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鷲は舞い降りた(著:ジャックヒギンズ)【映画感想だ、読書紹介だ、作戦名「僕はずり落ちた」発動せよ!】

むかーし70年代から80年代に、
一世を風靡したミリタリーサスペンス小説の大家。
ジャックヒギンズの作品です。
原作を読んだことはないのですが
これ以外のヒギンズ作品を読んだことはあります。
とりあえず「鷲は舞い降りた」は、映画としてのみ観賞してます。

クルト・シュタイナ中佐はドイツ空軍の降下猟兵(パラシュート兵)
誇り高きドイツ軍人でナチズムといういかがわしい連中を苦々しく思っています。
ついうっかりユダヤ人を助けてしまい、懲罰としてきつい任務に部下と共に赴くことになります。
しかしこのきつい任務とはチャーチル誘拐作戦。
決まれば一発逆転ですが、しかし敵地イギリスに何の支援もなく単独で乗り込まなければならず、困難は計り知れません。
はたしてシュタイナ中佐と部下たちの運命は?

英米系の読者に対して、魅力的な旧敵国軍人を主役に据えたという、
今となっては珍しくもないですが、当時まだ戦中派が現役として頑張っていらした時代では、物議をかもすほどの魅力的な設定は革命的です。

(ヒギンズ先生自身が戦中派ですが)

ハーグ陸戦協定にのっとり、捕虜になるような場合に正規軍の軍装をしておくために、下にドイツ空軍降下猟兵の制服。上に亡命ポーランド軍の制服を羽織ります。
自国軍の軍服を着ていると、捕虜を虐待してはいけないというルールに制約されるのですね。ベトコンなども捕まるときは赤い腕章とかを身に着けてました。そういうのがないといきなり処刑されても文句は言えないのです。

注:どうでもいいですが、特にドイツ軍系は律義にこのルールを守ります。東ドイツのスパイ、ギュンター・ギョームも逮捕された時に東ドイツ軍の制服を身に着けた状態で逮捕されました。これではもはやブラント首相も言い逃れできません。え?ブラント首相は誰かって?それは、鳩山さんの本物バージョンみたいな政治家です。

その律義さのせいでバレてしまうのですが、
そのきっかけも村の子どもを助けた兵が水車に絡まって死亡し、
羽織りが破れたのが理由。
ことごとく義侠心にあふれる降下猟兵たちです。
好感度を容赦なく挙げてきますね。それ以前にはなかった要素です。

それどころか連合軍、とくに米軍将校の描かれ方がひどいというか、逆張りを仕込んでいます。
アホで傲慢なアメリカ軍将校がひと悶着起こすような話があり、
一時代前と違いアメリカに頭が上がらない西側諸国の隠れた反感もばっちり回収。
そしてIRA(アイルランド共和国軍)まで出てきます。
アイルランドといえば長年の英国の敵ですから、当然ながらシュタイナ中佐を助けに来るわけです。
そしてアイルランド系の人は米国にたくさんいるので、がっちり四方八方の読者を魅惑する設定を全盛りしてるということです。

さらにヒギンズ先生はまだ自信がなかったのか、ジャックヒギンズ自身のルポルタージュという形で、実際に現場に行って取材したという態の場面を冒頭に付け加えてきます。
そこから過去のエピソードとして本編が始まる形ですね。
作者本人が作中に登場するという珍しいケースです。

公式続編「鷲は飛び立った」まであります。

*****
さて原作に比べると映画版はこけこけに批判されているという情報もあるのですが、映画版しか観てない私には真偽のほどは分かりません。

私はどちらかというとハリー・パターソン名義で書かれた、
「ヴァルハラ最終指令」と「ウィンザー公掠奪」を読んだので気に入りました。

ヴァルハラ最終指令はベルリン攻防戦から脱出するナチス幹部とその護衛の話。

ウィンザー公掠奪はやはりウィンザー公(英国の退位した国王)を誘拐か何かする予定のスパイがスペインでごたごたする話。

こちら主人公がSSの将軍なのにユダヤ女性と恋愛して助けてくれたりと、
そんなにSSを魅力的に書いちゃって大丈夫なの?という設定です。
映画界だと許されないでしょうね。

細部が細かい。
むちゃくちゃ調べていますね。神は細部に宿る。
些細なことがきめ細やかに書かれているだけで、臨場感が爆上がりしたのを覚えています。
今みたいにネットで軽っと調べられる時代ではないですので。
努力と知性の結晶ですよこれは。

*タイトル写真は鷲ではなくトンビです。

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