続・世界でいちばん愛しい時間
「こんなんが家に1匹おってもええかもな」
2014年のジャパンレプタイルズショーで当時の同居人が安売りされていたフクロモモンガを買ってきた。それがピーちゃんとの出会いだった。
雑に衣装ケースに入れられていたその子は他のどの個体よりも小さく、非常に弱々しく見えた。
それから8年、あんなに小さかったフクロモモンガのピーちゃんは日本で最も(推定)デブなフクロモモンガへと成長した。
体重は約250g。小さいメスのフクロモモンガが90gくらいなので、それの3倍弱の大きさである。性格は少し気難しく、まるで殿のような風格である。
ピーちゃんと過ごした8年間の間に、引越しを3回したし、仕事は2回変わったし、彼氏も何回か変わった。
ただ、ピーちゃんと一緒にいるということだけが変わらなかった。
もはや、私という存在の一部だった。
そんなピーちゃんが去年の9月の急に寒くなった頃、体調を崩しがちになった。ご飯を食べなくなり、寝てばかり居るようになったのだ。
病院のレントゲンでも肝臓と肺に影がみつかり、完治する可能性がかなり低いことがわかった。
それでもできる限りピーちゃんにしてあげることをしたくて、毎日味の違う100%フルーツジュースを買ってきて少しずつ飲ませた。美味しい肉なら食べるかもと重い、黒毛和牛を買ったりもした。獣医さんからは何でもいいからカロリーのあるものを食べさせろと言われたので、高カロリーフードのサンプルも大量にもらい試行錯誤した。毎日点滴に連れていって、仕事の合間はできるだけ側に居るようにした。
少しでもピーちゃんとの残りの時間を、愛でいっぱいにしたかった。
でも、別れはいつかは必ず来るもので。
9月29日の早朝、ピーちゃんは大きく荒い呼吸を繰り返したのち、虹の橋を渡って行った。
それから1年後の今朝、Twitterのニュースで中国の金持ちの間で亡くなった愛犬のクローンをつくることが流行っているという内容をみた。
「もし私にお金が無限にあったとして、ピーちゃんのクローンがつくれたら?」
答えは絶対にNOである。
私にとってピーちゃんは、2014年から2022年を一緒に生きた時間を含めての、唯一無二の存在なのだ。それはたとえ同じ遺伝子を持った個体であったとしても、とってかわることはできない。
ピーちゃんが虹の橋の向こうで待っていてくれることを信じて、私は明日も生きる。世界でいちばん愛しかった時間を胸にかかえて。
ピーちゃん、いつかそっちに行く日まで、のんびり待ってててね。
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