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日銀の利上げと国債買入減額計画の詳細と評価


 日本銀行の金融政策決定会合についての報告です。2024年7月31日、日本銀行は0.25%の利上げを実施し、国債買入れの減額計画を発表しました。為替市場では発表後に円安に振れた後、会見後に一転して円高に振れました。
 債券市場では金利が上昇し、株式市場は大幅上昇となりましたが、その後現物が引けた後に先物が下がりました。今日のマーケットだけを見ていると、一体どういうことか、と思われたかもしれません。

記者会見の内容と市場の反応

 15時半から行われた記者会見で、ハト派よりな発言があるのではないかとの期待もあったようですが、その期待は裏切られたと言えるでしょう。内容としてはややタカ派だったと考えられます。政策決定の内容をどのように評価したらいいのか、今後のドル円や住宅ローンへの影響など、私の考えを解説したいと思います。

利上げ

 まず注目されていた利上げについてですが、無担保コールオーバーナイトは0.25%に引き上げられることが決定しました。前日の深夜に0.25%への利上げ検討というリーク記事が出ていて、7月30日のニューヨーク時間に大きく円高が進んでいたため、0.25%までの利上げは一部織り込まれていました。そのため、この発表自体はそこまでインパクトはなかったと思います。

国債買入れの減額計画

 国債買入れについては、四半期ごとに4,000億円程度買入れ額を減らしていくとしています。現在月間5.7兆円程度の買入れを行っているところから、2026年1-3月期に買入れ額を3兆円程度にするとしています。金額だけ見ると事前の予想通りの結果だったと言えます。
 同時に8月から9月の買入れ予定として、どの年限の国債をいくら購入するか公表されています。1-3年物の買入れ額がこれまでよりも1,000億円減少、3-5年物が2,000億円減少、5-10年物が1,000億円減少となっています。それ以外の年限、つまり10年物よりも長い超長期の国債の買入れについてはこれまでどおりとなっています。減額の総額についてはほぼ予想通り、そして超長期の買入れがこれまで通りということで、市場ではやや安心感のある決定になったと言えます。

国債買入れの減額計画の補足

 なぜ中短期の国債は買入れを減らしても大丈夫で、超長期が心配されるかと言いますと、超長期の国債は価格変動も大きくリスクが高いため、買える投資家が限られています。そのため、日銀が国債買入れを減らす影響がより大きいと見られています。超長期の国債買入れ減額が警戒されていたわけですが、今回中短期ゾーンのみの減額となったことで、安心感のある結果だったと言えます。

全体的な評価と市場の動き

 全体としては、すごくタカ派ではない、すごく引き締め色を強めたというような結果ではなかったと言えるでしょう。この結果を受けまして、国債市場では中短期ゾーンを中心に金利が上昇しています。中短期ゾーンの国債買入れが減額されたことを受けた動きになっています。

為替市場と株式市場の反応

 為替市場では、ニューヨーク時間に大きく円高が進んでいたこともあり、結果発表後は材料出尽くしで小動きでした。株式市場は先物の買い戻しなどで大きく上昇したものと見られています。
 しかし、その後の日銀総裁の会見で、いつも通りややハト派よりの発言が多くなるのではないかという期待があった中で、利上げをしても経済は大丈夫だと比較的強気の発言が多く、会見の内容自体はタカ派よりでした。おそらく今後追加の利上げの期待が高まりやすくなるかもしれません。

会見後の円高と住宅ローン金利の影響

 会見の後、大きく円高に触れる展開になっています。今回の結果を受け、住宅ローン金利が上昇することが見込まれます。日銀総裁は賃金が上がっているので、十分に吸収可能だとしています。
 
今回の利上げ幅は0.15%と非常に小幅です。住宅ローン金利の上昇も限られると見られますので、それほど大きな影響はないと私も見ています。しかし、また数ヶ月先に追加の利上げが行われる可能性がありますので、徐々に住宅ローン金利も上昇していくことになると見られています。

ドル円相場への影響

 今回の結果が、今後のドル円相場にどう影響を与えるのか、再び円安に戻るのか、それとも円安は一旦止まって今度は円高が進むのか、注目されている方も多いでしょう。今回利上げが行われたわけですが、マイナス金利を解除した春から4ヶ月で追加利上げが行われていて、このペースでいくとさらなる追加利上げが四半期もしくは数ヶ月後に行われるといった期待が高まりやすいでしょう。

日米金利差の縮小とその影響

 そうした意味では、日米の金利差は緩やかに縮小していくため、これまでよりは円安には進みづらくなるでしょう。ただ、金利差の縮小ペースは今のところ緩やかなペースになると見られていますので、急激な円高も起きづらいと見た方がいいです。

FRBの政策とアメリカの景気動向

 また、この金利差縮小のペースに関しては、アメリカの金融政策や景気動向も大きな影響を受けます。2024年8月2日にアメリカで雇用統計が発表される予定になっていますが、この数値が一段と悪化してくるようだと、アメリカの利下げのペースが早まり、日米の金利差の縮小ペースが加速してくる可能性もあります。

特に雇用統計に関しては、失業率が悪化してくると、さらなる個人消費の低迷につながり、景気悪化の警戒感が一層高まることになります。

米景気悪化とマーケットの動向、ドル円の動き

今後の見通し

 アメリカで重要イベントが控えていることもあり、その結果が出てから見通しを立てても遅くはないでしょう。日銀が利上げを実施し、FRBが利下げを開始する時期が近づいている、そのペース次第では大きく円高に触れる可能性もある重要な局面に来ているのは間違いないでしょう。
 日米の金利差は緩やかにしか縮小していかないのか、それともこれまでの市場の想定よりも早く縮小していくのか、慎重に見るべきです。まだ結論を急ぐのは早いと思います。
 またアメリカの景気などで大きな動きがありましたら、アップデートしていきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


ご参考

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