつかマルチなんじゃないか?


だと認識しているのだが、
これの正しい答えは何だろう。



「女性のいいね数見れないからよくわからないです〜!
多いですかね〜?」


「いやでもやりとりしてるのは、
結局5人くらいですけどね〜」



と、返しているのだが、

もっと良い返し方があれば、どなたか教えてください。笑




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