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マルドゥックヴェロシティ(著:冲方丁)【この読書紹介は昨日に遡る。だがその秘密を知った時に元には戻れない。知らなければ結末を理解することはない。さあ、選ぶがいい】

大ヒットした「マルドックスクランブル」シリーズの2作目。
前作「スクランブル」のラスボスであった、
デムズデイル・ボイルドの若き日の物語。
まだボイルドが闇落ちしてないころの話です。


(シリーズ三作目のアノニマスは買ってはいるけど読んでない状態)

「スクランブル」ではなく、あえてこちら「ヴェロシティ」の方を紹介してみます。
ちなみに「スクランブル」と「ヴェロシティ」は、
お互いに相手のネタバレをあまり気にしなくても大丈夫。
なので、どっちから先に読んでも大過なしです。

まあいくらかはネタバレしてるんですが。
おそらく読めなくなるほどじゃないです。

続編「ヴェロシティ」は、前作「スクランブル」の前日譚なんです。
だから「ヴェロシティ」の中では、基本的には「スクランブル」の話はまず出てこないんですよ。
ただし「スクランブル」から読むと、「ヴェロシティ」では事件の背景についての記載が出てきます。
なので「スクランブル」の裏側でこんなことがあったのね。
だからこうなったのね。
ということが分かります。
それを「ヴェロシティ」から読むと、最初から知っていることになります。
おそらく、それほど影響はないと思われますが。

同じ理由で、たとえばフェイトシリーズだと「フェイトゼロ」が前日譚の話になります。
私は「フェイトゼロ」を観た後に、ヘブンズフィール編とかを観ているのですが、特に違和感はないですね。まあアニメ制作順ですし。

しかしそれにしても。
続編に前日譚を持ってくるというのも、すごい創作技法です。
冲方丁先生の筆力、やはり噂に違わぬ。
(かたやフェイトゼロは虚淵玄先生ですが)

前日譚を続編に持ってくると何がキツイかというと、
そのラストを前作のオープニングにつなげなければならないんですよ。
(当然ですよね)
この縛りプレイよ。
それで前作の感動を上回る上級コンボを叩き出すんですから。

その化け物ぶりがこちらを優先して紹介した次第なのです。
こ、これが、作家の力だというのか!?

「スクランブル」も相当なジェットコースターだったのですが、
「ヴェロシティ」は、最後の方で思いっきり風呂敷を広げています。

ボイルドが闇落ちした大きな理由のひとつ。
事件の背景についての知識を得てしまったから。
はっきりと書いていませんが、真実は時に人を狂わせるものです。
特に自分がその只中に居たのであれば。なおさら。

ただ同じ状況で、主人公によっては闇落ちしなかったりするので、
必ずしもそうなるわけではなし。
やはりボイルドの弱さ、だったのかもしれません。

***

それより前作を上回る前日譚を創るやり方として、
単に風呂敷を広げただけ、というのもすごい技法です。
確かにこれなら、解決できる。

前作のオープニングにつながる、といっても情報量においては、圧倒的に肥大化してますから、そして歴史感覚というか、物語が考古学のように地層になって眠っている感覚は。
読者に満足感を与えてしまいます。まず確実に。

出てこないですよ。掘り起こさない限り。
だって続編なんだから、前作を書いたときにはそんな遺跡はなかったんです。
でも、前作を読み返したときに、過去の遺跡が地下に眠っているのでは、感覚が違ってくる。

***

まあ、終わり方についてはともかく。
簡単な構成を紹介しましょう。
ネタバレなしで。

まず「スクランブル・09(オーナイン)」の結成当時に遡ります。
「スクランブル」の時にはドクターとネズミしか残っていませんでしたが。
若干2名。(スクランブルヒロインのバロットを入れても3名)

それに対して当初のメンバーは、12人くらい?
(ということは軒並み退場していくってことは、予想がつきますよね)

これ、ネタバレじゃないですよ。
制作順に読んでいくと、どうしたって最初から知っているんですから。

全員サイボーグ兵士出身で、
それぞれ科学の力で手に入れた固有超特殊能力を持っています。
ボイルドは重力使いでしたね。

このノリって、大昔のニンジャもの?
甲賀忍法帖とか。バジリスクとか。あれの感じですかね。
山田風太郎様式。

そして敵側にもそういう連中が出てきます。
しかも拷問に特化した部隊という、いかにも敵らしい属性。
こちらは12人くらい。
いずれも異形の格好をしており、やることがエグイので、味方に倒されるときに拍手喝采の気持ちになれます。

まあ、能力者バトルとしては、引き付けられる要素満点です。

そして、後半に近づくにしたがって、だんだんと舞台は暗転していきます。
そうしないと「スクランブル」のOPにつながりませんしね。

****
この辺で止めておきましょう。
この先を知りたい方は、ご自分でネタバレをお探しになるか、
あるいはあきらめて本書を読まれることをお勧めします。
私が読んだのは上下巻のやつですが、新装版は三冊に分かれて、ちと長いですが。

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