マガジンのカバー画像

小説詰め合わせ

21
いろいろ書いたよ!
運営しているクリエイター

#ショートショート

多分、同じ月を見ているのだろう

多分、同じ月を見ているのだろう



 木漏れ日が落とすまだら模様がくすぐったそうに揺れている。公園のベンチに腰を掛けて、ぼんやりとそれを眺めていた。

 持ってきたサンドイッチはとっくに食べてしまって、パンくずも鳥たちにあげてしまったから、私はすることもなく休日を持て余していた。

 さんぽ中の誰かの犬が短く吠えると、それに反応した鳥たちがいっせいに飛び立っていった。巻き起こる風に木々がざわめいて、思わず顔を上げると、月があった

もっとみる
ユリちゃん

ユリちゃん

  がたたん。ごととん。がたたん。ごととん。

 その日私は地下鉄の中でうたた寝をしていました。通学している高校からこの地下鉄の駅までは歩いて15分ほどなのですが、11月の木枯らしが私の身体を冷やすのには十分過ぎるほどの時間で、暖かい車内に凍え切った足を踏み入れた瞬間、固まっていた節々が和らぐのを感じました。それと同時に気も緩んでしまったのか、いけないと思いつつ泥にどっぷりとつかるような眠気が私の

もっとみる