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アメリカ財政赤字の見通しと利払い、GDPの関係


 2024年6月、米国議会予算局(CBO)は、今後10年間の予算見通しを更新しました。2023年8月に大手格付け会社のフィッチが、米国債の格付けを最上位のAAAから1段階下のAA+に引き下げたこともあり、アメリカの財政悪化の懸念から米国債が売られ、利回りが大きく上昇する場面もありました。アメリカの財政悪化について、世界が注目しています。
 アメリカの利払いの状況や財政状況について詳しく解説します。

出所)「Bloomberg」

アメリカの財政予算の見通し

 まずはアメリカの財政赤字ついて解説します。米国議会予算局(CBO)が2024年6月に公表したレポートによると、米国政府のネット利払い(政府が支払う利息と政府が受け取る利息収入の純額)は、2023年の実績で6,580億ドルでした。ここから米国議会予算局(CBO)の見通しになりますが、2024年は8,920億ドル、2034年にかけては1兆7,100億ドルに段階的に増加するとされています。今年2月に公表したレポートでは、2024年は8,700億ドル、2034年は1兆6,280億ドルでした。つまり、2月の時よりも悪化しています。

GDPに対する影響

 次に、このネット利払いがGDPに対してどのような影響を及ぼしているかを見ていきたいと思います。GDPに対するネット利払いは、2023年が2.4%、2024年が3.1%と大幅に増え、2034年は4.1%に達するとされています。
 GDPに対するネット利払いというデータは、政府が支払う利息と政府が受け取る利息収入をネットして、その金額がGDPに対してどれぐらいなのかを見るものです。国債の残高が増えたり、金利が上がったりした場合に、政府の利払い負担が財政赤字にどの程度影響を与えるのかを見たいわけです。そのため、支払う方だけを見るのではなく、利息収入が増える分も合わせて考える必要があります。どこの国の政府も保有している債券などがあるため、そこから入ってくる利息収入と同時に考える必要があります。

財政赤字と債務残高のGDP比

 アメリカのトータルの財政赤字は、2023年時点で1兆6,941億ドル、GDP比で6.3%でした。しかし、2024年は赤字が1兆9,150億ドル、GDP比で6.7%に拡大し、2034年は赤字が2兆8,620億ドル、GDP比で6.9%になるとされています。この結果、債務残高のGDP比は、2023年の97.3%から、2024年には99.9%に増加し、2034年には122.4%まで拡大するとされています。このアメリカの政府債務のGDP比の水準としては、第二次世界大戦の時の水準を超えてくることになります。

CBOの見通しとその前提条件

 このCBOの見通しは、10年先までの見通しを立てるにあたり、色々な前提条件のもとに計算を行っています。そうした前提条件が少し変わってくるだけで、10年後までの結果は大きく変わってきます。結果として、このCBOの見方は楽観的すぎる、もっと財政赤字は増えていくと見る人もいますし、逆にこの見方は厳しく、もう少し穏やかな結果になるのではないかという見方もあります。

今後の見通し

 今後の見通し、このCBOの見通しどおりになるのかというところですが、トランプ政権になったら大きく変わる可能性があります。トランプ政権になった場合、ウクライナ戦争がどうなるかも今の段階では断定できませんが、今見積もっている一部の予算は大きく削減される可能性があります。
 
トランプ氏は所得減税をすると言っていますし、関税の引き上げも合わせて実施するとしています。トランプ氏は、財政は悪化しないと言っていますが、本当にその通りになるのか、そして減税や関税の幅についてもどの程度になるのかはまだ不透明なところもあります。

私の考え

 トランプ政権になり、予想されているほど財政悪化しなかったとしても、それでも財政の悪化傾向が続くのは間違いなく、劇的に改善するようなシナリオは想定しづらいでしょう。そして、高金利になれば利払い費用が増加することで状況はさらに悪化していきますが、金利を低く抑えるとインフレ・通貨安を招いてしまう恐れがあります。長期的に見てインフレ・通貨安になりやすい状況が続いていく可能性が高いです。
 
米国債がデフォルトするようなことはありえませんが、こうした財政状況にある中でインフレと通貨安はある程度避けられないことだろうと思っています。これが米ドル崩壊にまで繋がっていくかですが、米ドルに変わるものが現れないことには難しいです。
 アメリカの財政状況への懸念は、今後も世界経済の重要なテーマになりそうです。

 ペトロダラー協定がドルを支えていたわけではなく、そんなものがなくなっても石油輸出国はドルを買わなければならないということがお分かりいただけたと思います。そう簡単に米ドルが基軸通貨であるという現実は変わらないだろうということです。

石油取引の資金の流れと米ドルの重要性

ご参考

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