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ハプスブルグ帝国1809~1918(著:AJPテイラー)【この読書紹介文は読書と紹介のふたつに分かれ、さらにそれが複雑怪奇に絡み合っており、一言で言えば複雑怪奇】

歴史書。
AJPテイラーという、昔の歴史家の書いた本。
古い。
1950年代に書かれた本なので、
今となっては、かなり反論されているらしい。
しかし、とりあえず材料にはなる。

AJPテイラーと言えば、
第一次大戦の本を読んだことがあるんだけど、
まあ、ざっくりと、
わかりやすいイメージで解説した本だった。

おかげで全体像がよくわかったけど、
実際に細部で何が起きていたのかは、
さっぱりわからなかった。

イメージ優先すぎるきらいがあった。
でも資料のない時代だったから助かった。

今作は、どうであろうか?
わかりやすく、イメージ優先というほどでもない。
(ような気がする)
50年代と言えば、テイラー先生も若かった。

今作は、これまで否定的に描かれがちだった、
旧オーストリア帝国が再評価される契機となった本らしい。

オーストリア帝国。
途中から国号が変わって、
オーストリアハンガリー帝国。
王家はハプスブルグ家。

あまりにも複雑な複合体国家なので、
単純に王家の名前で呼ばれることが多い。
(そうじゃないとピンと来ないのだ)

以前はさらに複雑であり、
ハプスブルグ家は神聖ローマ帝国(ドイツ帝国)の皇帝を、世襲していた王家だった。
ただこの帝位、実は有力諸侯による選挙制なので、
世襲するには半分以上の諸侯を自派だけで占めなくてはいけない。
さらに帝国外にも領土を有しており、
スペイン、オランダ、ベルギーなどもハプスブルグ家の統治領だった。
最初から多国籍な王家である。

ナポレオン戦争の後は整理されて、
もっぱらオーストリア帝国となったが、
この時代のオーストリアは大帝国。
ただし支配民族であるオーストリアドイツ人は総人口の30%しかない。

そこで多数派の被支配民族を統治するために、
あの手この手のやり方を考えなければならないところに、
この帝国の独自性がある。

途中から、帝国内ナンバー2の民族であるハンガリーに独立を与えて、
連邦国家に変身した。
それでも、かろうじての多数派。
(そしてこのハンガリー人が言うことを聞かない)

ドイツ人とハンガリー人以外は支配されているので、
諸民族の牢獄とまで罵倒された。

しかし。
後から考えると、
帝国が存在した時代は、
諸民族にたいして平和と安全が提供されており、
本質的に弱体な帝国は、
お隣みたいに剥き出しの暴力支配ができたわけでもなかった。

要するに妥協の塊である。

帝国を滅ぼしたもの、
そのあたりを、D国やR国といった強国に好き放題された時代に比べると、
帝国に価値はあった。
もし帝国が穏やかに民主化でもされていたら。

激動の時代にはそもそもならなかったのではないか?
悲劇は未然に防げたんじゃないの?



そーんなことを、言い出しっぺなのがテイラー先生。
一言でいうとそれ。

まあAH帝国は、今ではそこから話が始まる鉄板になってるけど。
そういう流行を最初に打ち出した本書。

一周回って、ケチがつけられたりしてるけど、
私はとにかく。

AH帝国歴代首相の事績が書かれているだけで嬉しい。

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