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文章の話

わたしは文章を書くことが得意ではありませんが、抵抗もありません。この「抵抗がない」というのが生活の上でとても役に立っています。こうやって自分の考えていることなどを文章にして気持ちを発散することもできるし、書くことに抵抗がないからか、文章を読むことに対しても特に嫌悪感を感じないからです。以前の仕事でも堅苦しい文章を読んだり書いたりしなければいけなかったのですが、わりと楽しんでやれていました。
逆にめちゃめちゃ抵抗があるのが数学です。数学というかもはや算数、算数というかもはや数字。いつも好きなことについての記事を書いているので、たまには苦手なことについても書きたいです。苦手が故のエピソードもわんさかあるので。

中学2年生のころ、夏休みの課題で読書感想文を書きました。好きな本を読んで感想を書くというよくあるやつです。そのとき選んだのは、あさのあつこ『バッテリー』でした。当時のわたしはこの話が本当に大好きで、漫画も映画も全部チェックしていました。
わたしの読書感想文といえば、適当に本のなかの一節を引用して、それに対してどう思ったかを延々と書き続け文字数を稼ぐという何とも言えない書き方をしていました。しかし、しかしです。今回は大好きなバッテリーを選んでしまったのです。決して生半可な気持ちでは挑めない。これはバッテリーの魅力を存分に伝えなければいけないでしょう。なぜならわたしはこの本が大好きだから。謎の使命感に駆られたわたしは、それはそれは真剣に感想文を書きました。
夢中になって2時間ほどで完成させました。「あー、楽しかった。」最初に抱いた感想がこれです。時間も忘れるくらいに真剣に文章を書いたのはこれが初めてだったように思います。充実感と達成感で体がホクホクしました。

夏休み明けに感想文を提出しました。しばらくすると、担任の先生に呼び出されました。異常に動揺しました。というのも、わたしはわりと大人しい生徒でした。褒められることもない分、叱られることもない。非常に地味な存在だったので、呼び出されるという経験がほとんどなかったからです。不安な気持ちを抱えながら職員室に行くと、先生が言いました。「感想文、とっても良かったよ。」叱られると思ってきたので、驚きのあまり変な表情をしていたと思います。肩透かしをくらった気分でした。なんだ、わたしはそんなことで呼びされたの?

先生は続けて、わたしの書いた感想文をコンクールに出したいと言いました。ただ、タイトルがちょっと弱いからもう少し考えてみてくれないか。そんなことも言いました。これにはさすがに「えっ。」と声が出ました。本題はこっちかと冷静に思う反面、何がなんだか分からずといったかんじでした。
余談ですが、わたしの今までの記事をもし読んでもらえた方はお分かりかと思いますが、タイトルを考えるのが壊滅的に下手です。当時のタイトルも『バッテリーを読んで』でした。今とさほど変わりません。全く成長が見られませんね。

その後先生に言われるがままにタイトルを考え直し、わたしの感想文はコンクールに出されました。結果としては、市のコンクールを通過して、県のコンクールで佳作だったような気がします。(うろ覚えです)賞状を貰って初めて実感がわいて、じわじわと嬉しさが込み上げきました。自分がつくったものが評価されたことに満たされた気分になりました。

担任の先生は国語が専門だったのもあって、その後も授業でいろいろな文章を書く場をつくってくれました。短歌のコンクールだったり、新聞の公募だったり。お~いお茶の裏面に俳句が載っているじゃないですか。あれもクラスみんなで応募しました。先生は感想文の件があってから何かと気にかけてくれて、課題を提出するたびに声をかけてくれました。「よく書けているね。」「視点が面白いね。」などです。

褒められると調子に乗るもので、わたしは抵抗感なく課題に取り組み、文章を書くようになりました。一度、新聞の公募に自分の意見が載ったのですが、まじで嬉しかったです。あれも恥ずかしげもなく文章が書けた結果だったと思います。棚から牡丹餅みたいな感覚でした。これも余談になりますが、新聞社の方が校正してくれたわたしの文章が文字通り「新聞記者みたいな文章」になっていたことに当時のわたしは目玉が飛び出ました。はちゃめちゃに衝撃的でした。自分の文章が直されたということに対して不の感情ではなく、ただただ「プロすごい。こんなに格好良くなるものなのか」と思ったことが今でも忘れられません。記者かっけ~!すげ~!こんな文章書きて~!と興奮しました。

あと先生に声をかけられるようになって初めて気づいたのですが、先生はクラスみんなの好きなことや長所を見つけて逐一声をかけていました。スポーツだったり、ゲームだったり、ファッションだったり、ジャンル問わず。先生ってすごいなとこのとき初めて思いました。当時はこんなに冷静ではなく、気づいたときは興奮しました。先生かっけ~!です。感想に幅がまるでありませんね。

そんなこんなでわたしは先生のおかげで文章に対して抵抗感がなくなりました。これには本当に感謝してもしきれません。わたしは決して文章が上手いわけではない、むしろ下手くそなのですが、先生がわたしに言ってくれた「あなたは文章を書くことが上手いというよりも、自分の思ったことを書くことが上手だから、これからも素直にいろんなことを感じてね」という言葉を胸に生きていきたいと思います。

最後になりますが、『バッテリー』本当に素敵な本です。野球少年たちが一瞬一瞬を考えて葛藤して、眩しく生きていきます。当時は主人公たちと同じ目線で読んでいましたが、今読むと少し切なさも感じます。有名な作品なので今更かもしれませんが、機会があればぜひ読んでみてください。

日に日に増えていく文字数に怯えています。もう少しタイトに書きたい。





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