もも

深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。

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雲ひとつないような抜けるほど晴天の今日は

悲しいくらいに、お別れ日和で。 女関係がクソほどだらしなくて、天邪鬼で、日に日に太っていってて、髭が似合ってなくて、タバコ臭くて、あんまり風呂に入ってなくて不潔だったけど、 頭が良くて仕事ができて、美味しいご飯を作ってくれて、狂ってるくらいエモい写真を撮っていて、そして私のことをめちゃくちゃ好きでいてくれた人。 今日、棺の中で見た彼はブサイクな死化粧をしていて、髭も剃られていて、太りすぎて緩んだ輪郭は硬くなっていた。 最期の3日間は、朝から一緒に酒飲んでゴロゴロして、美

    • 続・世界でいちばん愛しい時間

      「こんなんが家に1匹おってもええかもな」 2014年のジャパンレプタイルズショーで当時の同居人が安売りされていたフクロモモンガを買ってきた。それがピーちゃんとの出会いだった。 雑に衣装ケースに入れられていたその子は他のどの個体よりも小さく、非常に弱々しく見えた。 それから8年、あんなに小さかったフクロモモンガのピーちゃんは日本で最も(推定)デブなフクロモモンガへと成長した。 体重は約250g。小さいメスのフクロモモンガが90gくらいなので、それの3倍弱の大きさである。

      • 来世は雑草がいい

        先日、東京都写真美術館でメメント・モリと写真という展示を見た。 メメント・モリは直訳をすると「死を忘れるな」という意味になる。 これは決して死んだ方がいいとか死を望めとかそういう希死念慮の話ではなく、いつか必ず死ぬのだから今この瞬間を良く生きろというような内容を示唆している。 私にとってメメント・モリと写真は、死が生の延長線上にあるということに改めて向き合わせられる、とてもいいきっかけになった。 私はどうしようもない人間なので、「今度でいいや」とか「また会った時に言えば

        • 雨が心を洗うから

          雨の音はランダムが調和していて心地がいい。雑踏する渋谷の音をそれがかき消けしてくれるから、敢えてイヤホンをせずに道を歩く。 とても腹が立つことがあった。腹が立ってムカついて、1人になってからアホみたいに泣いた。本当は腹が立った時に「そういうことは言わないで欲しい」と言えればいいのだけど、それを言うと相手が嫌な気持ちになることが分かっているから言えなくて、取り繕うように笑顔を作ってしまう自分の弱さが悔しくて、それなのに許して受け入れることもできなくて、感情の搾りかすが目からボ

        • 固定された記事

        雲ひとつないような抜けるほど晴天の今日は

          変わらないものなんて無いのに

          廃墟に行った。大事な人たちと。海辺にあるその廃墟は潮風で錆びていて、夕日に照らされて少し眩しかった。 ただただ、写真を撮る。「誰がいちばんいい写真が撮れるかな?」なんて話しながら、目に入ったものを何も考えず、呼吸をするのと同じように。 ずっとこんな時が続けばいいのにと思う。楽しくて輝いていて、何も考えずに笑うだけの。でもそれは写真のように閉じ込めることはできなくて、この廃墟のように静かに形を変えていく。 欲しいものは欲しがらないと手に入らない。でもそれは私には時々難しく

          変わらないものなんて無いのに

          世界でいちばん愛しい時間

          私の恋人であり息子であり最愛の家族であるフクロモモンガのピーチ。一緒に暮らし始めて7年が経過し、お互い空気のような、特別なことは何もなくても欠けていては困る関係になっている。ピーチは一般的なフクロモモンガよりもだいぶ太っていて、とんでもなく食い意地がはっている。この日も彼の大好物のカシューナッツを持ってベッドの端に座っていたら、普段はまったくこっちに見向きもしないくせに、いそいそと膝まで登ってきた。 ちょっと臭くてあったかくてふわふわのピーチ。私に似て鋼のメンタルとどんくさ

          世界でいちばん愛しい時間