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BRICSの新通貨構想について


 中国とロシアを中心とした新興国、BRICSの新通貨構想について解説します。この構想により米ドルが崩壊するという話題が注目を集めています。金を裏付けにする通貨になるという報道がありました。要するに金本位制のような方法で運用を行うということです。

 一年前の動画を記事にしたものです。BRICS新通貨構想で、当時は金を裏付けにするとか、その後は暗号通貨を裏付けにするとか様々な報道がありましたが、そこまで結果に変わりはありません。ドル離れ、皆様はどうお考えでしょうか。よろしくお願いいたします(TeamモハP)。

BRICSの新通貨構想

 BRICSの国々にはそこまで信用がないので、ドルから離れるならば、金本位制にするしか選択肢がないというのは明らかでした。それほど驚くような話ではありません。ある意味で現実路線を取ったと言えるかもしれません。BRICS新通貨の中心的な存在である中国は、自国通貨人民元において、米ドルとの管理相場制を採用している国です。完全なドルペッグ制ではありませんが、ドルとの変動が大きくならないように管理しています。

通貨相場の安定を目的として、自国の通貨レートを経済的に関係の深い大国の通貨と連動させることをペッグ制といい、世界的な基軸通貨である米ドルと連動させる場合を特に「ドルペッグ(制)」と呼びます。中東産油国などが採用しています。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社HP(情報提供:株式会社時事通信社)

ドルとの関係性

 人民元を完全にアメリカと独立して変動相場制にし、お金の移動も自由にすると、人民元は暴落してしまったり、大きな資本の流出に見舞われてしまう可能性があるので、ドルとの変動を管理しています。また、BRICSに近づいている中東の国などは、ドルペッグ制を採用している国も多くあります。これらの国が発行する通貨は、ドルだったり金だったり、何らかの後ろ盾がないと、信用がなさすぎてまともに機能しないからです。

人民元安が起こるとまた大量の資金流出が起きないか、金融当局はおそらくヒヤヒヤした状況で、中国における人民元の下落は資金流出そして金融不安につながる可能性がある問題です。

円安と人民元安の資金流出リスクの比較

金本位制の歴史とその影響

 米ドルから独立して新たな通貨を作るとすると、金(GOLD)を後ろ盾にするしか方法がないと言ったところでしょう。では、金を後ろ盾にして通貨を発行するとどうなるでしょうか。金本位制では金を後ろ盾にして通貨が発行されるので、通貨の発行量が金の保有量によって決まってくることになります。

金本位制の終焉

 金本位制というのは、第二次世界大戦後の国際社会では、1971年に金とドルの交換を停止した時期に終わりを迎えました。この時、なぜ金本位制をやめたのでしょう。経済が成長し、通貨の発行量が徐々に増加していくのにあわせて、金の保有量を増やしていくことができなくなったのが一つの要因となっています。

金融市場の発展

 そして、この金本位制を廃止したことで、アメリカでは通貨の発行量が急激に増えることになりました。これによって、1970年代以降、アメリカにおいて金融市場が急激に発展していくことになりました。1970年代以降、経済が大きく成長した背景には、金本位制を廃止して金融市場が大きく発達したというのも影響していると考えられています。

BRICS新通貨とその可能性

 BRICS新通貨が金本位制になるということは、これらの国の経済が50年前に遡ることを意味しています。金融を勉強したら誰でもわかることは、当然にBRICSの人たちも理解していると思われます。
 そのため、この金を裏付けにしたBRICS新通貨は、国際的な通貨にしていこうということと別のところに狙いがあるのかもしれません。これらの国は、引き続きドルへのアクセスを維持していくことになると思われます。

新通貨と世界経済

 この新通貨が世界経済に大きな影響を与えるものにはならないと見るのが妥当でしょう。この新通貨を考える上では、このBRICSの中で最大の経済大国である中国の人民元の状況である程度評価できる部分があると思っています。なぜなら、BRICSの中では、経済的には圧倒的に中国の影響力が大きく、通貨がどうなるかという意味でも、中国次第と言えるからです。そのため、この問題は中国を中心に見ていく必要があると思われます。中国の人民元の国際化については、ドルに対抗しうる機能を備えているかと言うと全然まだまだです。

 世界で米ドル以外の通貨で決済する動きも増えてきていますが、そうした動きの中で、金本位制ではないですが、安全資産としての金の保有を増やし、金融システムの安定性を高めたいという狙いがあると見られています。

金とプラチナの価格差拡大とその背景

ドル離れの現状とその影響

 一方、世界でドル離れが起こっているというのは事実としてあるでしょう。エネルギーの取引において、米ドル以外の通貨を使おうと言った動きも増えてきています。これはアメリカから距離を置きたいと言った政治上の理由や、米ドルで取引をすることでアメリカに取引情報が流れることを回避したいといった思惑があるものと考えられています。

新通貨とその目指すところ

 ウクライナ戦争で西側諸国がロシアに経済制裁を行っている中、特にアメリカともともとそれほど良い関係を築いていなかった国では、これまで以上にアメリカと距離を置きたいと言った動きになっていると見受けられます。こうした国々は、ドル以外の自分たちの通貨を作って、米ドルから離れてやっていきたいといった思いがあるでしょうし、なるべくそのようにしていくだろうと思います。

新通貨構想の現実

 しかし、現実的には、BRICS新通貨が国際的な通貨になるのはなかなか難しいというのが現状です。国際社会において新興国のアメリカ離れが起こっているというのは事実で、これは重要な動きであるのは間違いありませんが、新興国BRICSの新通貨が米ドルの脅威になるかというと、それは現実的ではないでしょう。


ご参考

 「BRICS(ブリックス)」に関しては 11月のアメリカ大統領選挙でトランプ政権になるか、それともバイデン政権になるかでその後の行方が大きく影響することになるでしょう。

BRICS加盟を目指すタイの現状とその影響


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