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「桜」を見に行く

まだ肌寒い日が多いけど、春らしいものに触れたいと思って、国立新美術館の企画展「ダミアン・ハースト 桜」に行ってみた。

初めて春先の六本木に来たとき、意外にも桜の木がたくさんあって驚いた記憶がある。もう少ししたら、この美術館の辺りは本物の桜でいっぱいになるはずだ。今この「桜」を観賞しに来るのは、早めのお花見というカンジだろうか。展示室の入り口は行列ができていたけど、事前にeチケットを買っていれば並ばずに入れた。

展示されているのは、24点の見上げるほど大きな桜の作品ばかりだ。パステルカラーが眩しい、現代アートの世界が広がっている。

私が入った時間帯は、年配の夫婦や若い家族連れもいるけど、大学生くらいの女の子が最も多かった。SNS用なのか、みんなスマホを高くあげて写真を撮っている。スプリングコートかレザーのブルゾン。友達や彼氏と楽しそうにしていて、本当のお花見みたいだ。

1点1点ゆっくり見ていると、いろんな桜があるのに気付く。

まだ空気が冷たい時の桜
色が薄くて雪みたいな桜
新緑が混ざり始めた時の桜
蒸せるような気温になった日の桜
濃い色が満開で華やかな桜
近所の駅に1本だけ咲いているような桜
川辺で枝を伸ばす桜

自分好みはどれかなと探ってみるのが楽しい。

展示室を出て、一休みにカフェに入った。改めて作品リストを眺めてみる。へー、ほとんどが「個人蔵」なんだ。散る前の桜を自宅に収納しておくというのは、どんな感覚なんだろうか。倉庫に入るたびに、その桜の存在が気になって、胸がざわざわしそうだなと想像してみたりする。

そんな中に1点だけ、”Courtesy of PinchukArtCentre”と書かれた作品があった。ウクライナ・キエフのアートギャラリー所蔵作品らしい。タイトルは「帝国の桜(Imperial Blossom)」

これまでだったら、気に留めることはなかったと思う。でも今は、考えないではいられない。東京展の最終日は、5月23日だ。その後、この作品は元の場所に戻れるんだろうか。不安な気持ちがこみ上げてきた。

2ヶ月後には今の心配事や不穏な空気はなくなって、生活は元に戻って、作品の前で写真を撮りたい人の楽しい列ができる。そういう未来であることを強く願っている。

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