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米景気悪化とマーケットの動向、ドル円の動き


 ドル円は2024年7月前半に一時162円近くまで円安ドル高が進んでいましたが、そこから急落してきています。その要因としては、日銀の利上げ、円キャリートレードの巻き戻しやハイテク株の急落などがあります。また、アメリカの経済データの悪化も大きな要因となっています。

 ファンドマネージャーの評価を行う場合は、うまくいっていない時や困難な状況にある時にどう行動したかを細かくチェックします。うまくいっている時は、誰でもうまくできるわけです。うまくいっていない時に何ができるか、そこで力の差が出るわけです。

ファンドマネージャーとその信頼

米国経済の弱さ

 マーケットが非常に重要な局面を迎えていますが、更に米国経済の弱さを示すデータが出てきています。2024年7月24日に発表されたデータでは、クレジットカードの延滞率の一部のデータが過去最悪な状況にまで悪化しています。

米国経済のデータ

 7月24日にフィラデルフィア連銀が公表した2024年1-3月期のクレジットカードの延滞率は、60日の延滞率で2.6%になり、2012年の統計開始以来最高となりました。30日及び90日の延滞率もそれぞれ最高を更新しています。リボルビング残高は6,286億ドルで、未払い残高に占めるリボルビング残高の割合は71.3%となり、2021年以来の高水準になっています。

出所)フィラデルフィア連邦準備銀行HP

米個人消費と雇用統計の影響

 このような中で注目されるのが、7月26日に発表される6月の米個人消費と、8月2日に発表される7月の雇用統計です。特に雇用統計に関しては、失業率が悪化してくると、さらなる個人消費の低迷につながり、景気悪化の警戒感が一層高まることになります。

雇用統計と景気後退の可能性

 6月の雇用統計では失業率が4.1%でしたが、1年前に比べて0.5%も上がってきています。前年に比べて失業率が0.5%以上上がって景気後退を免れたことは、戦後70年以上の間で一度もありません。
 8月2日に発表される7月の雇用統計でさらに失業率が悪化してくるような展開になると、景気後退の可能性が一層高まり、インフレの沈静化や利下げの前倒し、利下げのペースアップなどが期待される展開になりそうです。

(ご参考)6月7日発表の米雇用統計を解説【5月のデータ】

為替への影響

 これは、もちろん為替にも大きな影響を与えます。FRBがこれまでの想定以上に早いペースで利下げをしてくるとなると、日米の金利差は早いペースで縮小していくことになります。大きな日米金利差の中で構築された過去最高レベルの円キャリートレードのポジションが巻き戻されやすくなります。

日銀の金融政策とその影響

 この為替相場にもう1つ大きな影響を与える要因は、日銀の金融政策です。7月30日と31日に金融政策決定会合が行われますが、2兆円から3兆円の国債買い入れの減額方針が示されるというのはほぼ確実と見られています。しかし、これに加えて利上げを実施するのではないかという観測が浮上してきていて、それが金利の上昇や円高要因になっています。

政治的な圧力

 このところ、河野デジタル担当大臣が日銀に利上げを求めるような発言をしたり、自民党の茂木幹事長が日銀の金融政策の正常化に言及するなど、政治的な圧力も強まっているものと見られます。

マーケットの反応の予想の難しさ

 見方としてはニュートラル、利上げがあるのかないのか、どっちであったとしても対応できるようにしておく程度でいいと思っています。
 日銀が利上げを行い、米国経済が一層悪化し、FRBの利下げが加速するとなれば、日米金利差は縮小し、円キャリートレードのポジションは急速に巻き戻されていくことになります。しかし、アメリカの景気悪化が今まで通りのペースで、日銀が利上げを見送るとなった場合、マーケットの反応を予想するのは非常に難しいところです。

今後の見通し

 今回日銀の利上げが見送られたとしても、次の9月の会合では利上げの可能性が高いのか、それとも9月の可能性も日銀は示唆しないのか、そのあたりの方向性も大きく影響するでしょう。
 そして、アメリカの景気についても、雇用統計が一層悪化しなかったとしても、賃金上昇率や雇用者数の伸び、他の経済指標も含めて、今後の米国景気の行方を考える上で重要なデータが出てくるか、そのあたりを丁寧に見ていくことが必要になるでしょう。

ハイテク株の下落とその影響

 加えて、今マーケットのセンチメントを悪化させているのがハイテク株の下落です。AI相場の終わりとか、NASDAQの時価総額が1兆ドル吹き飛んだとか、色々言われています。このところ、AI銘柄については、どれだけ利益につながるかも不確かな中で買われ続けてきています。こうしたAI銘柄の下落が市場心理を冷え込ませたこともありますし、NASDAQとの連動性の高い日経平均の下落を受けて、円高に拍車がかかった面もあったでしょう。
 AIについては、技術的にはこれからますます重要になっていくのは間違いありませんが、どれだけの利益が上がるかも分からないような会社が買われていたりして、典型的なバブル相場の様相を呈していました。
 そのため、一度市場関係者が冷静さを取り戻すと、これまで上がりすぎていた銘柄の売りはしばらく続いていくことになるかもしれません。そうした市場心理の悪化も、景気にも一定のマイナスの影響を与えることになるでしょう。

総括

 現在、マーケットは非常に重要な局面を迎えていると言えるでしょう。日銀の利上げ、円キャリートレードのポジションの行方、米国景気の悪化、AIバブルの崩壊、これらからどのように進行していくのか、また動きがありましたらアップデートしていきたいと思います。
 以上が、アメリカの景気悪化と最近のマーケットの動向についての話でした。今後ともよろしくお願いいたします。


ご参考


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