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カナダと欧州の利下げや各国の重要事象の解説


 今週はメキシコの大統領選挙やインドの総選挙など、多くのイベントがありました。その中で、私が注目したところを解説します。まず、カナダの中央銀行が0.25%の利下げを行ったこと、欧州の中央銀行(ECB)が0.25%の利下げを行ったこと、そしてドイツの商業用不動産に投資するファンドでデフォルトがあったこと、そして米国株の決済短期化について解説します。

 下記の経緯があり、ニコニコchで公開予定の動画を、Youtubeで公開しました。noteでは、ニコニコ会員様に向けたメッセージをそのまま残して解説記事を作成しています。今後もnote、YouTube、ニコニコchの相乗効果を探していきます。よろしくお願いいたします(TeamモハP)。

カナダの中央銀行の金融政策

 まず、カナダの中央銀行の金融政策について解説します。移民による人口の急激な増加や中国人による不動産投資で不動産がバブル化した後、外国人による不動産取得制限などをした影響で、カナダの不動産価格は最近大きく下落しています。
 カナダ経済は資源に依存しているという部分は特徴的ですが、基本的にはアメリカ経済と非常によく似ています。アメリカとの貿易が多く、あらゆる面でアメリカの影響を大きく受けています。
 資源国であることから、2022年から始まったエネルギー高の影響は相対的に軽微であり、移民の大量流入で賃金に下押し圧力がかかっていることなどから、インフレに関しては相対的にマイルドでした。インフレのピークの時で、アメリカでは前年比+9.1%まで物価上昇率が上がりましたが、カナダでは、前年比+8.1%(2022年6月)がピークでした。
 その後、アメリカよりも早く落ち着き、足元で消費者物価の前年比は+2.7%になっています。インフレが落ち着いてきたということもあり、カナダの中央銀行(バンク・オブ・カナダ)は0.25%の利下げを実施し、政策金利を4.75%に設定しました。また、追加の利下げの可能性も示唆しました。アメリカのFRBよりも先んじて動いています。

世界の主要国の中央銀行の金融政策

 中央銀行は自分の国の経済のことを考えて政策を決める必要があるため、他の国がこうしたから我々もこうしました、とは絶対に言いません。しかし、金融政策は為替に大きく影響を与えるものであり、為替は他国との相対比較で決まるものです。他の国とのバランスは少なからず影響を与えます。金融政策については、世界の主要国の中央銀行が全体としてどう動いているかを見ておくと、また見え方が変わってくると思います。

欧州中央銀行(ECB)の金融政策

 次に、欧州の中央銀行(ECB)の金融政策についてです。ECBも0.25%の利下げを実施し、預金ファシリティ金利を3.75%に引き下げました。

欧州中央銀行(ECB)のインフレ見通し

 ユーロ圏の消費者物価指数を分析した結果、サービスインフレが高止まりしているため、ECBがインフレの見通しを引き上げ、その後もどんどん利下げをすることはないだろうと考えていました。

 そして、6月6日にECBが発表した内容は、ほぼ予想通りだったと思います。ECBのラガルド総裁は、次回以降の利下げは、より多くのデータを確認する必要があると発言し、7月の会合で追加利下げをする可能性が低いことを示唆しています。景気が著しく悪化しない中で、今後もサービスインフレの高止まりというのが意識されていく可能性が高いと私は見ています。

ドイツの商業用不動産問題

 次に、ドイツの商業用不動産についての話題に移ります。6月4日にブルームバーグなどが報じたところによりますと、フランクフルトのトリアノンタワーという超高層ビルに関する債務でデフォルトが起こったということです。このビルを部分的に保有しているファンドが資金の貸し手と債務再編の交渉をしていましたが、合意に至らずデフォルトになったということです。
 ドイツの商業用不動産の問題は、ECBなども警戒しています。しかし、実際にどの程度深刻なのか、私は金融危機につながる話ではないと見ています。不動産デベロッパーが破綻するなど、決して良い状況ではないのは確かです。ただし、関わりがあるのは、商業用不動産ローンばかり手掛けている小さな金融機関だけです。

米国株の決済短期化

 最後に、米国株の取引が5月28日に「T+1」決済に移行した件について解説します。「T+1」というのは、取引してからお金と証券を受け渡すのが「Trading date + 1 day」、つまり翌日に受け渡しを行うということです。今までではアメリカは「T+2」、つまり取引した日の2日後に受け渡しを実施していましたが、それを翌日に変えたということです。

諸外国と日本の状況

 アメリカは今回5月28日に「T+1」に移行したのですが、カナダとメキシコも5月27日に「T+1」に移行しているということです。そして、世界ではまだ「T+2」の取引をしている国はたくさんあるのですが、イギリス、欧州、オーストラリア、ニュージーランドなどの主要な市場は「T+1」への移行を検討しています。
 「T+2」の取引をしている国の中で「T+1」への移行を検討していないのは日本だけだということです。日本は機関投資家、つまり金融機関の都合に合わせ、全然この問題を進めようとしていないという状況になっています。

専門家と一般の方に関する一考察

 余談ですが、専門家と一般の方に関する考察をお伝えします。
 例えば、とある新聞記事で、私たち専門家は、特定の分野の専門的知識を持っていない記者が書く記事は間違っている、と思うことが多々あります。一方で、専門家が正しいと思って書いたことも、一般の方が見て「何を言っているんだ」と思われることもあります。これは、専門家という人たちが本来の目的を見失っている場合があるからです。
 素人も新聞記者も専門家も、分かっていることが違うため、そういうことが起こるのだと、私の知り合いの人工知能の研究をしている人が言っていました。

専門家としての自分の役割

 私も専門家としての立場がありますが、自分が常に正しいと思うのではなく、見落としていることも必ずあるということ、それを改めて考える必要があると感じました。そして、私がYouTubeやこのニコニコchでしている活動というのは、専門家と一般の方の間の認識の違いを埋め合わせていく役割という気がしています。非常に重要な役割であり、できることはまだまだたくさんあると感じています。
 
ニコニコchの会員になっていただいている皆様にお伝えしたいと思ったことをお伝えしました。今後ともよろしくお願いいたします。

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