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ご機嫌な私から。

夕立のあとの19時ごろ。
夏至をとうに過ぎた空は明るくて、真昼の暑さは和らいでいる、そんな時間。

水溜りに夕空が滲んでいる。それを見つけるのがとても好き。
黒く濡れたアスファルトも、不思議に染まってる。
お気に入りの瞬間はたくさんあって、日常のあちらこちらを掠めていく。
全部覚えておきたいけど、無理だから。せめて見逃さないように出会いたいね。


この間、親愛なる妹より手紙が届いた。
素敵な映画を見て、そうして手紙を書きたくなったのだって。
とりとめのない内容が綴られたそれが何だか嬉しい。
日常の些細な事ばかり書いてあるのに。電話でさらっと伝えられることばかり。伝えなくても良いようなことばかり。それなのに、文字になると途端に特別に思えるのはどうしてなんだろう。


嬉しかったので、私も手紙を書きたくなって、それからある物語のことを思い出した。
小さかった妹が集めていた物語たち。
小さな魔女と、その相棒であるくまのぬいぐるみと。魔法と冒険が沢山の、それでいてどこか切ない部分もあるお話だった気がする。


その物語が、再び、物語になっているらしい。
唐突にその本を妹に贈りたくなって、本屋を巡った。
まあ、結局見つけられなくて、インターネットで頼んだのだけれど。



「本日中にお届け予定です」のメッセージが届いていたので、自転車のペダルもいつもよりご機嫌に回る。
素敵な夕空に三日月を見つけた。さらに素敵なことに、その下に飛行機雲がのびてゆく。


ご機嫌な夕方を通り過ぎて辿り着いたポストには、あの子にあげたい本2冊。
とても良い夕方ごと、包んで送りたいのです。
お手紙ありがとう。あの時好きだったお話を見つけたよ。気に入ってくれたら嬉しいです。
ふるさとより、愛を込めて。

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