青い星まで飛んでいけ(SF短編集)(著:小川一水)【読書紹介ダヨネー】
青春SFが読みたければ、小川一水に外れなし。
小川一水とは、昨今ブレイクしつつ大御所への階段を上りつつあるSF作家さんです。もう大御所ですか?
私の最初の記事であるツインスターがサイクロンでランナウェイするという作品も小川一水先生の作品です。
ただ読書が苦手な人が最初に読むべきは圧倒的に短編。
最近はネット化によりますます良質の短編が重視されている感じがします。
ネット化するとみんな短編しか読まない!
え? そんなことないって?
まあ、それはそうとして、小川一水短編集のひとつを試しに取り上げてみましょう。本作は2009年ごろにまとめられたものですね。
まさにジュブナイル!と呼ぶべきみずみずしい作品が多く、読んでいると夢と希望がいっぱいになりそうです。おかしいな。おいらの青春時代とちがう。ま、まあ、いいや。
短編の収録は以下の通り。
都市彗星のサエ
グラスハートが割れないように
静寂に満ちていく潮
占職術師の希望
守るべき肌
表題作、青い星まで飛んでいけ
「都市彗星のサエ」はものすごい平和な田舎から女の子が外に出ていく話。
「グラスハート」はスピ系アイテムとそれに取りつかれた女の子の話。
「静寂に満ちていく潮」は工学進化した性癖の女性と宇宙昆虫が出会う話。
「占職術師に希望」は他人の天職を透視できる男が適材適所を見つける話。
「守るべき肌」は計算機人類と太陽系の危機、それとある少女の話。
「青い星まで飛んでいけ」は探査機文明の主人公の成長譚。
やはり短編ごとにテーマがあると感じる。
SFだからなのか、全体として青春期で成長期の話が多いが
(中年でも能力に見合った適職で才能を発揮する)
そして短編集としても方向性としてまとまりがある。
各作品が共通するグランドテーマみたいなものが、図らずもかもし出されているような気がするのは私だけか。
ここでの公約数を因数分解してみれば、
成長することによって見えていない地平が見えてくる未来への希望。
そしてどれも恋愛話に関連している系です。
(最後のエクスプロルレスはもっと大きな話になっているが、他者との距離感という意味では同じだ)
苦さよりは甘さにバランスを振った話が多い。
といってただ甘いだけの話ではない。
成長とは、元来は苦い物語だ。
でも冷たい方程式を語るよりは、できないことができるようになる、成長して克服する興奮や期待の方が、この作品群には多い。
SFってもしかしてそんな明るい話ばっかりなのだろうか?
そんなことはないだろう。
覚えている限りでも「百億の昼と千億の夜」みたいな話だってある。
ただ小川一水は、こっちの方が得意だということだ。
ジャンプ小説部門でデビューしただけのことはある。
これはもしかしたら、若い人に読んでもらいたい青春SF。
青春SFが読みたければ、小川一水に外れなし。
今回は途中からデスマス口調が外れてしまいました。
私はこの作家さんがスキですね。
あとこれ「幼年期の終わり」のオーバーロードがゲスト出演してる。
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