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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第71話

七月一日(月)

 市長選挙の候補者が出揃った。有力な順番に説明しよう。

 一 現市長の後任として同じ派閥から出馬する
   ペンギン現市議会議員(初出馬)
 二 カピバラ市で一番有名な定食屋を営み、町おこしに尽力する
   バイソン氏(初出馬)
 三 既存の流れと真逆の方針を打ち出す
   グリズリー氏(初出馬)

 である。当選結果が私にとってどうなるかというと、これも先ほどの順番でお話ししよう。

 一 排水処理施設の建設が行われる。
   その後、北口のマンションに住める。

 二 排水処理施設の建設について一度検討がなされる。
   排水処理施設の建設が行われるなら、
   その頃には南北一体型の駅前にマンションができるはずで、
   そこに住める見込みが高い。
   排水処理施設の建設が行われないなら、下水排水が続き、
   新ターミナル駅構想がうまくいかなければ、
   私の資産はショートする。

 三 排水処理施設の建設が行われても、駅前開発自体が白紙となるため、
   どこにも住めない。
   排水処理施設の建設が行われないなら、下水排水が続き、
   新ターミナル駅構想がうまくいかなければ、
   私の資産はショートする。

 よって、三は無い。
 一と二の二択だが、正直二ヶ月にいっぺん280万円もの支払いは、土地はあれど活用できていない農家である。精神的負担がものすごい。
 正直、一に揺らぐが、二であれば、うまくいけばスタジアム建設と新ターミナル駅の構想が進み、資金面でもなんとかなる可能性がある。危ない綱渡りだが。バイソンにはお世話になっているし、微かな夢の実現と今までの感謝がある。しかし、それに匹敵する現実というやつもあり、まぜこぜの状態になっている。

 下水道使用料の領収書が届くたびにそのことを考える。

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