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トランプ氏が勝利した場合のフランス経済


フランス経済の現状

 あまり詳しく解説されることの少ない欧州経済、特にフランス経済に焦点を当てて解説します。現在、欧州ではドイツ経済の弱さが目立っていますが、フランスもまた良好な状況にはありません。特に、アメリカでトランプ大統領が再選された場合、フランスは厳しい状況に直面すると見られています。

 まず、フランス経済の現状について見てみましょう。2023年11-12月期のGDP成長率は前期比プラス0.1%でした。マイナス0.3%となったドイツよりはマシな状況です。しかし、依然として弱い動きであることは間違いありません。2023年7-9月期はゼロ成長でしたので、やや上向きにはなりましたが、依然として弱いと言えます。

フランスの財政と消費

 フランスの財政は拡張気味で、政府支出は増えていますが、民間投資の弱さが全体を押し下げています。消費については、政府がプラス0.3%と増加基調になっていますが、輸出は横ばい、輸入は前期比マイナス2.3%と大きく落ち込んでいます。
 輸入の減少については、精油、輸送機器、資本罪などの輸入が大きく減少しています。輸送機器とは、その名の通り自動車などのことで、資本とは企業が工場などで使う道具のことです。

2024年のPMI

 2024年に入ってからは、足元では回復傾向にある、あるいは少し上向いてきているといった見方もあります。
 企業の調達担当者に業務感をヒアリングするPMIという経済指標があります。調達担当者とは、企業の中で仕入れをしたりする担当者のことで、彼らは自社の製品の需要動向を把握した上で仕入れを行うため、自社製品の需要動向をよく理解していると見られています。
 このPMIという指標は、50を上回ると改善と答えた調達担当者が多いことを示し、50を下回ると悪化と答えた調達担当者が多いことを示しています。 
 フランスについては、製造業PMIもサービス業のPMIも40代前半で推移していて非常に弱かったのですが、足元ではやや改善傾向になってきています。

物価上昇率と賃金上昇率

 足元で動きが良くなってきているのは、物価上昇率が落ち着いてきていることが一つの要因となっています。2月の消費者物価指数は前年比プラス3.0%となっており、昨年後半あたりの水準からも一段と低下してきています。そうした中で、賃金上昇率についてはプラス5%前後で高止まりしており、これが消費を下支えしていると見られています。賃金上昇率は一度高まるとなかなか落ちてこない傾向がありますので、しばらく高水準の伸びが続くと見られています。
 
そういう意味では、全体のインフレ率が今ぐらいの水準で推移すれば、消費の回復がしばらく続くのではないかといった見方があります。
 フランス経済の現状としては、決して良いわけではないですが、ほとんどゼロ成長だったところからやや回復傾向で推移してきていると言えます。

フランスの財政赤字

 フランスについて、最債権市場で注目されていたのが、3月26日に発表された2023年の政府の財政赤字です。フランス政府の財政赤字はGDPの5.6%となり、2022年の4.8%を大きく上回り、そして政府の目標の4.9%も大きく上回りました。主要な要因は税収の伸びが大きく鈍化したことだとされています。
 政府は2024年の財政赤字をGDP比4.4%に抑えるという目標を掲げていますが、これを達成するのがかなり難しいだろうということになりました。これを受けて国債が売られており、ドイツの10年国債との利回りの差が0.05%ほど拡大しています。
 ユーロ圏の国債は、一番信用力の高いドイツ国債の利回りとの差でそれぞれの国の状況を見るのですが、フランスとドイツの10年国債の利回りの差はこのところずっと0.5%ほどで推移しています。拡大しても0.6%、縮小しても0.4%ほどです。今回の財政赤字悪化のニュースで、大きくこのレンジは変わっていません。

フランスの財政赤字対策

 この財政赤字のニュースが出た後、マクロン政権は増税しないで財政赤字を減らす方針を示しています。これが国債相場を支えています。しかし、増税しないで財政赤字を減らすためには歳出を減らすしかありません。歳出を減らすとなると、2024年の経済成長の足を引っ張る可能性が出てきます。今後の注目となっていきそうです。

トランプショックとその影響

 今後のフランスについて考える上では、「トランプショック」、つまりアメリカでトランプ氏が大統領選挙で勝利した場合の影響というのも非常に注目されているところです。アメリカが関税を引き上げるということについては、マイナスの影響があるのは間違いないでしょう。

 ウクライナを巡る動向についても非常に注目されています。2月にマクロン大統領がパリで開催されたウクライナの国際会議で、地上部隊をウクライナへ派遣する可能性を排除しない考えを示しました。ウクライナ支援で西側諸国の足並みが揃わないことから、あえて踏み込んだ発言をしたとの見方もあります。
 トランプ氏がアメリカの大統領になった場合、アメリカはウクライナを支援しないと見られています。そうなると、欧州主導でウクライナを支援することになる可能性が高まります。マクロン大統領の発言は、そうした事態も意識されてのものだったと見られています。
 アメリカがウクライナを支援しないとなると、ウクライナのサポートはフランスとドイツを中心とした欧州各国が行っていくと見られますが、フランスにとっては大きな負担になると見られています。戦争が継続するにしても、ウクライナが負けるにしても、どちらにしてもアメリカがウクライナをサポートしないということになると、フランスとドイツの負担は大きなものになる可能性が高いでしょう。

難民問題とその影響

 これは財政の悪化だけではなく、場合によっては難民が欧州各国で増えるといったことも起こる可能性があります。この辺り、アメリカ大統領選挙の動向というのがフランスの政治経済の動向にも大きな影響を与えていくことになりそうです。

パリオリンピックとテロ対策

 今年、パリオリンピックが開催される予定になっています。フランスやパリの話はこれから日本でもますます聞く機会が増えていくかもしれません。
 パリといえば、ロンドンよりもはるかに治安が悪いというのがヨーロッパにいる人たちの中でも共通認識ではないかと思います。その背景には移民問題だったり、人種差別だったりといった根深い問題があるわけですが、大きなイベントを控えてテロ対策なども注目になっていくでしょう。

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