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その短絡さを恥じろ

ひとつの面だけを見てすぐ判断してしまう短絡さ。想像力の欠如。自分の理解をこえることを否定する浅はかさ。

目の前にいる人がどれだけ自分と似ているように見えても、わたしとは全く違う道を歩んできて、わたしには見えない傷がついていて、わたしには見せない顔がある。
その理由が理解できないような態度も、非常識だと思ってしまうような行動も、そこにある背景までを見ることはできない。なにがあなたをそんな風にしてしまったのかを、その一部だけでは知り得ない。
あなたを作り上げた過去のすべてを、わたしは見ることもできない。想像することだけしか。
だけどわたしの想像できる範囲なんてたかがしれている。わたしはわたしが今まで見てきたもの、経験してきたことを使ってしか想像できないし、わたしはわたしの脳みそしか使えないから。
だからわたしは、あなたのことを100%理解することなんか、絶対にできない。あなたの地獄を、わたしは味わえない。あなたの快楽を、わたしは体験できない。
それなのに、それなのに、どうして人は理解できると思い込んでしまうんだろう。どうして自分の物差しで他人のことをはかろうとしてしまうんだろう。どうして一部だけを切り取ってなにが正しくてなにが間違ってるかなんて判断できるの。
どうしてあなたは理解や想像をこえることを否定するの。どうして自分にとっての正義は、誰かにとっても通用すると思ってしまうの。

その短絡さを恥じろ。想像力のなさを自覚しろ。
同じ二足歩行で、同じ位置に手と足がついていて、同じような見た目をしているから、わかりあえると思ってしまうの。同じものを見て同じように感じていると思ってしまうの。
相手の立場に立ったって、わたしがわたしのまま相手の立場になっても同じ答えには辿りつかない。あなたの思考回路を想像して、あなたの見える景色を想像して、あなたの抱えてるものを想像しないと、相手の立場に立ってるなんて言えないだろ。

世の一般論は、多数派は、いつも正義みたいな顔をするな。それは人を殴るためのツールになるから。
あなたとわたしの関係性の中で、一般論はいつ必要になるんだよ。その正論は、どうして人を無闇に傷つけうると思えないんだよ。自分が多数派だからってどうして自分は正しいみたいな顔ができるんだ。
どうしてわたしのふとした発言が、なんの考えもなしに放った言葉だと思うの?

ーーー

昔からずっと怒っていたわたしはいまだにその熱量を持ったまま。
あなたの当たり前はわたしの当たり前じゃない。自分の物差しで他人を測るな。想像しろ。あなたの正義はあなたの中だけで完結させろ。
誰にも届かない怒りがふつふつと湧いて、わたしはどうしてこんなに怒っているんだろう。昔わたしに向けられた言葉に対して、こないだ観た映画のワンシーンに対して、ずっと怒っている。
いつになったら許せるの。いつになったら言葉にせずにいられるの。いつになったら、強い言葉を使わずに済むの。

自分が吐いた毒は自分にも刺さる。はあ。痛いな。

だからわたしは、わたしの当たり前を、この世の当たり前を、簡単にぶち壊してくれる人がだいすきだったんだ。わたしにはわたしの正義がある。あなたにはあなたの正義がある。
わたしの想像を容易くこえてくれるから、わたしの頭だけでは絶対に辿り着けなかった答えを出してくれるから、わたしは人をおもしろいと思う。興味を持たずにはいられなくなる。

わたしはわたしの持つ身体しか使えない。わたしの見れるものしか見れないし、感じられるものしか感じられない。
あなたの赤色とわたしの赤色が同じ色に見えているかなんてどうやって証明すればいいんだ。わたしにとっての間違いがあなたにとっても間違いだなんて、なんで言えるんだ。
わたしがこの胸の痛みをどれだけ説明しようと、あなたはその痛みを感じることはできない。地獄は共有されない。

ーーー

わたし達にできることは言葉で伝えて、想像することだけだろう。注意深く観察して、理解しようと努めることだけ。
わたしもきっと、いつのまにかわかりあえることが前提となり、誰かのことをわかった気になっていたんだろう。
わかってもらえなくて絶望しては捨てた。会話がズレていくのを絶望しては諦めた。

世界はあなたが思ってるより美しくて、わたしが思っているより汚いね。
あなたが見る世界をわたしも見たかった。わたしの見る世界をあなたにも見せたかった。

だいすきなあなたとわかりあえないなら、一旦保留にしておこう。それは明日か明後日か、1年後かにまた少しでもわかる日がくるかもしれないから。
今はただその手を掴んであなたの体温を感じでいたいから。時間が許す限り、あなたがなにかを許していられる限り。

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