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セクシー担当

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「今回の役だけど、殺された被害者を1番に発見する掃除婦だって」
  新しいドラマの脚本をマネージャーから渡された時、私は絶句した。
  私、桃井みのりはグラビアモデルを経て、主にバラエティで活躍し、次第にドラマにも出るようになったマルチタレントだ。
  演技の方面では、主人公を誑かすような小悪魔キャラに定評がある。
  その魅惑の肉感や、男を虜にする所作がメインヒロインの女優よりも人気で、水着などの写真集は即完売するほどである。
  これまで何年もセクシー担当でやってきたのだ。
  それが突然おばさん役をやれってそんな。信じられない。せめて主婦とかキャリアウーマンなどを挟ませて欲しい。
  長年共に歩んできた、絶大な信頼を寄せたマネージャーに意見すると
「でもほら、あんた太ったじゃない」
  もうセクシー通り越してジャバザハットみたいだ、と言う。
  そう、若い頃に比べて贅肉が全く落ちないのだ。
いくら食べても太らなかった時期が確かにあった。
だけど、今は若い頃の10倍は運動しないといけない。
「花のいのちはなんとやら」
  シビアな発言をするマネージャーは続ける。
「掃除のおばさんが板に着いてきたら、こんどはそれを解決する探偵ものの主役になれるから。片平なぎささんとか、木の実ナナさん目指して頑張りましょう!」
  サスペンスものに足を踏み入れてしまったら、もうそこから抜けられない。
  嫌だ。ロケ地が熱海ばかりになるなんて、嫌だ。
  私は恐怖を覚え、もう1度セクシー路線に戻れるよう、命懸けで身体を搾った。
  そんな私は今、鍛えすぎてあの女性らしい丸みも柔らかさも消えてしまい、筋肉キャラとして売れている。

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