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変わらないものなんて無いのに

廃墟に行った。大事な人たちと。海辺にあるその廃墟は潮風で錆びていて、夕日に照らされて少し眩しかった。

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ただただ、写真を撮る。「誰がいちばんいい写真が撮れるかな?」なんて話しながら、目に入ったものを何も考えず、呼吸をするのと同じように。

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ずっとこんな時が続けばいいのにと思う。楽しくて輝いていて、何も考えずに笑うだけの。でもそれは写真のように閉じ込めることはできなくて、この廃墟のように静かに形を変えていく。

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欲しいものは欲しがらないと手に入らない。でもそれは私には時々難しくて、本当に欲しいものを欲しいと言えないまま、生ぬるい幸せが冷めていくことに気付くことができない。完全に冷え切ったときにはもう遅くて、温めなおすことができなくなってから後悔する。

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なんであの時このままのゆるく楽しい時間が永遠に続くと過信して、一歩前に踏み出さなかったんだろう。欲しいものは欲しいって、好きなものは好きって、言葉にしなければ伝わらないのに。

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廃墟はこのまま錆びついて腐食して、それが植物に飲み込まれていくかもしれない。もしくは、壊されてここに少し駐車場の広いコンビニが建つかもしれない。どんなに変わって欲しくないと願っても、永遠に同じ姿であり続けることは、この世界ではあり得ないことなのだ。

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でもきっと、変わらないことを期待するから変わっていく様が美しくて切なくて、そこに価値を感じてしまうんだろうなと私は思った。

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