令和時代のアイドルSexyZoneがジェンダー観をアップデートし発信する意義

ずっとずっと書こうと思って下書きに眠っていたことがまたふつふつと湧き上がってきた。

今回は、SexyZoneのメンバーがもつジェンダー観と、アイドルが「声をあげる」ことについて書きたいと思う。

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私はフェミニストで、大学時代ジェンダー論を勉強していたことがある。フェミニズムにも様々な立場や考え方があるが、私はカナダのトルドー首相が以前演説で使っていたこの言葉がしっくりくる。

Feminism is not just the belief that men and women are equal. It's the knowledge that when we are all equal, all of us are more free.

つまり、フェミニズムはすべての人が自由に生きるためのものであるということ。女性だから、男性だからという理由で生きづらさを感じている人たちが、自分らしく生きられるようにしていきたい、誰かに「らしさ」を押し付けられることなく、生き方を自由に選択していけるようにしたい。ただそれだけである。

ジェンダーの話になると、日本では男性だけでなく女性からも嫌悪される傾向にあるのが、私はとても寂しい。SexyZoneのメンバーの発言が、しばしばジェンダーに理解があって素晴らしい!と取り上げられるたびに、「彼らをジェンダー平等の象徴みたいにしないでほしい」「彼らはアイドルで夢を売る仕事なのだから、イメージがついたら仕事に影響が出る」という声もちらほら目にする。

どうしてこうなってしまうのだろう?

なんとも言えない、気持ちになる。

(6.29追記:彼らをジェンダー平等の象徴にしないで欲しい、はごもっともだなと最近思いました。気を抜くと勝手に人に期待しすぎるので気をつけたい。でもこのnoteで書いているのは、声を上げる・価値観をアップデートする「意義」についてです。影響力のある人が価値観をアップデートするのは社会人としてのマナーでもあると個人的には思ってますが、それが当然ではない今の日本において彼らの発言にどれだけ意味があるか、という話です。)

SexyZoneのメンバーのジェンダー観

ジャニーズの中でも、SexyZoneはひときわライブ演出および雑誌等での発言における「意思の表明」「メッセージ性」の強いグループだと思う。

彼らは、そうすることがファンのためだと思っているだろうし、それこそが自分たちが活動する意義だと考えているのだろう。自分たちの影響力を理解し、何を伝え、何を伝えないのか。それを日々考えて活動していると、常々感じている。「みんなを幸せに、笑顔にします」というこっちが心配になるくらい強すぎる責任感もある。本当に、真面目な人たちだ。

▲このライブのトップバッターのSexyZone、強すぎる責任感と誠実さが伝わるパフォーマンスだと思うので、ぜひこの機会に見てください。

もともとファンの名称は「セクシーガールズ(セクガル)」だったけれど、途中から「セクシーラバーズ(セクラバ)」になった。昔のライブのMCを久々に見ると、あ〜〜〜〜ホモソーシャル(※)なノリが無理…となる場面があるけれど、いまのMCでそうしたことはかなり減った。そうした些細なことから私は、彼らが、価値観をきちんとアップデートしているのだと感じている。

実際、私はそのノリやさらっと出てくるジェンダー規範ゴリゴリの発言が嫌で仕方がなくて一時期ファンをやめていたことがある。彼らも中高生で若かったし、いまよりジェンダーについて社会で問題視されていなかったけれど、当時はとてもモヤモヤした。今はそんなことを感じなくて、あ〜ちゃんと学んでいるんだなあと、配慮のある言葉がスマートに出てくるようになっているから、安心して応援できている。

※ホモソーシャルについて詳しくはこちらのnoteをご参照ください。

雑誌のインタビューもテレビやラジオでの会話も、彼らにとっては表現の一つ。だから、質問に対してどんな答えをするのかも、パフォーマンスだと認識していると思う。彼らの言葉から、アイドルとしての発言をする上でのジェンダー観が見えてくる。

佐藤勝利くんは、

「一人焼肉、一人カラオケをする女子に対してどう思う?」という雑誌での質問に対して「そこに性別の差はないと思う」と答えた。
「男性から告白されたらどうする?」というラジオでの会話で、「以前告白されたことがあるけど、僕は芸能の活動をしているからという理由で断った」と話した。

中島健人くんは、

京成スカイライナーのCM発表会で「男女共々お姫様抱っこするのが現代のアイドル」と答えた。
これはもう有名な話だけど、握手会にきた男性に対して「僕たちは結婚だけができないね」と言った。

マリウス葉くんは、

雑誌のインタビューで「女子力なんて言葉は古いよ」と答えた。
結婚していないことを周りに色々言われて焦る女性リスナーからのお便りに「まずは自分を愛することが大切だよ」と語った。

菊池風磨くんは、ジェンダーに関して発言が取り上げられることはほとんどないし、個人的にはいわゆる「男らしさ(masculinity)」を全面に出している人だと思う。でも彼はいつも「俺は」と主語を強調し、その価値観を周りに押し付けないから、そこに関して想像力のある人なんだと思う。

「Love yourself」の考え方で救われる人がいる

ジェンダーの話をするときに気をつけたいのは、価値観の押しつけである。

大事なのは、旧来の「らしさ」に苦しんでいる人がいることを理解し、それを相手に押し付けるのはもうやめよう、ということであって、旧来の男らしさ女らしさが全て悪!!!とすることが正義ではないと、私は考える。

前述のように菊池風磨くん自身はmasculinityを全面に出すけど、彼がメインで担当するライブの演出では「今、心から笑えていますか?」「辛いときは泣いていいんだよ」「自分らしく生きていこう」と、グループとして何かしら生きづらさを抱える人たちに寄り添うメッセージを発信してくれる。

SexyZoneの活動で一貫しているのは「Love yourself」の考え方である。

自分らしくいること、自分を大切にすること。そのメッセージを、彼らはずっとずっと届けてくれる。いろいろな理由で、自分らしく生きることが難しくて、生きづらさを抱えている人がたくさんいる中で、彼らは、そういう人たちに寄り添おうとしてくれている。

「ジェンダー」は、あくまで自分らしくいられない理由の一つだ。

女だからこうしろという社会的な圧力に苦しむ女性はまだまだ多い。無意識のうちに女はこうしないといけないと思い込み、どこかで違和感を抱えている女性も多い。男性も同じで、男らしくいることを求められて苦しんでいる人もいる。ジャニーズを応援する男性や美容にこだわる男性なども今は増えてきたけれど、あんまりおおっぴらには言わないんじゃないかな。でも一方で、ジェンダー規範になんら疑問を持たない人だって多い。

なんとなく自分らしく生きられずに苦しんでいる人が、彼らのパフォーマンスに心救われることもある。

私はその一人だ。世の中に溢れるべき論に傷つくことは良くあったし、些細な言葉が気になることだってたくさんある。気にしないように、自分を無下にすることもある。でも、やっぱり嫌で仕方がなくて心が荒むこともあって、そんなときに彼らの歌に、言葉に、救われている。

男性アイドルが声を上げる意義

差別の話をするとき、大切なのは特権を持つ側が、その特権を自覚し、声を上げることだ。最初はマイノリティが声をあげ始める。でも特権がなくなっては困る人たちによって阻止されるから、マイノリティの力だけでは限界がある。だからこそ、差別をなくしていくには、特権を持つマジョリティ側も一緒に声を上げることが大切なのだ。

ジェンダーというものは、幼い頃から無意識のうちに刷り込まれるものだ。アニメ、ドラマ、バラエティといったメディアから受ける情報や、親や先生といった周りの大人の言葉や振る舞いから、私たちは「男とは」「女とは」というものを刷り込まれている。

SexyZoneは男性アイドル。日本において、日本人男性はもっとも特権を持つマジョリティである。そしてさらに、彼らはジャニーズだ。若者に対して大きな影響力を持つ人たち。彼らの発言が、ファンに与える影響は計り知れない。だからこそ、アイドルである彼らが、ジェンダーに関してどんな価値観を持ち、どんな言葉を使うのか、そして、おかしいことに対しておかしいと声を上げることはとっても重要なのである。

例えば、もし彼らが「女の子だから料理はするべきでしょ、それが女子力」「女の子が結婚しても働くなんてありえない」などと言ったら、若い女の子はどう思うだろうか?「女の子はこうあるべきなんだ」という女の子像を、自分の中で無意識のうちに確立していくだろう。だって、自分が応援する、自分が大好きな人たちが言っていることなんだもの。これは決して、若い女の子がそんなことも区別できないおバカさんだと言いたいわけではなくて、ジェンダー観というは、それだけ無意識のうちに刷り込まれてしまう怖いものなのだ。

アイドルは意思・ポリシーを表明してはいけないのか

日本では、芸能人が政治の話をするのはどこかタブーのような風潮がある。それと同じように、アイドルが意見を主張することを嫌がる人も一定数いるように感じる。

ひと昔前のアイドルは、大人に言われたことをやっている、言葉を・意思を持たない存在だったのかもしれない。

しかし、今はもうそんな時代は終わりだ。

令和は、その人・そのグループの持つ価値観やポリシー、ビジョンに共感してファンが増えていく時代だと思う。活動を通して何を伝えたいのか、そのメッセージ性に惹かれる人が増えていると感じる。そして何かしらポリシーがあるからこそ、アーティストと呼ばれる人たちはその身を削って創作活動をしているのだと思う。

アイドルだって、「誰かを笑顔にしたい」という思いで活動をしている人が多いだろう。パフォーマンスだけがその手段ではなく、「誰かに寄り添う言葉を使うこと」「世の中のおかしいことに、それはおかしいと声を上げること」が誰かの心を救い、その結果その人を笑顔にするかもしれないのなら、それは歓迎されるものなのではないだろうか。

マリウス葉くんがSPURのインタビューで、

「僕のように考えている人がいないわけじゃなくて、こういう話をできる場がないんじゃないかと思います。僕は影響力の強い大きなプラットフォームを持っていて、他の人とは状況がちょっと違いますよね。だからこそ発言していかなくてはならない。自分が学んだことを、同世代や周囲の人に伝える責任がある。発言する機会を与えられないコミュニティもある。そういう人たちを代弁するのではなく、彼らが声をあげられるような場所を作っていきたいんです。」

こう答えていた。彼は、自分の持つ「声」の影響力を理解している人だ。彼はドイツ出身で欧米の価値観に触れて育ってきたこともあって、ノブレスオブリージュの考え方を持つのかなと思っている。そして彼がすごいのは、自分が声を上げるだけでなく、みんなが声をあげられる場所を作りたいとまで踏み込んで言えるところだ。

私は、アイドルだってポリシー・意見を表明して欲しいし、そのポリシーに共感する、救われるから応援をするのだ。彼らが意思を持って発信しているメッセージを、声を、私は無視したくない。彼らを意思のない存在だなんて、私はそんな風に扱いたくない。

少し話は逸れるが、アイドルだってビジネスなのだから、企業が差別的な広告を出すとそのイメージが下がるのと同じように、今後はアイドルも気をつけて発信するのが当たり前になるのではないかと思う。作品とその人個人の考えは区別して考えるべきだという人もいるけれど、私はそこを分けては考えられないし、どんなにいいパフォーマンスをする人でも差別的な発言を繰り返していたら、私は応援できないけどな…と思う。

考えるきっかけを与えてくれる存在がいること

twitterを見ていると、SexyZoneの言葉に触れることでジェンダー規範に対する違和感に初めて気づく人も多いのだなと感じる。そのモヤモヤは、大切にして欲しい。違和感に気づくことが、まずは大事なことだから。

これっておかしいのかな?と、考えるきっかけを与えてくれる存在は、とてもとても尊い。「当たり前」に疑問を持つことを教えてくれる存在は、大切にしよう。自分の周りにいる大人が、全てを教えてくれるわけではない。生きて行くうえで大事なことを、アイドルから学んだっていいのだ。

彼らはあくまで考えるきっかけを与えてくれる、パワーをくれる存在にすぎない。人生を、社会を変えるのはあくまで私たち一人一人の声と意思だ。

ずっとどこかで感じていた違和感に気づいて、自分を大切にして、あなたが少しでも毎日を笑顔で過ごせるようになることが、彼らにとってはきっと嬉しいことだと私は思う。


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と、ここまで色々と書いてきたけれど、私はSexyZoneのメンバーがみんな完璧だなんては思っていない。そして、私自身もまだまだ思考が浅いところもある。この世に完璧な人間なんていない、大切なのは学び続けることだと思う。パブリックな発言はそうであっても、個人的な話になれば女性はこうであって欲しい・男性はこうでなくちゃという規範意識が結構強そうだなあと感じることは正直ある。それでも学び続け、臆せず、意思を持って、時々強すぎる使命感を持って活動をしている彼らに、希望を見出しているから応援をし続けている次第です。

SexyZoneを応援すると、毎日がとっても、楽しくなるよ。


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