博士と狂人(2020年)【映画を観てきたすべての人に映画に関する辞典を書いてもらう映画紹介だっ】
19世紀後半。
イギリス。
とある先生の転落から始まります。
アメリカの元軍医である主人公は、
戦争のトラウマからくる不安が高じて、
殺人事件を犯してしまい、
精神病院で一生を過ごす次第になった人物。
折しも、英語の言い回しをすべて辞書化するという、
野心的なプロジェクトが推進されていましたが、
適切なスタッフが足りません。
牢獄の中で、新聞の募集広告を観た元軍医は、
あらん限りの知識で、それに答えようとします。
めでたく辞典は完成しますが。
彼は、元の牢獄生活に戻るしかありません。
なんとか、ならんのですか?
ここで若き日のウィンストンチャーチルが登場!
だいたい、時代背景が割れましたね。
チャーチルは、不良貴族でして、
名門のくせに成績がオール赤点だったので、
「お前みたいなのは軍隊に行け」と行かされて、
その後はボーア戦争で新聞記者とかをして、
貴族なのに労働党の政治家としてデビュー。
第1次大戦で海軍大臣として活躍しますが、
作戦の失敗から失脚。
後に第二次大戦で首相に返り咲くまで、
在野で「無責任なコメンテーター」枠をしていた人です。
簡単なチャーチル説明でした。
まあでも、そんくらいの時代です。
時代映画は、歴史考証がちゃんとしてれば、
圧倒的な情報量でその時代のデータが手に入ります。
下手に本を読むより、映画を読んだほうが、
当時の背景社会が分かります。
貧困街もピータールーの時代と比べると、
大分スラム感が薄れていますが、
まだまだ長屋生活でして、
(難民キャンプからボロアパートくらいにはなった)
下層階級の生活環境は厳しいことがわかりますね。
まあ、チャーチルの気の利いた裏技によって、
特に法を曲げることなく、穏便に元軍医が救われるのが、
割と後味の良い視聴後感を与えてくれます。
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この映画でのポイントは、
当時の精神病院が監獄みたいな場所だったこと。
いちど堕ちたら、社会復帰できなかったこと。
社会の貧困さや、そこから来る病の多さ。
そして英語辞典という当たり前のものを編纂するだけなのに、
非常識なレベルのインテリジェンスが必要とされ、
実際にやろうとするとさっぱり進まない。
という辞典編纂の意外な難しさ。でした。
編纂担当のマレー教授はあまりの困難さに音を上げそうになります。
が、元軍医のような枠外のインテリの力を借りることで、
どうにか時間内に仕事を終えることができたのです。
金田一先生とかは、どうしてたんでしょうか?
映画の「博士と狂人」というタイトルは、
この2人の身分を超えた友情というか、
知識がまったく違う出自の2人を結びつけるというドラマから採用されています。
共通点があれば、人は互いに理解できるという、
そんなドラマですが、私は歴史枠として視聴しました。
可もなく不可もなし。
といった感じですが、当時の社会勉強にはうってつけの一作です。
まあそんなに珍しい時代でもないんですけどね。
ホームズとかあるし。
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