もうふたりきりになりたい
初夏の夕方、まだ空は明るくて重たい雲の隙間からは光が溢れる。空と地面はどこまでも続いていて視界を妨げるものはなにもない。わたしはすこし高い丘の上にいて、強くて優しい風を全身で浴びている。靡く髪の毛と頬をなでる風。露出した腕と脚に空気があたって身体が軽くなる。
暖かさはなくて、寒くもない。灰色と水色の空は寂しげで、見上げると地面と空がひっくり返りそうになる。
わたしを邪魔するものはなにもなくて、もう大丈夫だと思えた。ここには誰もいない。わたしを傷付けるものも喜ぶものさえない。安