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だから、巡り巡ってまた会おう

愛した人たちの連絡先が上に表示されていて、なんだかちょっと、変な気分。
わかりやすい別れが本当に本当に、本当に苦手だ。もう一緒にいたくないのに、もう無理なのに、自分から別れを告げておきながら泣きじゃくったこともある。
どうして一時は愛し合っていた者同士、嫌いになったわけでもないのに関係を切ろうとするのか。どうしてずっとこれからも大事な人として関係を続けていけないの。どうしてもう会わないなんて言うの。どうして。行かないで。おねがい、いかないで。

そして結局わたしはまた、涙を飲んで見送った。

相手を守ってあげていたはずの自分が実は守られていて、「この子はわたしがいないとだめなんだ」と思ってしまう人こそ依存していて、他人を救うことが自分を救うことになり、相手を満たせば自分も満たされて、愛されたいけど愛す方が幸せで、教えていたはずが教えられている。
癒したいと思えば思うほどうまくできなくて、ずっと一緒にいたいと願えば願うほど壊れていく。
探し物は忘れた頃に見つかるし、執着を手放した途端手に入る。

わたしが救われたと感じたとき、何度も感謝するわたしにあの子は「こちらこそありがとう」と言った。
わたしがいつも色々してもらってばっかりだと感じていたあの子には「いつも色々してくれてありがとう」と言われる。

そういうことばっかりだ。
自信満々で進んだ道はいつも間違いで、不安を抱えたまま選んだ道は合っていた。迷いがない時は危うくて、迷いがある時ほど正気だった。
本当に楽になりたいなら苦しい道を行かなきゃいけないし、本当に求めているものは案外自分が思ってるものとは違う形をしている。
本当、そういうことばっかりだった。

ーーー

2年前に書いた日記。下書きに戻したまま、読み返すことはなくなったそれを読んだ。
心が大きく揺れる。そこにいるわたしがあまりにも嬉しそうで、迷いがなくて、まっすぐで、眩しかったから。これはちゃんとわたしの一部として刻み込んでおかなきゃ。こんなわたしを、こんなわたし達を、なかったことにはしたくない。下書きにおいておくなんてもったいない。
だって、ダメダメだった頃のわたし達がこんなにも愛おしい。なりふり構っていられなかったわたし達が眩しかった。
その時のわたしが感情のまま書いたそれは、わたしの忘れていた記憶を呼び戻す。
失ってしまったものだとしても、手を繋ぐことはもう叶わなくても、そこにあった愛はなくならない。
まだまだわたし達は人生の途中で、素敵になるためにがんばってる途中だから。何ひとつ終わっていない。
わたしがあなたを嫌いになることはないし、すきでも嫌いでもすきだから。

泣けてしまうな。生きている限り、何があるかわからない。それは救いであるのと同時に絶望でもある。絶対なんて、絶対ない。出口がないと思っていた闇も、這いつくばって進めば、助けを求めれば、光が見える。どんな約束も破れるし、どんな未来予想図も塗り替えられる。人生の計画なんて簡単に、一瞬で、崩れる。
だからもし、もしもまた出会えたら、その時にまた手を繋ぎたいと思えたら、そんなに素敵なことはないだろう。
何度も考えて、何度も疑った。わたしは本当にその相手をちゃんとすきなのか。
だけどやっぱり、すきとかすきじゃないとかどうでもよかった。すきでもすきじゃなくても、わたしは心からあなたの幸せを祈るし、時にわたしを思い出して寂しくなってほしいと願う。
嫌いになってもすきだよ。嫌いでも、愛すよ。
もう今更だろ。すごく好きになって、すごく嫌いになった。すごく近寄って、すごく遠のいた。

ちゃんと嫌いになってからが本番だとさえ思う。だいすきな人を嫌いになってしまった時、わたしはもっと深く、もっと大きく、その相手を愛せる気がするから。
嫌いな部分があることを知っても尚、愛してるよと言える。胸を張って、言える。それがすごく嬉しい。

だいすきな人達と過ごした時間が、思い出が、わたしの中に溶けてその一部となる。忘れてしまった記憶も、ぬくもりも、会話も、全てわたしの血肉となり今のわたしを形作っている。
そんな自分のことをわたしは、もうどうしようもなく愛おしく思うから。あなたに微笑みかけてもらった記憶が、あなたの腕に抱かれていた記憶が、わたしを今でも支えてくれている。
わたしが愛に溢れた人なんじゃない。わたしに関わってくれた人達の愛が集まってできたのがわたしだ。わたしが愛情深いねと言われるのはもらった愛でできてるからで、わたしが優しいねと言われるのはたくさん優しくされてきたから。
みんなの愛が集まって塊になっているだけ。本当それだけ。わたしは多分元々、なにも持っていない。愛も優しさも素直さも可愛げも。
さみしがる必要なんかなかった。わたしがわたしでい続けられるなら。あなたと過ごした記憶と共に生きていけるなら。

もう会わないなんて何かを断ち切った気になっても、そんなもので断ち切れる何かではなかっただろう。

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